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俺の好きな人の好きな人の好きな人の話

作者: 零奈

 幼馴染に好きバレしたと思う。

 その翌日。

 幼馴染の家で勉強会をしていると。

「私、君の好きな人の好きな人の好きな人、知ってるよ。」

 と、好きな人兼幼馴染の瀬奈に言われた。

「誰?」

「私。」

 どう言う意味だよ、それ!?


—— Sena——

 幼馴染の好きな人を知ってしまったら、どうすればいい?

 特に、その幼馴染が、元喧嘩友達で、でも今は好きな場合。

 事の発端は、こうだ。


 昨日、私は幼馴染、裕也くんと勉強会をしていた。

「ねー、ちょっと休憩しよ?」

「あー、確かに。」

 そこで、私は女子たちに言われた事を試すことにした。

「なんだよ、急に!」

 背後から抱きつく。

 こうすれば、ただの幼馴染か、それとも異性として見られてるか、わかるらしい。

 やっば、めっちゃ恥ずかしい。

 今顔見られたら終わる。好きバレする。

 背中に顔を埋めて隠す。

「んー、ドッキリ?」

「心臓に悪いわ。」

 初めのリアクションはかなり焦ってるようだったから脈ありっぽい。

 でも、言い方が、なんというか、軽い。そこだけ見れば、脈なし。

「ねー、恋バナしよー。私、男子と恋バナした事ないんだよね。」

「そりゃ誰だってそうだろ。」

 作戦その2。恋バナをして、遠回りに好意を仄めかす。

「私、好きな人いるんだ。どんな人か知りたい?知りたいよね?」

「まぁ、割と。」

 食いついた!

 この作戦のいいところは、相手に好きな人がいるかわかる事。

「えー、じゃあそっちも言ってよ。」

「はぁ。」

「そっちからね。先に知りたいって言ったの、そっちだから。」

「まぁ、いいけど。いるよ、好きな人。」

 え。

「可愛い?」

「言いたくない。」

 ふーん。

 こうなったら、どうしても知りたい。

 いや、知ったらどうする、って話だけど。その方が清く諦めがつくかなー、ってだけ。

「思春期だから言いたくないの?それとも、相手が高嶺の花だから?」

「年頃だから。」

 視線が左上。

 嘘だ。

 つまり、高嶺の花だから。

「年上?年下?同級生?」

 ゆっくり言いながら反応を観察。

 同級生かな。より一層睨まれたから。

「天然?頭いい?守ってあげたい?」

 反応があったのは後者2つ。

「今、どう?脈アリ?手伝いたいから教えてよー。」

「わかんねぇ。ただの友達かも。異性として意識されていないような。」

 え?

 裕也くんは割とモテる。

 1番じゃないけど、多分、同学年で5番目くらいには。

 なのに、異性として意識してないって。

 まさか。

 幼馴染。

 私?

 守ってあげたいかはさておき、私は、賢い。そして、同級生。

「悪い、忘れてくれ。」

 裕也くんの顔が赤い。

 私も、きっと。


 裕也くんの好きな人は私かもしれない。

 そして彼も、私が結論に至ったと確信した。


—— Yuya ——

 俺の好きな人の好きな人の好きな人。

 どういう意味か。

 俺の好きな人(瀬奈)の、好きな人(彼氏と仮定)の好きな人(瀬奈)

 つまり。

 瀬名は両思い。

「わかった。邪魔しない。」

 もう、こんな回りくどく言わなくてもいいのに。

 わかってたから、釣り合わないって。


 才色兼備といえば、瀬奈が思い浮かぶ。

 少なくとも、うちの高校の奴なら。

 何をやらせても天才的で、美人で。でも時々ずれたことを言う。それが可愛い。

 昔から、俺は瀬奈に及ばない。でも、瀬奈は、俺に構う。甘えてくる。それが俺だけだといいな、と思った。

 その時、この恋を自覚した。

 好きになっても、しょうがない。


「待ってよ、裕也くん!」

 その声は無視して、家に帰る。

「今までありがとな。でも、俺の面倒、見なくてもいいから。」

 呼び止める声は、聞こえない。

 聞こえないことにする。


—— Sena ——

 勘違い、された。

「この、朴念仁!鈍感!」

 両思いかな、と思ったから、遠回しに好きだよって言ったつもりだった。

 まさか、私が裕也くん以外と両思いだって、思われるとは。

 もう。

 昨日、ぎゅってしたの、忘れたの?

