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62.使徒の荷馬車

よろしくお願いします!

 一通り取り調べ、事情聴取が終了し、俺たちは退屈から解放された。

 結論から言ってしまうと、クルトたちの金級昇級はほぼ確実らしい。

 同様に俺たちも、銀級冒険者がついていたとはいえ、危険な迷宮を生き抜けるスキルがあるとみなされ、昇級する可能性が高いとのことだ。


 既に一足早く銅級になっていたモニカたちが銀級になれるかどうかは分からないが、まず俺とエレノラは昇級するだろう。

 元々、俺たちは功績を目当てにこの冒険をしていた訳ではないし、手柄は全てクルトたちにくれてやるつもりだったのだから、棚ぼたである。


 正式な結果は後日、通知されるそうなので、それまで大人しく待っていよう。


 そうした一連の報告会が終わり、俺たちは会議室の外へ出た。


 いつの間にやら長い時間を過ごしていたような気もするが、クルトたちは所詮、他のパーティの人間。

 彼らとはここでお別れだろう。


 お別れと言っても、同じ町にいるわけだし、顔を合わせる機会は多いだろうが。


「ここから、クルトたちはどうするんだ?」


 俺は、彼らに尋ねる。

 ちなみに、俺たちは宿に帰って、数日間の休息をとる予定だ。

 もう数か月分は動いた気がする。全身が筋肉痛で悲鳴を上げてるもの。


「とりあえずは解散して、それぞれ休もうと思っている。……だが、油断はできないぞ。夜道に気を付けておけ」


 何故。とは言わない。

 トータスの街に帰ってきてまで俺たちが警戒しなければいけないことなど、一つだ。


「まだ、完全には信用できませんよ。所詮は、ただのアンデットです」


 クルトのありがたい忠告を、そうバッサリと切り捨てたのは、血も涙も胸も無い女、モニカである。


 彼女ったら、黒騎士グレウス君の涙を流さずには語れない感動の過去を、信用できないの一言で片付けるつもりらしい。まあ、ひどい。


 確かに、俺だってあんな見た目からして人類の敵みてぇな胡散臭い騎士を信用しているわけではないけどな。

 作り話にしては作り込み過ぎてんだろ。と思っているだけだ。


「まあ、用心するに越したことはないんじゃない? ほら、受付嬢も言ってたでしょ」


 シンシアが言っているのは、先ほどの報告会中、嬢が話していたことだろう。


 嬢が言うにはどうやら、俺たちのパーティは今回の件で目立ちすぎてしまったらしい。

 元々有名だったクルトたちは置いておいて、傍から見れば完全な寄生プレイヤーである俺たちは、実力主義的な風潮のある冒険者連中からよく思われていない。と。


 あ、訂正。

 確か、男冒険者のヘイトのほとんどは俺に向いているんだっけか。


 エレノラたちは、中身を除けば美少女だからな。

 彼女らは殴れない、ということなのだろう。


 あと、「そんな美少女に囲まれてるあのクソガキ死ね。二度と女が寄り付かない顔にしてやる!」という嫉妬も含まれているとか。


 酷い話だが、逆の立場なら妬みから俺も何をしたか分からないので、特別に許してやる。


「ウチのガウェインさんにかかれば、冒険者の一人や二人大丈夫だろ」


 俺は軽薄にそう答えた。


「そうだった! ガウェインをメンテしないと! ……ほら、帰ろう!」


 エレノラが思い出したように呟き、俺の腕を引っ張る。

 中身はサイコだが、こうしてみると幼女っぽくてかわいらし……いだだだっ!? 爪立てんじゃねぇ!


「そういうことだ! じゃあな!」


 駆け足気味になったが、一応、別れの挨拶をしておこう。

 クルトたちも、エレノラの奇行にはもう慣れたらしい。

 特に気にせず、むしろ朗らかに挨拶を返した。


「『使徒の荷馬車』!」


 エレノラが、魔法を行使する。

 これは、物を運搬する際の膂力を増大させる、非戦闘用の支援魔法だ。


 ギルドの入り口付近に安置しておいた粗大ゴミガウェインは、俺が運ばなければいけないらしい。


「ナズナ、代わってくれ」


「嫌だよ?」


 ナズナさんの満面の笑み。

 舌打ちが隠せない。


「ほら、馬車馬。早くしてよ」


 エレノラが急かす。

 こいつ、人が下手に出てるからって調子に乗りやがって。


「風呂場に気を付けろよ」


「そこは夜道とかにしておいてよ……」


 俺の体を舐め回すかのような視線に、嫌悪を露わにしたエレノラは、ぷいと、前を向いてしまった。

 心底嫌そうな顔である。

 よし、勝った。


 その後もちょくちょく互いに口撃し合うこと十数分。

 俺たちは『妖精の止まり木亭』に帰ってきた。

 暇つぶし代わりの罵詈雑言の投げ合いにも飽きてきたところだし、ナイスタイミングだ。


「私たちはクラウスさんに今回の件を報告しに行きます」


「ラインズも行く?」


 モニカとナズナは保護者同然であるクラウスさんに、事の顛末を話すことにしたらしい。

 確か、宿屋を始める前は彼も冒険者だったんだっけか。

 有事の際には彼の様々な経験が生きてくるだろうし、モニカたちはグレウスの話までするつもりなのだろう。


「いや、俺は部屋に戻ってさっさと寝る。エレノラも見張らなくちゃいけねぇし」


 もう、辺りはすっかり暗くなり、疲労も蓄積している。

 早めに休ませてもらう。


「なんだい。人を犯罪者みたいに。ガウェインをメンテナンスするだけだってば」


 ガウェインが絡んでる時点で怖い。

 これまでの経験則である。


 モニカたちとは一階で別れ、俺とエレノラは自室に戻った。

 ダンジョンの探索は昨日の夜からだったから、もう一日中動き回っていることになる。

 恐ろしいことだ。


 隠しルートも近道も無いのだ。

 そりゃあもう大変だった。


 迷宮探索とか、当分はご遠慮したい。


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