【過去編】第一話 過去を振り返る幼馴染
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──────今日も博幸に拒絶されちゃったな……
私は、彼との関係が壊れてしまったあの日のことを思い出していた。
「……あの時、確かこんな感じでこの関係が始まっちゃったんだっけな……」
──────小学六年生の時、大型連休のせいで、彼を思う気持ちが爆発した。今までのたった二日の休日ですら、会えなくて寂しかったのに……ずっと一緒に居たいとは思っていたけれど、まさか自分が彼に恋をしていたとは思ってもみなかった。初めて自分の気持ちに気づいた時から、あっちの態度はいつもと何も変わらないことにイラつき始めた。いつも通りに接してくるのがとても辛かった。幼馴染だからって、いちいち近くて……そのくせ何もしてこなくて……
私のことが好きなのか、それとも嫌いなのか、ハッキリして欲しかった。でも口で言わなければ、そんなことが相手に伝わらないのは当たり前だ。
だからあの時、私は勇気を出して聞いてみることにした。
「ね、ねぇ……あんたってさ……私の……こと……ど、どう……思ってるの……?」
「どうした突然……熱でもあんのか?」
「ちっ……違うわよ!!」
「いきなり変なやつだなぁ……えっと……俺がお前をどう思ってるかだっけ? そりゃあ……小さな頃から色々世話になってる幼馴染って感じだけど?」
「ほ……他には……何かないの? 」
「他にはねぇ……真面目で優しいけどお節介が多くてたまに面倒臭いって感じかなぁ……あ、あと一回も寝てるの見たことない! やっぱ真面目だな!」
「……そう」
"可愛い”とか少しは言いなさいよ! せっかく女の子がアピールしてるのに…………でも、やっぱり好き……♡
それからもちょっとしたアピールをする日々が続いた。
まずは髪を切った時……
「髪切ったんだけど……この髪型……似合ってる……?」
「俺髪型とかよくわかんないけど、やっぱいつもの見慣れてるのがいいな」
「そ、そう……」
傘を持って来ようとしたけど、博幸と相合傘がしたくてわざと置いてきた時……
「あー、今日雨かぁ……傘持ってきてないなー……(棒) 博幸ー、傘入れてもらっていい?」
「俺もねぇわ……どうしよ(笑)」
「……天気予報見なさいよ……馬鹿」
「お前だって忘れてんじゃん」
「…………(持ってくればよかった……)」
もうすぐ修学旅行に行くってなった時……
「博幸、修学旅行の班決めとバスの席、どうする?」
「近所の先輩が『中村先生は毎年くじ引きでそういうの決めてるから今年もきっとそうする』って言ってたけど……」
「…………」
隣の席の時に博幸が教科書を忘れた時……
「……やっべ、教科書忘れた……」
「見せてあげようか?」
「助かる……ありがとな……」
「はい、皆さんこちらを向いてください。えー、昨日も言いましたが、中村先生は健康診断があるので今日一日は休みです。なので自習用のプリントを配ります。終わったら答えを配布するので先生の所まで来てください」
「あ、忘れてたわ(笑) 楽そうなやつでよかった……」
「…………(私昨日休みだったから知らなかった……)」
とまぁ、こんな感じで小六の時のアピールは全くもって効果がなかった……というか半分くらい先生に妨害されてるような……中一になって、周りの友達が更に増え、いつの間にか私はクラスの中心的な存在となっていた。そんな中、彼はいつもと変わらずにクラスの地味めな男子と仲良く話していた。
……もっと私のことを見て……
しばらくすると、そう思うことが増えた。クラスの他の女子が彼と話しているのを見ると、少し……いや、結構イラついた。そばを通るふりをしてこっそりと会話を聞いてみると……
「竹山くん、数学のワークの提出日、明日までだからちゃんと持ってきてね……」
と言っていた。まぁ、彼の性格からして、ケロッとした顔で「忘れた」とか言いそうだし……仕方ないわね……
そして翌日……
「ほら、持ってきたぞ……」
「ありがと。課題持ってくるなんて珍しいじゃん」
徹夜で終わらせた感がすごく出ていた。彼女も少し驚きながらそれを受け取った。
……課題なら……仕方ないよね……そう言って気持ちを無理矢理抑え込んだ。
でもまさか博幸が課題を持ってくるなんて……
……まさかあの子に言われたから持ってきた!?
いや、でもあの子結構可愛いし、太ってるわけでも痩せすぎてるわけでもないし……ありえないって話じゃないんだよな……でもアピールしてても意味ないし……うーん……これは誰かに相談するべきなのか……? でもなぁ……こういうのって結構すぐにどこかから漏れちゃうものだし……話さない方がいいかな……
そして私は、自分磨きをすることを決意した。
『男を掴むなら胃袋を掴め』って言うし、まずは料理の練習でもするか……
しかし、自分の料理の腕は予想以上に酷かった。例えばキャベツとレタスの違いが分からない。食べた時に、『あれ?なんか違うな……』となりがちである。人参や大根を切った時、それぞれ厚さがバラバラだし、ハンバーグとかを作ってみたら中まで火が通ってなくてお腹を壊した。
一人じゃ出来ないと諦め、母親とレシピ本に頼ることにしたが、そうしたら結構上手に出来るようになった。
普段は厳しい母親からも、『ん、美味しいわね。これなら人に出しても恥ずかしくないわ』と評価を貰った。
まだまだ練習は足りないが、いずれ博幸に美味しいご飯を食べさせてあげたい……そして、あわよくば私のことを女として見て貰いたい。
──────次の日、博幸が授業で一回も寝なかった。私も先生もとても驚いたが、二人とも博幸には尋ねなかった。しかし先生は放課後に、
「なぁ、大川……確か大川は竹山の幼馴染だよな? 昨日何かあったか知ってるか……?」
と尋ねてきた。
「……私は何も知りませんね……ただ、博幸が成長してくれたみたいで良かったです」
「まぁ、起こす手間が省けて良かったよ。あいつに一体何があったんだ……?」
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