二度目の禁断の恋のはじまり
「先生、あのとき…どうしてキスを受け入れてくれたんですか?」
部屋には微かに残るリキュールの香り。
手触りの良いシーツに包まれた身体。
そんな身体は少し火照って、彼のやさしい金木犀の香りがする。
「…教えない」
「教えてくれたっていいじゃないですか。もうあれから6年は経ってますよ」
6年前の記憶と共に熱い行為を済ませた、その相手は中学時代の副担任だった渡辺宏貴。
在学当時から私達の関係は少しだけ複雑だった。
でも今は…もっと複雑な関係になった。
そんな複雑さを紛らわすかのよう、私は愛用のオプションパープルを手に取ると、渡辺先生は「身体に悪い」と止めてきた。
すると、渡辺先生は突然やさしく口づけを落とした。
「…これ、やっぱり邪魔だな」
私の右手の薬指にはめているピンクゴールドの指輪を渡辺先生は勝手に外してきたのだ。
「ど、どうしたんですか。卑怯ですよ、私だけなんて」
「わかっててやってるんだ」
渡辺先生は自らの左手の薬指にはまっているシルバーの指輪を外した。
「今くらい外したいだろ」
「このクズ教師め!」
「お前も人のこと言えないだろ」
「とにかく早く煙草吸わせてくださいよ!!」
私は早く煙草が吸いたい。
禁煙なんて無理。しかもこの状況。
渡辺先生は4年前から奥さんがいる。
私は…一年半前から彼氏がいる。
そんな状況、このラブホテルという場所。
ここまできたら、私と渡辺先生が何をしたかって大体の人は想像つくはずだ。
そう、私は最低なことをしてしまった。
でもなぜか、少しだけ嬉しさが混じっていた。最低なのに。
一人で悶々としていたところ、渡辺先生は急に優しく抱きしめてきた。
「俺は前からお前のことが…」
渡辺先生はポツリと独り言かのよう呟いた。