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第一話 俺の周りはクズだらけ

明けましておめでとうございます。

新春を記念して新作投稿です。

第一話 俺の周りはクズだらけ


 突然だが俺は今、真っ白な空間の中に暮らすの連中といる。

 つい1分前までは朝のホームルームを待ってみんなで教室にいた。

 席に着いていたとは言えないが……

 はっきり言って俺のクラスは学級崩壊している。

 どこをどう間違えたか、学年の問題がある生徒を全てこのクラスに突っ込んだようなクラスができあがっていた。

 担任はノウキン丸出しの体育教師、30代の男で、殴れば全て解決という教育スタイルだったらしいが、このクラスの連中はそんな担任よりも遙かに悪質で狡猾だった。

 担任が教育的指導=暴力を行っているところをスマホで撮影し、モンスターペアレントを引き連れて担任を脅迫したのだ。

 担任は就任3日目で何も言えないでくの坊となった。

 気の弱い連中は4日目から不登校になり、クラスに出てきているのは男女ともくそったれな連中ばかりだ。

 そんな中、俺は誰ともかかわることなく、クラスでぼっちを決め込んで他の連中と一線を画している。

 別に真面目というわけでもない俺だが、不良というわけでもない。ただ、死んだ両親との約束で、高校までは絶対卒業するために生き残りを賭けてぼっちとなったのだ。

 それでも限界を感じ始めたゴールデンウイーク明けにそれは起こった。


 もうすぐノウキン教師が来るだろうという時間帯、クラスの連中は遠慮無く立ち歩き大声でクズな内容の会話をしているときに、突然音が全くしなくなった。

 何だと思っても分からない。


 隣のクズ男は口をパクパクしているのだが、声は聞こえてこない。


 何だと思っていると突然景色が切り替わってここにいた。


 真っ白だ。


 これはまさか、ラノベでよくあるあれだろうかと思っていると、俺たちの頭上に真っ白な空間の中でも更に白が際立つ光る球体が現れた。


 やがて球体は人の形を取るが輪郭だけで目も鼻も口もない。


 そして人型の白いものは俺たちに話しかけてきた。


「よくぞ来た、異世界の戦士たちよ。

 これから汝たちに一つだけ希望の能力を与える。

 汝らはその能力を使ってこの異世界を生き抜け。

 魔王を倒すもよし、人類を滅ぼすもよし、王として君臨するもよし。

 さあ、汝らに能力を与えよう。

 希望の能力をいえ」


 白い人型がそう言うと、俺たちは普通にしゃべれるようになった。

 ザワザワと騒ぐクラスメイトたち……

 といっても不登校になった連中を除いてなので、俺を入れても17人しかいない。


「少し質問はいいか」

 そうこうしていると、クズたちの中一番頭の回転が速い奴が白い人型に話しかけた。


「ほう、冷静な奴もいるのだな。

 いいだろう」


「俺たちがもらうの力とは何でもありなのか」


「私がかなえることの出来るものなら何でもありだ」


「では、おまえがかなえることの出来る能力とはどんなものだ。

 具体的に例をあげて教えろ」

 こんな時まで偉そうだ。


「ふん、偉そうな奴だな。

 だがそんな奴は嫌いじゃない。

 いいだろう教えてやろう。

 私が与えることの出来る能力は1つだけで、複数の能力は与えることが出来ない。

 例えば、全ての剣技が使える剣豪はダメだ。だが、誰よりも早く剣を真横に振り抜く能力は可能だ」


「なるほど、かなり使いにくそうだな。

 なら当然、全ての魔法を使える能力もダメだろうな。

 火炎系の魔法とかならいいのか」


「火炎系の魔法か。漠然としたものはダメだ。

 何よりも高温の火球を出す能力なら可能だ」


「なるほど、ファイヤーボールだけか。

 ならば俺はその火球の魔法がいい。

 応用が利きそうだからな。

 俺に何よりも高温な火球の魔法をくれ」


「よかろう、それでは汝に何よりも高温な火球を出す能力を与えよう」

 白い人型がそう言うと、頭のいいクズはうっすらと白い光に包まれた。

 能力が付与されたのだろう。




「さあ、他のものはどうだ。

 望みをいえ」


 みんながザワザワし始める。


 何がいいか話し合っているようだ。


「なら俺は剣だ。誰よりも早く剣で袈裟斬りしたい」


「よかろう」


「お、俺は落雷、雷魔法だ」

「私は回復魔法」

「あ、私も回復で」

……



 みんなドンドン好きな魔法や剣技を要求している。



「さあ、後はおまえだけだどうする」

 謎の存在が俺に声をかけてくる。


 正直攻撃手段は欲しい。しかし攻撃だけで異世界を生き延びられるのか……

「俺は回復魔法でお願いします」

 怪我をしても回復できれば生き延びる確率は上がる。

 俺は他の奴らと違ってぼっちだ。

 クラスの連中と役割を分業することは望めない。

 だからこその決断だった。


 結果、クソ野郎どもは攻撃系の魔法か技能、ビッチどもは全員回復魔法という展開になった。クラスのビッチどもはクソ野郎の誰かと必ず出来ている。役割分担と言うことだろう。

