天姿国色~中編~
イルヴェンヌを出て一か月。
私たちは中央都市ウィンセントのはずれにあるボロアパートで生活をしていた。
「アミー!石板は持ったの?はい、お弁当。これ」
「石板持ちました!お弁当ありがとうございます!」
アミーは近くにある教会学校に通わせることにした。身寄りのない子や学校に通えない子などを集めて勉強を教えてくれる施設だ。
「じゃあ、今日も元気に行ってらっしゃい!」
私はアミーのおでこにキスをして送りだす。かわいくてたまらない。私のアミー。
「行ってきま~す!」
アミーを送り出すと、私の忙しい一日は始まる。
「え~と、ギルド求人……魔術師……魔術師……」
高校までは一応魔術を学んでいた。二年間のブランクはあれど、けっこう腕は立つはずなのだが……。
「……求人が、無い~!!! 」
何故だ?何故だ?時期が悪いのか!? 毎日求人を見ても出しているギルドはほとんど無い。募集があっても魔術師以外だそうだ。
も、もしかして……魔術師就職氷河期!?!? そ、そんな馬鹿な……!!!
芸能事務所を開業したとはいえ、それだけでまだ稼げるわけではない。このまま貯金を食いつぶすような生活は、何としても避けなければ……!!
とはいえ、仕事は見つからない……。
家に帰り昼食を摂って、午後からはひたすらオーディションへの応募だ。
ひたすらに履歴書を書き、写真を貼り、ポストへ投函して、午後三時。そろそろアミーが帰ってくる。家に戻らなくちゃ。と、その前にもう一度ギルド求人を確認する。
うん。やっぱり駄目だ……。
「今日も見つからなかったんですか?ギルド」
純真無垢な笑顔でアミーは言う。くう……心がえぐられそうだ。
「でもね、悪いことばかりでも無かったんだよアミー!」
「そうなんですか!? 」
目をキラキラと輝かせるアミーに、私はあるものを見せびらかした。
「じゃーん!アミーちゃん、子役オーディション書類通過です!」
アミーは口を開けてぽかんとしている。
「……どうしたの?もっと喜んでいいんだよ?」
「い、いえ……その、嬉し……過ぎて」
アミーはぽろぽろと涙をこぼした。そっか。そんなに嬉しかったんだね。
「よしよし、アミー。嬉しかったんだね。夢だったもんね」
「はい……セアラさん、セアラさんのおかげで私は……」
「ほらほら、まだ書類審査だよ?気抜いてちゃだーめ。さ、夕食の準備をしましょう」
夕食はアミーの大好きなハンバーグを二人で作った。
アミーがハンバーグを好きな理由は『美味しいし、たくさんお手伝いできるから』らしい。なんて偉い子なんだ。
安い材料だが二人で作ったご飯はいつも美味しい。亜魅は学校であったことをいつも楽しそうに話してくれる。
ご飯を食べ終えると二人で食器の片づけをして、近所の公衆浴場へ向かう。
なあに、二人とも、公衆浴場なんて慣れっこだ。何も感じない。
公衆浴場から帰ると布団を敷いて、アミーを寝かしつける。
「セアラさん。本当に、行くんですか?」
「うん!高校の時の友達のツテで新しい戦闘パーティーを組むの。しっかりモンスターやっつけてくるよ~!」
「気をつけてくださいね!私、セアラさんがいなくなったら……」
「アホーッ!私がアミーを置いて死ぬわけないでしょ。心配してくれるのは嬉しいけど、これも生活の為だから」
私はアミーの頭をぽんぽん、と叩いてみた。するとアミーはにっこりと笑った。
「私もいつか、セアラさんみたいな魔術師になりたいです」
……私は少し、いやとっても驚いた。
「え?アミーあなた……モンスターと戦いたいの?」
「はい!セアラさんばかりに任せてしまうのも申し訳ないですし、自分で戦えるようになればお金だって……」
「……アミー!!! 」
気づくと私は怒鳴っていた。
「アミー……あなたは、どうしてそんなことを言うの?私はね、アミーに戦って稼いでほしいなんてこれっぽっちも思ってない。モデルの夢はどうしたの?」
