日曜日
「おおっ! やっぱなーむ!」
「あっ! あっ! あっ! まゆみ!」
「なんかこの電車」
「あははっ!」
「なんかこの電車な、乗る時な。なーむ乗ってんちゃうかって。ふと思って。まさかほんまにおるとは」
「えっていうか。えっ。日曜にこんな。こんな早い時間とか。よくこの電車乗ってんの? まゆみ」
「いや全然。たまたま。なんか寝れんかってな、ずっと起きとってな。そのまま5時半ぐらいやったかな、そんぐらいの電車乗ってな。しばらく梅田ウロウロしてな。ほんでなんか。なんとなくな、JR乗ってみよとか思ってな。えっていうか、なーむ、学校? ていうか、学校周辺? に行くん? ちゃうやんな?」
「ちゃうちゃう。三ノ宮行こっかなって」
「えっそうなんや。えっ、なーむって。三ノ宮よく行くん?」
「いや全然。もうなんか一年ぶりとか。そんな感じの。あっほら。あれちゃうかな。あのほら。あそこ。地下街で。段ボール買ったやん」
「買ってた! 買ってた!」
「あの時の。あれたぶん最後で。あれ以来ちゃうかな」
「そうかあ。なるほどお。そっかなるほど」
「そうそう」
「そっかあ。えっ次、どうする?」
「なにが」
「降りる?」
「えっ。いや……どうしよ」
「あっほら。着いたって。ほら。降りてみいへん? ちょっと一回。ほら。降りてみるだけ」
「うーん」
「あれっ? あっちゃうわ。あとひと駅やったわ」
「うん」
「これほら。この時間帯やったらな。誰も、な。うちの学校の生徒とかはな。おらんし。たぶん。日曜やし」
「うん」
「ちょっとな、やっぱいろいろな、思ったけどな。やっぱな、なーむを疑ってる人っていうのはな、おらんねんて。これ。絶対」
「うーん」
「……」
「……」
「最近分かったわ。いろいろ。報道とかもな。見ててな。なーむを疑う人はな。おらんっていう」
「えっどうなん? まゆみ。最近」
「何が?」
「学校とか」
「うんまあ普通。でもあれやな。朝とかはな。やっぱな。なーむがおったほうがええけど。行くとき」
「うん」
「まあ他は別に。なんも。普通。あとあれ。あの。誰もなーむのこと、疑ってないのは確か。学校の中で。えっでもあれなんちゃうん。あのほら。クジラのいた場所とか。あれから全然、行ってへんのやろ?」
「ああうん。全然。一回も」
「えっじゃあ、銅像とかも見てへんのやろ?」
「えっ銅像って? あの? 会長の?」
「そうそう」
「銅像なあ……そうやなあ。銅像ちょっと見ときたいかもなあ……」
「いや絶対見とくべきやと思うで。やっぱ。マジで。なーむは」
「うん」
「そうかあ。やっぱ銅像まだかあ」
「まだやなあ」
「あんな、この。銅像にな、あの。イタズラがな。最近多くて」
「ははっ」
「でな、このな。銅像のイタズラについてはな。ちょっと。なーむが疑われてる時もあんねん」
「いやいやいや」
「ふふ」
「いやいやなんで! 私そんなんせえへんって!」
「いや分かってるって。でもなぜか、YKDGのな。会長がらみの話とかそういうのでは、な。こう。なーむが登場するわけ」
「いやいや、ちょっと待って、銅像にイタズラって何? どんな?」
「いやなんか、いろいろ。変な服とか。ペンキとか。最近あんまペンキはなくなったかも」
「ははっなんかそれ……いやいやいや……」
「うんこれ、何の音?」
「なに?」
「なんかほら、この。すすり泣きみたいなの」
「えっあああ……」
「……」
「ほんまや、すすり泣きに聞こえんなあ」
「すすり泣きにしてはでかいなあ」
「えっこれって? 電車からしてんの? この音」
「いやああぁぁ……どうやろ……」
「マジでどっからしてんのやろこれ」
「分からん……」
「……」
「ははっ、いやーしかし。そうかあ。でもあれかあ。あれから一年やんなあ。えっちょうど……ちょうど一年ぐらい? ちゃう?」
「えっああ、そうやなあ、4月やったっけ。えっ? いや……いやそうか。うん。4月やわ。うん。ちょうど一年かもなあ」
「なんか、これ。すすり泣きの音。でかなってんな」
「ははっ」
「爆発とかせえへんよな?」
「……」
「……」
「うーん……」
「なあ、どうするなーむ?」
「うん?」
「見に行ってみいへん。クジラの場所」
「うんそうやなあ」
「行く?」
「行くかあ……」
「うし。行こっか」