 最も男の方がかなり多いのだから、回復持ちの女とペアになれない奴は相当数出ることになる。奴らは怪我したらどうするつもりなんだろうな。

 そんなことを考えていると、意味不明の上位存在が声を発した。


「それではこれからおまえたちを異世界ジャークニークへ送る。異論は無いか」


「待ってくれ」

 上位存在の言葉に頭のいいクズが声を上げた。


「俺たちが送られる異世界はレベルとかあるのか」

「ふむ、いい質問だ。

 レベルはある。強い奴を倒せばレベルはたくさん上がる。

 弱い奴はたくさん倒さない無いと上がらない」


「俺たちがもらった能力は強い奴にも効くのか」

「そうだ。私の付与した能力はレベル差に関係なく効果を発揮する。

 しかし、ジャークニークで手に入る能力はレベルに依存し、強い奴には弱い能力が効かない」


「分かった。それならここで能力の試しうちをさせてくれ」


「あまりおすすめしないがまあいいだろう。

 おまえが何を考えているのか興味がある。やってみろ」


「ああ、そうさせてもらう。

 行くぞ!火球!全て燃やし尽くせ」


 クズはそう叫ぶと右手に高温の火球を作り出し……

 全身黒焦げになって倒れた。


「きゃー」

 クズと付き合っていたビッチが悲鳴を上げる。


「ああ、やっぱりバカだね。

 熱に耐性がないのに高温の火球を出せば一番近くにいる自分が影響を受けるに決まっている。言ったじゃないか。私の与えた能力はレベルとか関係なしに誰にでも効くと。もちろん術者自身も例外じゃないのさ」

 上位存在はニタニタとしている。

 この事態を予想し、楽しんでいるとしか思えない。


「イヤー。今回復してあげるから死んじゃダメ!

 回復」

 ビッチはクズに回復魔法をかける。


 すると……

 黒焦げのクズの腹部がパカリと開いて臓物があふれ出た。

 これが致命傷だったのだろう、クズはピクリとも動かず事切れる。

 回復ではなく開腹だった。外科手術の時には便利そうだが、何でも無いときに他人を開腹すれば当然こうなる。


「イヤーーーーー」ビッチは絶叫するが上位者はニマニマと笑うばかりだ。


「このクソやろー」「龍也の敵だ」「くたばれー」


 以外と仲間意識が強かったようで死んだクズのかたきとばかり、攻撃手段を手に入れたクズたちは謎の存在に向けてもらったばかりのスキルや魔法をぶちかます。


「袈裟切り!」誰よりも早く剣を振り抜けるスキルを手に入れたクズは、剣の代わりに50センチの直定規を剣に見立てて振り抜く。するとこのクズの両腕は肘から先が引きちぎれ、斜め上の方向へ飛んでいった。

「グヤー」クズの悲鳴が響く。振り抜くスピードのあまりの速さに肉体の強度が追いつかず、肘から先がちぎれ飛んだのだ。


「落雷」別のクズが叫ぶと、叫んだクズに雷が直撃した。こいつもプスプスと煙を出し、タンパク質の焼ける嫌なにおいがしている。


「くたばれ!高速パンチ」

 三人目のクズが超高速のパンチを謎の存在にぶち当てる。


 グギャーーー


 クズは肘から先が見事に潰れてミンチとなって倒れた。


「ふひひ。いくら早くても拳の強度がそれじゃあボクに傷一つ着けられないよ」


 他にも謎の存在に攻撃したクズたちはことごとく自滅した。


「「「イヤー」」」

 自滅したクズのうち三人は彼女がいた。クズと付き合っていた三人のビッチが悲鳴とともに駆け寄る。

「「「今、助けるからね!回復」」」

「よせー」腕がちぎれただけでまだ意識があったクズが叫ぶが既に遅かった。

 雷のクズと袈裟切りのクズとパンチのクズの腹が見事に開腹されて臓物をぶちまける。

 あのビッチーズには学習能力がないのだろうか。


「さあ、もう検証は十分だろう。後は異世界ジャークニークで存分に楽しんでくれ」

 たまたま俺の隣に来ていた上位存在はニマニマしながら白い光を強め始める。

 俺たちを転移させる光なのだろう。

 このままこの邪悪な存在によって送り込まれる異世界がろくでもないところだというのは確実なようだ。


 俺はせめての腹いせに、隣の上位存在へ向けて、もらったスキルを発動する。

「開腹・開腹・開腹!」開腹の三連弾だ。


すると……

「ぐぎゃーーー」

謎の上位存在は腹を縦横斜めに切り裂かれ、地球の生物とは明らかに違う色の臓物をまき散らしながら消滅した。


『邪神を倒しました。レベルが上がりました。……』

 頭の中に謎のメッセージが響き、俺は白い光に包まれていった。







ここまで読んで頂きありがとうございます。


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