「セアラさんごめんなさい私……」
「壁があるの。まだ。私とあなたの間には。私はその壁をなくしたい。私たちは一緒に娼館を出てきた仲間……言ってしまえばパートナーじゃない」
「でも私はセアラさんに助けてもらって、その借りを返したくて……」
「そんな借りなんて求めてないよ。ていうか、私はそんなの貸しだと思ってない。アミーは、私に必要だったからついてきてもらったんだよ」
「セアラさん……」
「さあ、おやすみ。いい子よ」
「シノっち~!遅くなってごめん!」
「大丈夫。まだけっこう時間余裕ある」
時計を確認してからそう言ったのは高校の同級生であるシノだった。
綺麗な黒髪の長いポニーテールに、シンプルだけどかっこいい和服。
背中には矢筒、右肩には自慢の弩だ。高校の時から変わっていない。
「本当!? よかった~!こんなの久々で、すっごい緊張するよ~!」
「……そう。本当に久々だね。今まで連絡もつかずに一体どこで何してたの?」
険しい表情でシノは言った。うう、そんなに責めないでよ~。
「し、仕事が……忙しくてね。ご、ごめんね」
「へえ。何の仕事?」
「……じ、事務系……かな」
「ふーん。それで、魔術師復帰は約二年ぶりというわけだね。今日来るのは私がいつもパーティー組んでる人たちだから大丈夫だよ。優しいし」
「なんだか慣れてるねシノっち!かっこいい!」
「そりゃあね……。セアラが事務系の仕事?してる間にもずっとこうやって弩を引いてきたわけだし。慣れもするよ。……いやまだ全然慣れてないけど」
「慣れは狩りの一番の危険!でしょ?シノっちいつも言ってたもんね!」
「そうそう。慣れは狩りの一番の危険なのだー。こう毎日狩りしてても驚くことばっかりだしね」
「ふむふむ。そうなんだね~。私なんか大丈夫かな……」
「大丈夫だよ。セアラなら。……あ、あと今日、カスミンも来るから」
「え!? シノっち、カスミンとまだ付き合ってたの!? 」
カスミンとはエメラルドソード・カスミのことで、シノの高校の時の恋人である。彼は両手剣使いだ。
「何だよー。失礼だなー。……もう婚約もしてる、一応」
シノっちは恥ずかしそうに言った。
「そっかー。むふふ。なーんか嬉しいな!おめでとう!」
「……ありがと。結婚はまだなんだけどね。……あ、そろそろ皆来るかも」
シノは時計を確認した。
「……ていうか、来た」
「おー!シノ!その子ってもしかしてセアラちゃんだよね?高校の時の!いやー久しぶりだなあ!」
どこからどう見てもエメラルドソード・カスミだった。高校の時から全然変わっていないように見える。
「久しぶりカスミン。シノっちと上手くいってるみたいで、よかったよ」
「いやあ……照れるなあ。お陰様で、だよ」
高校の時と比べると随分毒が抜けていた。もっとツンケンした性格だったはずなのだが。
「こーらっ!何言ってんの馬鹿」
シノが彼をどつく。……仲が良さそうで何よりだ。
「おあーっ!本当に新人さんだあ!」
そう声をかけたのは茶髪ショートヘアのボーイッシュな女性だった。
小柄な背中にはとても大きな両手剣を背負っている。
そして隣には服装も髪も真黒な男性が立っていた。
鞘を両脇に二本抱えているので……二刀流か何かだろう。
「ユイちゃんにザインちゃん!やっほー!この新人さんは私の高校の同級生、魔術師セアラちゃんだよー」
「おお、じゃあ先輩だったのか」
ザインちゃん、と呼ばれた男性の方が言った。
「え?どゆこと?」
「二人はミネルヴァ学園の三つ下の後輩なんだよ。まあ、二人とも私たちとは違ってSクラスだけど」
「Sクラスー!? なるほど、そうだったんだね」
ミネルヴァ学園のSクラスというのは特別推薦クラスで、まあいわゆる能力の優れた生徒達の特進クラスというわけだ。
「魔術師が二人いるとかなり助かるよね!ザインもそう思うでしょ?セアラちゃんは攻撃タイプか回復タイプかどっちー?」
