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46.翡翠と橙

よろしくお願いします!

 『墳墓迷宮』は確かに難関ダンジョンだ。しかし、前人未到という訳でもない。


 クルトがダンジョンボスのドロップアイテムの内容を知っているように、信用できる地図が存在しているように、何事にも先人というものはいる。


 このダンジョンだって例外ではなく、ありがたいことに先輩の金級冒険者たちが隅々まで調べ尽くしていて、クルトたちはその情報を買って、冒険に臨んでいる。

 情報料がクソほど高かったり、うっかりでは済まされないくらい大きなミスがあったりするが、無いよりマシだ。


 ……やっぱり、ありがたくはないな。


 これまで、俺たちはその不確かな地図の、恐らく最短ルートを選んで進んできた。

 邪魔が入らなければ、最下層もその調子で行こうと考えていたのだ。

 余計な牽制を食らわないためにも、エイゼン騎士団とは別の進路を取りたい。

 しかし、いくら態度が悪いとは言え、仮にも騎士が、この程度の下調べをしていないはずもなく。


 俺たちは、若干の遠回りを余儀なくされているのだ。


「騎士たちとの遅れって、どうやって取り戻すんだ?」


 俺は剣の一振りで数多の敵を薙ぎ払う、ガウェインの後ろに隠れながら質問する。

 隣で必死に戦っているクルトは、全く戦闘を行う素振りを見せない俺に苛立ちつつも、律儀に答えてくれる。


「簡単なことだ。騎士たちはあれだけの人数がいる分、身軽には動けない。戦闘自体は早く終わるだろうが、ガウェインの力があれば、こっちもそれだけ早く敵を倒すことは可能だ」


「長いから一言で」


「……死ぬ気で敵を瞬殺しろ!!」


 我慢の限界だったのか、クルトは俺を蹴り、誰も担当していないモンスターの群れの前に吹っ飛ばす。


 当然ながら、俺に十数体のモンスターを同時に相手取る特殊能力はない。


「ガウェイン!! 俺の命がなにより最優先だ!!」


「…………」


 窮地に立った主人の叫びを聞きつけ、鋼鉄の騎士は喧しく駆動音を響かせる。

 既にリミッターは解除済み。クールタイムの影響で乱発はできないが、これ以上にベストなタイミングは無い。


 ――『逆天の機神(デウスエクスマキナ)』、起動(アクティベート)


 どこからともなく聞こえてきた、機械的な音声。

 それと同時に、ガウェインの右腕に刻印された魔術刻印が、この世界に存在しないはずの魔術を組み上げていく。

 多重に構築された魔法陣が、一対の双剣を象る。

 翡翠と橙の、この場に似合わぬほど鮮やかな神器。


 それは、遍く大気を制圧する風神の咆哮。

 それは、神々そのものである雷撃の具現。


 直視できないほどの光の奔流は、それだけでこの魔境に蔓延るアンデット共を消滅させ、あれほど群がっていたモンスターを嘘のように吹き飛ばす。

 一筋の雷光と化したガウェインは、最初の白光で滅ぼしきれなかったモンスターたちを蹂躙する。

 その神速の剣戟は、人類の知覚を完全に逸脱していた。


 狭い洞窟内を上下左右、縦横無尽に駆け巡り、あらゆる外敵を塵芥に変えていく。

 砂埃すら消し飛び、真っさらになった通路に立つ、翡翠の騎士。


 彼の周りに吹きすさぶ風神の加護は、包み込んだ者のあらゆる能力を引き上げる神の衣だ。

 今後、数十分は下級のモンスターなど近づけもしないだろう。


 聖天魔術、『翡翠と橙』。


 今の惨劇は、この魔術の片鱗でしかない。

 とかなんとか、エレノラが気分よさげに喚いている。


 ならフルパワーってどんだけやべぇんだよ。

 ヤンチャしすぎだろ神様。


「どうだった!? ちゃんと条件は守ってたでしょ!」


 俺たち以外誰もいなくなった通路で、エレノラは威風堂々と胸を張った。


 ちなみに条件とは、俺がエレノラにガウェインの追加設定を行わせた際に言ったもののことだ。


 一つ。ダンジョンに被害を出さないこと。

 二つ。俺たちに被害を出さないこと。


 二つ目を言った際、エレノラが舌打ちしたのを俺は見逃していない。

 マジで、何をするつもりだったんだ。


「確かに、俺たちに被害は無かったな」


 そこは評価しよう。勿論、ダンジョンも無傷である。

 加えて、魔術を発動し終わってもガウェインにバフが発生しているため、効率的な聖天魔術の使い方だと言えよう。


「本当、私たちいる? これ」


「一人バグってるのがいるんですよね……」


「…………」


 と、こんな風にパーティメンバーの反対意見も出ず、好評と言っていいだろう。

 この先も要所でガウェインの力を使っていくことになりそうだ。

 まあ、誰も異存は無いだろう。


 ……継続的に『逆天の機神』を使うとあらば、気になることが一つある。


「なあ、エレノラ。前に言ってた、召喚魔法と組み合わせる。みたいな話はどこに行ったんだ? それをすれば俺にもハーレムが作れるんだろ?」


「また君は……性欲しか頭に無いみたいだね」


「破壊欲しか頭に無い奴に言われたくねぇわ。……それで、俺のめちゃモテ委員長大作戦は?」


「まあまあ、忘れた訳じゃないから。後のお楽しみだよ」


 あざとく、小悪魔的な表情で口に手をやるエレノラ。

 全て計算なのはわかり切っているんだが、素材が良いのは事実だから悔しい。


「ちゃんと覚えておけよ。じゃなきゃ、次の冒険はサキュバスハントだ」


「そんなことのために魔族に手を出したくはないね」


 エレノラは、軽い口調でニヒルに笑う。

 実際、ガウェインがいるから余裕とか考えてそうだ。

 全く、ガウェインには弱点もあるというのに。



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