39.アイスブレイクin墳墓迷宮
よろしくお願いします!
どうやら、どちらのチームにも大きな損害は無く、分断後も安全に行動出来ていたようだ。
「なんにせよ、怪我人が出なくてよかったな」
クルトはそういったコメントを残した。
それに関しては、概ね同意だ。
ケインには悪いが、傷ついているのが彼だけで良かったと思う。
「エレノラ、今度はあのよくわからんギミック使うなよ。もう一度崩落なんて洒落にもならん」
「もちろんだよー。あと三回ボス戦があるけど、そのどこかでもう一回だけ使ってみようなんて思ってないよー」
「全部説明してるじゃねぇか! どこでやらかすつもりだ!?」
わかりやすすぎるほどに目線を逸らし、口笛を吹くエレノラに俺は問い詰める。
行動こそ起こしていないが、他の面々も同じ気持ちだろう。
「地下五階! 最後の階層なら崩落も無いのでは!?」
「それじゃあ目的のドロップアイテムまで消滅するだろうが! あの逆天の機神とかいうのは当分使用禁止だ! 最終手段だ!」
「くっそー」
エレノラは不満たらたらに俺を睨みつけ、歯ぎしりをする。
こいつ、破壊衝動を抑えきれなくなってやがる。
「まあ、本当にマズい状況以外は使わない方が良いでしょうね。問題が多すぎます」
そう追従したのはモニカだ。
流石に、俺たちのパーティ唯一の常識人であるモニカに言われれば、エレノラも黙るしかないらしい。
「だけど……本当にいいの? ラインズ。君の召喚魔法と組み合わせることによる超必殺技も用意してたんだけど」
「何だと!? 何故それを早く言わない!? それは、ハーレムが作れるくらいには派手でカッコいい技なんだろうな!?」
「そりゃもう。女の子の一人や二人、余裕で入手できまっせ」
「なら、前言撤回だ! 俺と一緒にハーレムを作ろう!」
「エレノラ! ラインズを味方につけないでください! 卑怯ですよ!」
モニカが俺のエレノラから引き離しながら言う。
「ハッ! 交渉とはいかに相手に幻の利益をぶら下げるかなんだよ! その辺り、まだまだ小娘には負けないよ!」
勝ち誇ったようにエレノラは叫ぶ。
幻の利益て、お前俺がモテるなんて一切信じてないんだな。
「聞き捨てならないぞババア。幻の利益って何だよコラ」
「む、ラインズのくせに察しが良いな」
「何だ、くせにって、俺は見ての通り頭が悪いが、今まで勘は良かっただろ」
「頭の悪さに自信を持ってるんだね……」
ナズナは俺の言葉を呆れたように聞いている。
やかましいわ。
それ、お前に一番言われたくない言葉ランキング第二位だ。
「やっぱり前言の撤回の撤回だ。ガウェインは超必殺技を出すな」
「チッ」
「そこ、流れ弾に当たりたくなかったら舌打ちしないこと」
「流れ弾って宣言するものじゃないんだけど」
「せいぜい背中には気を付けるんだな」
「私とあなたの背中はエレノラとナズナですけどね」
確かに、ポジショニング的には俺の方がフレンドリーファイアされやすいな。
まあ、エレノラは攻撃魔法を使用できないから心配しなくとも良いとは思うが。
「モニカ、お前は遠距離攻撃できるか? 一応反撃手段を持っておきたい」
「なんで味方同士で争っているんですか……」
モニカも俺と同じで、この冒険の目標をアーツの習得としていたはずだ。
俺はクルトからアーツを学ぶことが出来たが、戦闘スタイルがまるで違うケインとグレイからは、何かが得られただろうか。
「バカにしないで下さいよ。剣の才能が全く無いあなたがアーツを習得できているんです。私にできないはずがないでしょう」
それもそうか。
俺でさえ、なぜアーツを習得できたのか疑問なのだ。
才能が無いのは自明だしな。
個人的には、主人公補正が怪しいのではないかと思っている。
お世辞抜きで、モニカとナズナは天才だ。
冒険者ギルドを覗いた感じ、この年齢でこうもモンスターたちと渡り合える人間はそういない。
モニカと一番最初に出会った時のあのビビりようは何だったんだと問い詰めたくなるくらいだ。
あの時は、俺が殺人鬼だと思われてたんだったか。
そうまで才能を持つものが、チートありとは言え俺程度の人間に及ばないなんてことはないだろう。
「具体的に、何のアーツを習得したんだ?」
「グレイさんからは『縮地』と『飛針』と『閃花』、ケインさんからは『騎士の威圧』ですね」
マジかよ。
予想以上に色々覚えて来てやがる。しかも技名が超強そう!
ふざけんな! これじゃ『羽搏』だけの俺が馬鹿みてぇじゃねぇか!
「鳥さんパタパタで草」とか笑われかねないぞ!
「ラインズは、いくつ覚えましたか?」
何だよその複数個覚えて当たり前みてぇな質問は!
悪気がないのはわかるけど答えらんねぇよ!
「ま、まあ。戦闘が始まってからのお楽しみだ」
「えー、何ですかそれは」
モニカにしては珍しく、笑顔を見せる。
彼女にとっても仲間と合流したことは、少しは安心できる材料だったのだろうか。
だが、今は真面目な少女が珍しく見せた笑顔にとらわれている場合じゃない。
なんとしてでも見栄を突き通す方法を考えねば。
ふと後ろを見ると、クルトたちのパーティが仲良くお喋りをしている。
俺たちのパーティではありえない光景である。
まだ、休息は続けられそうだった。