「こらユイ。先輩だって言っただろ。敬語使えよ敬語」
元気な女の子に、落ち着いた青年、といった感じのカップルだ。実にバランスが取れている。
「あ、いやいや、気にしないで!敬語なんて使わないでいいからいいから!」
「やったー!シノのんとおんなじだ!敬語苦手なんだよねあたし」
「よかったなお前……。あ、こいつがユイ。両手剣使いで、俺がザイン、二刀流です。セアラさん、よろしくお願いします」
「あ、ど、どうもよろしくね……?ザインちゃんも敬語じゃなくていいからね?」
「……ザイン、でいいです」
「ほら照れるなよ!ザイン、ちゃん!この子ね、年上からは皆ザインちゃんって呼ばれてんの。ウケるよねー!その名付け親がもうすぐ来るはずなんだけど、っと……来た!」
ユイが指さした方向に居たのは、大きな盾を持った体格のいい男性と、小柄で可愛らしい女性……おっとこちらは魔術師だ。皆に比べると年齢は上だろう。
「あら皆こんばんは~」
「皆もう揃ってるのか。遅くなってすまなかったな」
「トモさんたちおっそいよー!皆揃ってるよ?今日は新人さんが居るんだよー」
ユイが愉しそうに言った。私の方向を指さす。
「あらあら。そうだったな。どうも初めまして。私が魔術師のユーリと、旦那が片手剣盾使いのトモナリだ。よろしくお願いします」
旦那!?結婚しているのか……。なんだなんだ?ここはカップルパーティーなのか!?
「あっ、魔術師のセアラです……よろしくお願いします」
「おお、魔術師が二人居ると助かるな。攻撃系か?回復系か?」
ユイと同じ台詞を言ったのは片手剣盾使い、トモナリだった。
「私は一応攻撃魔法を学んでいました。回復に回れないこともありませんが……」
「おお!なら助かるな!ユーリは回復系だからな。加勢してくれるんならちょうどいい」
「それなら……良かったです」
「おお!セアラちゃん攻撃タイプなんだね!全然そう見えなかったよー。攻撃タイプの魔術師はごつい人しか見たことないもんー!」
「確かにごつい人が多いかもね。魔術師っていうか魔術士って感じの」
「はは!そうそう魔術士!」
「セアラさん、もうちょっと前に出てくれるか?」
「わわ!っはい!すみません!駄目ですよね攻撃の私が回復のユーリさんと一緒に居ちゃ!」
「ユーリさん~!セアラ実戦復帰は久々なんで多少大目に見てください!」
シノの言葉。うう、自分が情けない……。
「あらあらそうだったの?早めに言ってくれればよかったのに!じゃあこれ、はい」
と、ユーリさんは私に向かって呪文を唱えた。気持ちがスーッと楽になっていく。
「え!?なんですかこれ!? 心理魔法!? 」
「……そうそう。気休め程度なんだけどな。ちょっとは緊張溶けたか?」
「はい!凄く楽になりました!」
「じゃあ私より一歩前のところで!頼んだぞ!」
無事に狩りを終え、街に戻ると日付は既に変わっていた。
森は暗かったけれど、街の外套はとても暖かい。娼館街のきらびやかなそれとも違っていた。
目覚まし時計の激しい音に目を覚まして、まだ寝たいと言う身体を無理やり起こした。
朝だ。ご飯を作らないと。
「おはようございます!セアラさん!昨日はどうだったんですか?」
「楽しかったよ!久々で怖くてどきどきしてたけど、皆いい人たちで助かった」
アミーを送り出し、また私の忙しい一日は始まった。
「え~と、ギルド求人……魔術師……魔術師……求人が、無い~!!! 」
毎日求人を見ても出しているギルドが見つからない。
やっぱり魔術師就職氷河期?!? そんな馬鹿なぁ…。
──仕事、見つけないと。
家に帰って、午後からはひたすらオーディションへの応募。
いつものようにひたすらに履歴書を書き、写真を貼り、ポストへ出して、午後三時。そろそろアミーが帰ってくる。
家に戻らなくちゃ。そうだ、おやつを買っていこう。
私は近所の洋菓子屋さんに寄ることにした。初めて入る店だった。
