38.合流
よろしくお願いします!
もう長いこと歩いた。
長時間探索したことによる影響か、集中力も切れ始め、段々、索敵もおろそかになってきている。
俺やエレノラ、何ならシンシアもそうだ。
未だ平常なクルトがおかしいと考えるべきだろう。
「クルトー、もう少しで着くんじゃねぇのかよー。さっきから景色も全然変わってないし、いい加減疲れたぞ、休憩しよう」
「さっきから同じ会話を繰り返しているだろ。そろそろ飽きろよ、もう少しはもう少しだ」
「そっくりそのままお前に返してやろうか? これで十三回目だぞ、そろそろ本当のことを言ってくれ。ってか具体的な数字で言え、ボキャ貧かお前」
「黙ってついてこいよ……ほら、見えたぞ。ボス部屋だ」
何だと? 本当に案外、近いところまで来ていたようだ。
少し離れたところから見える巨大な門は、確かにボス部屋のものだった。
それでも、結構な時間をかけたけどな。
「ってか、二時間かからずに着くんじゃなかったのかよ。その辺どうなんだ? クルトさんよぉ」
「アクシデントがあったからな。誰かが虫ごときに怯えて逃走しなければ、最短ルートで行けていたはずなんだが」
「それなら仕方がないことだったな! クルトはよく頑張っていた! 誰も悪くない!」
「今明らかに誰かさんのせいだったということが示唆されてたよね」
「でも、私とクルトも悪くないとは言えないよねぇ。パーティメンバーの弱点を確認してなかったんだから」
要するに俺のせいということらしい。
ギリギリで誤魔化せたが、本当に今回の探索、俺は役に立ってないな。
マジでちょっと戦える荷物持ちだ。
「それで、モニカたちはどうしたんだ? ガウェインがいるなら、あいつらの方がサクサク進んでそうなものだけどな」
「虫から逃げるようなこともないだろうしね」
「うるせぇ」
エレノラがここぞとばかりに口を挟んでくる。
このニヤニヤした顔がムカつくな。美少女だということを差し引いてなお、ぶん殴りたい。
「まあ、ガウェインに関しては大技を使った後だから、冷却時間が必要で、あまり激しくは活動できないはずだよ。今は時間的に、ようやく二発目が撃てる頃合いだね」
確かに、あの大技をそうポンポン打っていては、自らに掛かる負荷もとんでもないことになるだろう。制限があるのは道理か。
そのまま立ち尽くしていても無意味だろうということで、俺たちは近場で休息をとることにした。
俺の召喚魔法により、価値の低い食べ物を生み出す。
多少使いづらいところはあるが、こと冒険、ピクニックに至って、召喚魔法は最強だな。
いつでも腐りやすい食べ物が食べられる。肉や、魚などだ。
それらも品質が悪いものになってしまうが、贅沢は言っていられないだろう。
俺の魔力はポーションで効率よく回復できるので、休憩の時はガンガン魔法を使っていた。
クルトたちも召喚魔法は初めて見るようで、冒険中に少しの贅沢が出来ると喜んでいる。
そんな風に英気を養い時間を潰していると、足音が五人分、聞こえてきた。
おそらく、というかほぼ百パーセント、モニカたちだろう。
「おーい、お前ら、無事だったか?」
俺はサンドイッチを持った手を振る。
「また魔力を無駄遣いして! 後で後悔しますよ!」
そうやって返事したのは、やはりモニカだった。
「オカンかよ、お前は」
「誰がオカンですか! こっちは疲れているんですよ! 休ませてください!」
残念ながら、モニカは言葉通り心底疲れているらしく、俺の軽口に付き合うことなく座り込んでしまった。
「僕も疲れたんで、休ませてもらいますね!」
ガシャンガシャンと重そうな鎧を打ち付け合いながら、ケインが暗闇から姿を現す。
その鎧は血や傷に塗れており、彼が激闘を凌いできたことが伺えた。
「良かった! ラインズたちも無事だったんだね!」
「…………」
遅れてナズナとグレイの聖術コンビが、ガウェインを従えながら歩いてきた。
グレイは本来、最前線で戦うタイプの戦闘スタイルだが、モニカ、ガウェイン、ケインとの兼ね合いで後衛として働いていたらしい。
なんてことを考えていたら、ぴょんぴょんと跳ねていたナズナに突如、抱き着かれた。
その豊かなお胸が押し付けられ、俺の息子も大喜びだ。
「どうした? そんなに俺が心配だったのか」
「そりゃあそうだよ! ラインズっていつも危なっかしいから……。それに、何も考えてなさそうだし」
お前に言われたくはない。
だが、素直に嬉しい。人に心配されるのって、こんなにも心躍るものなのか!
「はい、心配だった気持ちはわかりましたから、ナズナは離れましょうね」
ナズナの危機を察知したのか、モニカがやや強引にナズナを引きはがそうとする。
「何をするんだモニカ! 俺もナズナを心配だったというのに! お前もハグしとくか? お? やっとくか?」
こう言っておけば、気持ち悪くて俺には口出ししづらいだろう。
どんな手を使ってでも、この感触を離してなるものか。
「!? すいません。ナズナはそのままで大丈夫です」
こいつ、平気で親友を売ったなおい。
「え!? 私ももう大丈夫だよ!」
ナズナも俺のセリフが気持ち悪かったらしく、ガバッ! と勢いよく俺から離れる。
まあ、どうせこうなるだろうと思ったよ。
「あ、グレイもハグしとくか?」
「…………!?」
「ちょっと! 人様に迷惑をかけないでくださいよ!」
モニカの鋭い右と共に、俺は仲間との再会を味わったのだった。




