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テンプレっていうけれど

 転生悪役令嬢もののラノベで『よくある乙女ゲーム』のストーリー展開として『卒業パーティーでの婚約破棄』なんてものがある。


 だけどわたしは実際にはそんな内容の乙女ゲームタイトルは聞いたことがない。


 乙女ゲームはいくつかプレイしたことがあるけれど、だいたいは育成ものや謎解きミステリーよね。モンスター討伐やロボットで戦うような戦記ものもあるけれど、ヒロインがあからさまにがっつり男漁りするような恋愛攻略するだけの作品なんてある?


 まんがや小説でならあるのかしら。行く先々で男引っかけてまわる鈍感ヒロイン。そしてヒロインに嫌がらせをする悪役の女の子。


 でもそんな男をオトしていくだけのゲーム、面白くないわよね。

『悪役』だって、ゲームで出てくるならヒロインと競うライバルの女の子かしら。悪って何よ悪って。ううん、どちらかというと『悪役』だって男キャラなことが多い気がするわね。それでその『悪役』も結局ヒロインにオトされちゃうか、ヒロインがオトされちゃってから舞台から消えていくか。


 そもそも乙女ゲームの男キャラって、乙女ゲームだからしてオトす、もしくはコレクションしていく仕様にはなってるけど、半分以上腐向け用なんじゃないかしら。

 オリジナルアニメの企画でもよく言うでしょ。『女性ファンを獲得するには元気のいい男キャラを5人以上出せ』って。言わない?

 まあ5人もいなくても腐った人たちは薄い本をいつのまにか……それこそ一夜で作っちゃうし、なんなら元気な男子よりトラウマがあったりして陰を背負っているキャラの方が捗るのかもしれないわね。いろいろと。


 まあ、何が言いたいのかというと。


『乙女ゲームのクライマックス』で『よくある』、『卒業パーティー』や、『婚約破棄』、ついでのようにする『断罪』等々は、いわゆる『乙女ゲーム』でのテンプレートではなく、ラノベでのテンプレなんじゃないかしらってこと。


 なんだってこんなことをつらつら考えているのかって言うと、そう、今まさに! 目の前でその婚約破棄イベントが……。






 ってわけではないの。ごめんなさい。




「だからぁ、やっぱり乙女ゲームなんだから王道をいくべきだと思うんですー」


「……王道とは?」


「もおー、さっきからいってるじゃないですかぁ。『中世ヨーロッパ』風の舞台の学園もの! これですよ~」


「学園ものはまあいいとして、『中世ヨーロッパ』? 暗くないかしら?」


「なんで暗いんですかあ~? だって貴族とか王子さまですよ! ゴージャスなドレスとか、絶対にウケますって!」


「……」


 ゲームの企画会議。

 まだ制作会社と乙女ゲームということくらいしか決まっていない第1回目にこの新人ちゃんが参加しているのは社長のコネによるもの。そもそもが社長の従兄弟の娘っていうコネ入社。

 縁故採用は別に好きにしたらいいと思う。自分の会社なんだから。


 でも「この子、ウチのメーカーの作品が好きらしくってさあ。企画会議に入れてやってよ」は無いと思う。

 ファンの子に新作作らせるの? 同人誌じゃないのよ?


 それでも会議をおとなしく聞いていてくれるならまだいいのだけれど、この子、会議が始まってからずうっと喋りっぱなしで。

 何をって。

 好きなラノベの話をね……。


「だってベルばらとかぁ、みんな好きじゃないですかあ~」


「フランス革命は中世じゃないわよ」


「え?」


「ベルばらは近世。近代の一歩手前くらいかしら」


「そーなんですか~。あたしぃ、難しいことはよくわかんないんですけどぉ。とにかく『よくある』『中世ヨーロッパ』風の世界観でえ』


「…………」




 結局、『ラノベ』で『よくある』、なんちゃって『中世ヨーロッパ』風の世界観で学園ものを作ることになってしまったわ……。

 ライターさんが早々に降りてしまって、監督とプロデューサーの一人でしかないわたしがシナリオを書くことになってしまった。なんでわたしたち、新人ちゃんの夢小説のゲーム作らされてるんだろう……。


「やっぱり逆ハーでしょ~」と、逆ハー逆ハー連呼する新人ちゃんに嫌気が差したわたしたちは、自棄になって学園の全男子生徒、全男性教師職員の名簿という名の図鑑にコレクション&コンプリートを目指すというアホなゲームを作り始めた。


名付けて『学園コレクション』。そのまんま。


 最初はヒロインのクラスメイト。一定人数のコレクションプラス、シナリオを進めるとクラブや委員会、他のクラス等の男子が解放され、イベントで休日デートや学園行事、課金で『隣国からの編入生の王子さま』や『特別講師』がゲット出来るシナリオ等々……。

 その都度新人声優さんやアマチュアイラストレーターさんにお仕事を振れたのはまあ、よかったのかもしれないけれど。


 そしてまさかというかやっぱりというか、この企画における諸悪の根元……は、社長かしら? 企画の発案者である新人ちゃんは、企画が煮詰まる前に会社を辞めてしまった。「思ってたのとなんかちがう」「飽きちゃった」とかなんとか言って。

 もちろん言い出しっぺがいなくなったからといって、動き出した企画が止まる訳でも無くなる訳でもないのよね。

 紆余曲折の末、配信に漕ぎ着けた訳だけれど……。


 なんと。

 地味に話題になってしまったのよ……。なぜ……。


 きっかけは一部のヘビーユーザーさんがゲームを真似て始めたリアル名簿。

 自分の通う学校の男子生徒名簿を作って、ゲームと同じく⭐を付けたのが流行ったらしいのだけど、そんなのクラスメイトは全部⭐1になっちゃうんじゃないのかしら。って思ったら、⭐はレアリティ度ではなくイケてる度でつけているらしい。エグい……。

 しかもその流行がゲームをしていない層にまで波及。プチ社会現象にまでなってしまった。

 思春期な男子生徒諸君は自分の⭐がいくつかで無駄に自信をつけたり恐々としたりしているらしい。


 結局新人ちゃんが力説していたラノベにおける『乙女ゲーム』のテンプレだと言う『卒業パーティーでの婚約破棄』だの『断罪イベント』だのはシナリオに一切組み込まなかったのだけれど、新人ちゃん的には忘れているのかそれはどうでもよくなったのか、特に不満はないようね。

 SNSでご機嫌に手柄自慢をしているらしいわ。


『今話題のゲーム、あたしが作りました!』


 ですって。よかったわね……。

忙しいときにいらんことしたくなるアレです。

こんなことしてるバヤイぢゃないのに……って、いつも思うんですけど、だって急に書きたくなっちゃったんだもん……。


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