「あの、このなめらかミルキープリンっていうのを二つください」
「はい!なめらかミルキープリンですね。うちの店で今一番人気なんですよ」
パテシィエの格好をした物腰の柔らかそうな男性は優しい笑みを浮かべてそう言った。
「あなたが作ったのですか……?」
「はい。この店の菓子は全部、私が作っています。数は少ないですが、どれも自慢の商品です。ははっ」
男性は照れたように笑いながら言った。
「凄い……。どれも綺麗で、美味しそう……」
「あの!良かったらまた、いらしてください。……これ、私の名刺です」
名刺には、『ミルキー・レイン ギルドマスター チェルシー・カヲル』と書いてあった。
「あ、あなたギルドマスターだったの!? 」
「はい。ふつつかながら……。ミルキー・レインは洋菓子屋を兼ねた小さなギルドです。私がパテシィエ兼ギルドマスターを務めさせていただいております」
私は思った。ダメ元でもいいから……聞いてみよう。
「あの……ギルドメンバーを募集したり……していないでしょうか?」
すると彼はにっこりと笑った。
「募集してますよ。その為にギルド用の私の名刺を渡させていただきました」
「え……え……?」
状況が呑み込めない。
「こっちがパティスリー用の名刺です。あなたでなければ、私はギルド用の名刺を渡したりしませんでしたよ」
カヲルはもう一枚の名刺をぴらぴらさせながら言った。
「じゃあ……ギルドに……入れてくれる……ってこと……?」
「はい。勿論です。私がお誘いしたのですから。どうぞ、よろしくお願いします」
急いで家へ帰ると、扉の前でアミーが待っていた。
「もう~!セアラさん!遅いですよ!」
「遅くなってごめんねアミー!! 私ね、就職先決まったよ!!」
「え!? え!? 本当ですか!? やったー!!」
「なるほど~。じゃあ、セアラさんはスカウトされたって訳ですね!それにしてもこのプリン美味しいです~」
「うん。びっくりだったわ。水商売や風俗のスカウトなら何回もあったけど、まさかギルドマスター直々にスカウトしてくれるなんて!プリンも美味しいし!最高!」
「本当に美味しいプリンです~。セアラさんも嬉しそうですし!」
「え?カヲルさん私のこと知ってたの……?」
「はい。ギルドメンバー募集掲示板の前で毎日のように顔をしかめていましたから。きっとギルドをお探しの方なのだろうなと思いまして。そしたら、なんと店に来店された」
「凄い……そんな偶然!」
「僕も驚きました。これは怪しまれずに話しかけるチャンスかな、と思ったんです」
私はカヲルさんと小さな休憩室で話をしていた。
「今日は昼からギルドメンバーが来る予定なのですが……」
カヲルさんがそう言うとちょうど、休憩室のドアが開いた。
「やあ、カスト。おはよう」
「うおおっ!?カヲル、ナンパ成功したのかっ!?」
さらさらした金髪に切れ長の金眼のカストと呼ばれた男は驚いていた。
「こらカスト、変なことを言うんじゃない。お誘いしたんだよ」
「ナンパだろ?ナンパ!こいつ昔からめちゃくちゃ奥手なんだよなあー!……っと!初めまして!サブマスターのアンサルディ・カストです!ちなみにカヲルとは幼馴染」
とにかくよく喋る人だなという印象だった。というか、話についていけない。
「えっと、初めまして。ボーヴォワール・セアラといいます。魔術師です」
「セアラちゃんも魔術師か~!結局俺一人が前衛かよ~!あ、俺はちなみに盾持ち片手剣やってます。ヨロシクー!」
「ということは、カヲルさんも魔術師なの?」
「はい。申し遅れましたが回復魔法や心理魔法などのヒーリング系の魔法を扱っています」
「あ!じゃあちょうどいいわ。私は戦闘系魔法が専門なの!」
「いいじゃんいいじゃん!俺とセアラちゃんが前衛で、カヲルが後衛って感じでさ!」
「いいですね。今日はお店を早めに閉めて、ちょっとした狩りにでも出てみましょうか」
