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漫才の台本

漫才「家出」

作者: 沢山書世

漫才21作目になります。どうぞよろしくお願いいたします。

この作品は、youtubeにも投稿しております。

 社長の自宅に、キャリーバッグと手土産を抱えた平社員がやってきた。

 社員「突然おじゃましてすみません。社長の好物を持ってきました。どうぞ召し上がってください」

   社員が手土産を社長に渡す。

 社長「ありがとう。なんだ、旅行帰りか?」

 社員「いいえ、これからなんです」

 社長「これからって・・・だってこれ、お土産なんだろ・・・どういうこと?」

 社員「僕、家出をしてきたんです。社長の家にしばらく居候させてください」

 社長「ひょっとして、夫婦喧嘩か?」

 社員「ええ、昨日ちょっと」

 社長「君のところはたしか新婚ホヤホヤだっただろう。家出はまずいよ、帰りなさい」

 社員「嫌です」

 社長「嫁さんの為にもそうしたほうがいいんだ。喧嘩をしているとはいえ、居なくなれば心配するだろう」

 社員「大丈夫なんです。家に彼女はいませんから」

 社長「え? なんで?」

 社員「家出したからです」

 社長「なぬ?」

 社員「先に出て行ったのは彼女の方なんです。僕が帰ったとしても、家には誰もいません」

 社長「それじゃあ君は何のために家出を? 意味はあるの?」

 社員「やられっぱなしでは嫌なものですから」

 社長「家出のし返しか」

 社員「ええ。目には目を、家出には家出を、といったところです」

 社長「でも、嫁さんが戻ってきたときに君が留守では困るだろうに」

 社員「困ればいいんです」

 社長「負けず嫌いだなあ」

 社員「そういう訳ですので、しばらくの間厄介になります」

   社員が家に上がって、社長の横を通り過ぎる。

 社長「課長や部長には相談したのか?」

   社員が後ろを振り返る

 社員「ええ、行ってきました」

 社長「それで、なんだって?」

 社員「うちは狭いから無理。家出するなら社長の家の方が広くていいだろう、とアドバイスを頂きました」

 社長「あいつらあ。明日付けで左遷させてやる」

 社員「奥様にもご挨拶をしてきます」

   社員が家の奥に進もうとする。

 社長「妻はいないんだ」

   社員が立ち止まって振り返る。

 社員「お出かけですか?」

 社長「家出した。一昨日だ」

 社員「なんですと?」

 社長「原因は君のところと同じだ、夫婦喧嘩」

 社員「そうだったんですか。夫婦喧嘩っていうのはあれですかねえ、伝染してしまうものなんでしょうかねえ」

 社長「だとしたら謝らなきゃな、うちの方が先だったんだから」

 社員「嫌だなあ。冗談で言っただけなんですから、責任を感じたりしないでください」

 社長「あー、こんなことになるんだったら、先に謝っときゃよかったなあ」

 社員「社長の方が一方的に悪かったんですか?」

 社長「まあ、五分五分といったところだったと思うよ」

 社員「だったら先に折れちゃあだめですよ。この際だから、社長も家出し返してやったらどうです?」

 社長「家出っていってもなあ、どこに行けばいいのやら」

 社員「僕んちを使えばいい。空いているんですから、遠慮なくどうぞ」

 社長「夫婦喧嘩中の家だろう。なんだか縁起悪そうだなあ」

 社員「ここだって同じでしょう。僕はそれでも我慢するんですから、社長だってえり好みしないでくださいよ」

 社長「他にどこかないの?」

 社員「だったら会長のところに行きますか? 僕、社長に断られたらあちらに行こうと思っていたんですよ」

 社長「会長かあ、居候させてくれるかなあ」

 社員「社長命令だって言えば大丈夫ですって」

 社長「会長にそれは通用しないだろう」

 社員「じゃあ二人がかりでお願いしてみましょう。僕も一緒に行ってあげますから」

 社長「おお、それだったら心強いな」

 社員「縁起の悪い者同士、協力していきましょう」

 社長「ああ、よろしく頼むよ」

 社員「さあ、善は急げです。さっきの手土産を持って行くとしましょうか」

 社長「え? あれは私がもらったものだぞ」

 社員「今回はあきらめてください」

 社長「もう食べる気持ちになってしまっているんだが」

 社員「今は家出をするのが最優先です」

 社長「急いで食べるから」

 社員「ダメですよ。先に奥様が返って来てしまったらどうするんですか」


読んでいただき、どうもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二転三転と小気味よい小ボケや返しの一言が波のように押し寄せてくる感じが良いです。小ボケの質を維持しながら回数も多いところが最高。 途中から社員と社長の立場が入れ替わってくるところが、また…
2019/10/19 18:25 退会済み
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