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 エイゼン騎士団の面々がボスを討伐し、ボス部屋が通れるようになるまで、また少し時間が必要になった。

 今後のためにも、最下層を迅速に攻略するための作戦会議だ。


「クルトたちは、ダンジョンボスのドロップ品が欲しいんだったよな?」


 ボスを横取りされて、どこか不機嫌そうな彼らに質問する。


「ああ。俺たちが欲しているのはその戦利品と、『墳墓迷宮』踏破の称号だからな」


 クルトたちのパーティは、あと少しで昇格、というところまで実績を積んで来ているらしい。

 ダメ押しに、この高難易度ダンジョンを踏破することで金級昇格にかなり近くなるだろうということだ。


 その証明にダンジョンボスを倒す必要があるし、単純にマジックアイテムが欲しいとのことだった。


「あいつらに先を越されないためには、多少無茶しなきゃいけないな」


 あいつら、とはもちろんエイゼン騎士団だ。


 俺の自己犠牲の精神に溢れた言葉を聞いたクルトは、目を丸くして、俺の顔をまじまじと見つめる。


「いいのか? いつものお前なら、お前らのために危険を冒せるか! とか叫びそうなものなのに」


「俺だって自己犠牲の精神から言ってるわけじゃねぇよ。ガウェインのせいでここまで退屈だったからな。多少、血に飢えているだけだ」


「大丈夫か? そのセリフ、後で思い出して死にたくなるぞ?」


「まるで経験者みたいな口ぶりだな」


「ち、違うぞ!」


 墓穴を掘ったクルトに、俺は冷ややかな視線を浴びせる。


 クルトたちほどのパーティになると、他の巷で異名のような呼び名を付けられる。

 こいつの場合、『黒羽(ブラックフェザー)』とかだった気がした。

 中二すぎる上、なんだか闇属性、鳥獣族っぽい。

 地球にいたらバカにされてそうだ。


「……それで、具体的にどうやって攻略速度を上げていくんですか?」


 俺とクルトの会話に割って入ったのは、騎士を出し抜きたそうにしているモニカだ。

 こいつ、案外負けず嫌いだからな。


「基本はガウェインでごり押しなんだけどな。他のメンバーも戦闘に参加するのと、休憩を無くそうと思っている。あと、基本的に補助魔法で移動速度を上昇させて移動する」


 今までは魔力などの温存のため、雑魚との戦闘はガウェインに任せっきりにしていたが、ここからは速度重視で突っ込むことにする。

 悠長にも多めにとっていた休憩時間は全て削減だ。


 そして、エレノラによる最高峰の速度補助によって、足並みを揃えなくてはならない騎士たちを一気に追い抜く。という算段だ。


「んで、エレノラ、なんかガウェインに役立ちそうな機能つけてない?」


「『逆転の機神(デウスエクスマキナ)』なら、いろいろな強力魔法が放てるよ!!」


「よし、ダンジョンが崩壊しない程度に使っていこう」


「ラインズ!?」


 俺の問いに、エレノラが目を爛々と輝かせながら答える。

 ナズナが、狂人でも見るような眼で俺を見た。


「使えるものは何でも使うべきだろ? 最下層だから床が崩落することは無いんだし、十中八九大丈夫だろ」


「それ、残りの一二は大丈夫じゃないよね!? 明らかに危険すぎるよ! ほら、モニカも何か言って!」


「エレノラが大丈夫だと言うのなら大丈夫でしょう」


「モニカ!?」


 モニカの普段と乖離し過ぎた態度に、ナズナが目を見開く。

 エレノラが言うから大丈夫な訳が無いのだが、リスクよりリターンを重視しているようだ。

 モニカも、これで晴れて俺とエレノラの仲間入りだな。


「さあ、じゃあ何をぶっ放そうかな。

連鎖爆雷(ライズ・ブレイズ)』? 『灰燼と怨嗟の街(ネクロポリス)』? 

終末世界の海(ノア)』? 迷うなぁ!!」


 エレノラが既に別世界へトリップしている。


 やっぱり違ったわ。やっぱ俺とモニカはこいつと仲間じゃない。ここまでヤバい奴ではないはずだ。


「ほら! 何か物騒な聞いたことも無い魔法の名前を呟いてるよ! 絶対やめるべきだって!」


「? ナズナ、何を言っているんですか? 私には何も聞こえませんが」


「誤魔化し方が致命的に下手!」


 モニカの適当な言葉に、ナズナが絶叫する。

 面白いぐらいモニカが豹変しているな。

 騎士にコンプレックスでも抱えているんだろうか。


 ふと、思いついたことがあるのでエレノラに提案する。


「エレノラ、騎士たちを世界中から忘れさせるような魔法はあるか? 存在を抹消する的な」


「ラインズは何を言っているの!?」


「いや、単純に、騎士を消せれば早いだろ」


「そんないい顔で言うことじゃないよ!」


「なるほど。確かに一理あるね」


「どこに一理を見出したの!?」


 俺たち三人に振り回されるナズナは、なんだか可哀想に思えてくる。

 だが、エレノラの力をフルに使うのは決定事項だ。変えるつもりはない。


 クルトたちも微笑ましくしている辺り、彼らもまともな思考回路は焼き切ってしまったのだろう。

 流石、銀級冒険者。順応が早い。

 唯一、グレイだけは不安そうな表情をしているが、些細なことだ。

 美女の憂い顔は良いものだなってだけ。


 そんな風に騒いでいると、ボス部屋の扉から、魔力の気配が消えていく。

 言うまでも無く、ボスが倒された証拠だ。


 もう終わったのか。かなり人数がいたとは言え、この速度はなかなかのものだ。

 まあ、ガウェインには敵わないんだが。


 ボスを討伐し、戦利品を確認したエイゼン騎士団はすぐに最下層へ向かうはずだ。

 俺たちは、彼らと出くわさないように別ルートを使う。

 離されないよう、急がねばなるまい。



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