私を含めたギルド、ミルキーウェイの三人は、モンスターの森の入り口に来ていた。今日はこの入り口付近に出る、人に害を及ぼすゾウネズミを狩る。
まず、私が炎魔法で敵を弱らせる。そしてカストさんが弱った敵の隙をついて斬る。カヲルさんは後方支援だ。
「楽しいね~!セアラちゃん!超効率いい!」
カストさんはテンションが高くてノリノリだった。対してカヲルさんは寡黙で冷静だった。この二人、正反対で見ていてとても面白い。
そうこうしているうちに陽はすっかり落ち、辺りは真っ暗になっていた。
「あ、私もう帰らなきゃいけないので……」
「セアラちゃん一人暮らし?うちに一緒に住もうよー。な!カヲル!」
「いえ、一人暮らしじゃないです。その……妹が」
「へえ!妹居たんだセアラちゃん!紹介してよ~!」
紹介……という言葉を聞いて、なんだか少しもやっとした。アミーをカストさんに紹介……なんか、嫌だ。
「紹介は、出来ないです。すみません」
「え!? 謝ることないよ別に!! いいよいいよ!! 俺こそごめん!!」
カストさんが明るい人で良かった、と思った瞬間だった。
「では、カストさん、カヲルさん、お疲れ様でした。お先に失礼します」
「こんなに暗くなっちゃって、アミー、大丈夫かな……?」
玄関のドアを開けるとアミーは目の前に居て、体育座りをしていた。
「セアラさん、遅い……。私もう、帰ってこないのかと……。見捨てられたのかと思って……」
アミーは泣いていた。私はすぐさま抱きしめた。
「ごめん。ごめんねアミー……。たった一人で、心細かったよね」
アミーには私以外の居場所が必要だと思った。でも、どうすれば……?
「うちのギルドに来ればいいじゃないか」
そう言われて驚いたのは、ユーリさんに誘われたお茶会でのことだった。
「え……いいんですか?」
「ただし、何か戦術を学ばせないといけないな。セアラちゃんは、魔術、教える気、無いの?」
「先日、アミーに魔術を学びたいと言われたばかりです……」
「おっ、ちょうどいいじゃないか~。弟子にしたら?師範免許は持ってるんだろう?」
「はい。持ってます……。でも、アミーを危険な目には合わせたくなくて……」
「少しは見放してあげるのも、その子の為にはなるんじゃないかと思うんだけど、違う?」
まるで心を読まれたかのようなユーリさんの発言に、私はとても驚いていた。
「アミー、こないだ言っていたことなんだけど」
「ほえ? どうしました? 」
「魔術を、学びたい? 」
「え!? いきなり、どうしたんですか!? セアラさん!! 」
「いや、純粋にね、魔術師に……なりたい? 」
「……そりゃあ、なりたいですよ!! 今日も学校で魔法術の時間、一番だったんですから!! 」
「すごいじゃないの。……そっか。魔術師になりたいのね。アミー、すごくいい話があるのだけれど」
「え!? なんですか!? 」
「私の弟子に、ならない? そしたら、私のお友達のギルドに、入れてもらえるそうなんだけど」
不思議がっていたアミーの表情が、どんどん晴れていく。そして笑顔になった。
「はい! なります! ギルドにも、入ります! 」
「アミー……!! 」
「セアラさんのお友達のギルドっていうのは、セアラさんとは違うギルドなんですよね?」
「ええ。違うギルドよ。お互い、別々のコミュニティーを持った方がいいかと思って。それに同じギルドだと、私はアミーのこと甘やかしちゃうから」
「そんな勿体ない理由があったのですね。少し寂しいですが、我慢します。でも、セアラさんの弟子になれて嬉しいです!これからは師匠、とお呼びしますね!」
「師匠、かあ。なんか変な感じだな。慣れるんだろうけど。アミーが、納得してくれて本当によかった。よろしくね。私の愛弟子ちゃん」
「愛弟子だなんて……勿体ないです」
さあ、また新しい一歩の始まりよ。
つづく