 私、好きな人にしか抱きつかないよ!?

 何でわからないの?


 ……どうしよう。

 今日中に誤解を解きたい。


—— Yuya ——

「裕也、もう帰ってきたの?今日は瀬奈ちゃんとテスト勉強するんじゃ……」

「向こうが用事あるらしいから早めに終わった。」

「そう。瀬奈ちゃんにはお世話になってるし、今度夜ご飯でも誘っておいて?」

 瀬奈には、両思いの相手がいる。

 だったらもう、異性である俺の家に入り浸るのは、よくないよな。

 というか、俺が困る。

「瀬奈、彼氏いるらしいからさ。やめとく。」

「あらそうなの。でもいいじゃない。幼馴染よ?」

 幼馴染。

 俺は、終始彼女にとって、ただの幼馴染、ただの長い付き合いの友達でしかなかった。

 最悪。何を思い上がっていたんだ、俺は。

 ずっと俺の前だけで、とか。気恥ずかしい。

 あのデレも、普通じゃない彼女にとっては普通だったのかもしれない。他の奴にもああいう風に接していたのかもしれない。

 そして、俺よりも行動の早い男が、思い上がって告白して、うまくいったとか、そういうことだろう、多分。


 親を無視して、部屋に篭る。

 今日の俺、最悪。


—— Sena ——

 決めた。

 恥ずかしいとか、そういうこと言ってる場合じゃない。

 家を出る。


「おばさん、遅くにすいません、あの。」

「あら瀬奈ちゃん。どうしたの?」

「裕也くんが忘れ物して。」

 嘘だが。

 勝手に部屋に入らせてもらおう。

 あ、鍵がかかってて、入れない。

 外から言うか。

「裕也くん。君、誤解してるよ。」

「……」

 返事がない。

 そんなにショックだったんだ、私に彼氏がいるってこと。

 勘違いなのに、本気で悲しんじゃって。

 ほんと、しょーがないなぁ。

 ちゃんと、わかりやすく言ってあげなきゃ。

「あのね、私、裕也くんのことが好きです。」

「は?」

「昨日の話、聞いてさ。君も私のことが好きなのかなって、思ってさ。」

 遠回しに言いたくて。

 昔は言えた“好き”も。

 自覚したら言えなくなって。

「恥ずかしいから間接的に言おうと思って。」

 今だって、もう、顔が熱い。

 きっと、あかくなってる。

「でも伝わらないからっ!好きです、付き合ってくださいっ」

 もう、ヤケだ。

 もしこれで、裕也くんが、私のこと、好きじゃなかったら。

 羞恥心で死ねる。穴に入りたい。

 もー、返事、してってば。


 ガチャ、っと音がして、ドアが開いた。


—— Yuya ——

 ほんっっとうに、こいつは。

 天才で、凡人には理解できなくて、告白すらややこしくて。

 言葉遣いが天然不思議ちゃんで、意味不明で、肝心な時こそやらかして。

 ほんと、俺以外にそんなこと言ったら、絶対誤解されて訂正すら聞き入れてもらえないから!

 まぁ俺も誤解したけど!

 慣れたからその訂正が本心だってわかるから、おれは!

「ほんと、しょーがないな、瀬奈。」

 ドアの外で三角座りしてる。顔、隠してるけど耳赤いから、バレバレだぞ。

「俺も好き。ずっと好きだった。」

 昨日とは逆。

 俺が抱きしめる。

「……早く言ってよ。」




 瀬奈はそのままおばさんに引き止められ、夕食を食べていくことになった。

「そういえば、瀬奈ちゃん、彼氏いるの?」

 やっべ。

「あー、母さん。あの、それは俺がただ、……」

 ごめんてば、瀬奈。

 圧かけられた。

 頼む、誤解、解いてくれ。

「いますよ。」

 は?

「あら〜。それでも、うちと仲良くしてくれる?」

「はい、もちろん。」

 不意打ちで、抱きつかれる。

「こーゆーことなので。」


 はっきり言わないのは、瀬奈の悪い癖だ。

ありがとうございました。

後学のためにも感想頂けると幸いです。

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