表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

29.先輩冒険者

よろしくお願いします!

 ちょっと小遣いを稼ぐだけのつもりが、周りの冒険者をビビらせることになってしまった。

 おかげで、本来の目的である情報収集が少し遅れた。


 俺とエレノラは、ギルドのフリースペースとして扱われている場所で、若い冒険者と対峙していた。

 腕相撲の時に、いちゃもんをつけてきた奴だ。

 今、その若い冒険者は真っ青な顔で、一応の話ができそうな雰囲気だ。


 なぜこんなにも怯えているのか。

 誰でもいいと思って、とりあえず近くにいたこいつに話しかけようとしたら、逃げようとしたからな。

 少し強引に連れてきてしまったのがまずかったのだろうか。


 さっきから、他の冒険者もチラチラとこちらを窺っているし、よほど腕相撲が尾を引いているんだな。


「それで、これから俺は何を話せばいいんだ? 坊主たちの名前も知らないわけだが」


「ああ、じゃあ自己紹介からだな。俺はラインズ、多分、剣士だ。で、こっちがエレノラ、役割としては後方支援だな」


「そうか、よかった。さすがにそんな小さな子をモンスターと直接戦わせるほど、君も外道ではないんだな」


「なんで俺だけがそんな風に言われなきゃいけないんだ? 腕相撲だって、エレノラもノリノリだっただろ。共犯だ」


「うわ、この人こんな小さな子に罪を着せようとしてるー!」


 エレノラが周囲にも届くような大きさで、わざとらしく追及する。

 こいつ、自分の見た目が小さいことを悪用しやがって。


「言い忘れていた。俺の名前はクルトだ。普段は他の仲間と一緒にパーティを組んで冒険している。銀級の剣士だ」


 そう言って、クルトは自らのプレートを持ち上げた。

 確かに銀級冒険者のプレートだ。


「俺たちは鉄級だ。まだ新人だけどな」


 俺たちも、自らのプレートを見せる。


 今回の研究所の調査の功績が認められ、俺とエレノラは鉄級冒険者に昇格していた。

 ちなみに、モニカとナズナは一足先に、銅級になった。

 今までの功績が溜まっていたのだと言う。


「君たちが鉄級? そんなに強力なゴーレムを従えているのにか? 貴族には見えないけどな」


「ただの一般人だよ。貴族ではない」


「まあ、それはラインズを見れば明らかだけど」


「俺を貶していいのか? ガウェイン! 準備しておけ」


 金属同士がぶつかる音とともに、ガウェインが反応する。


「待て待て待て! 別に貶しているわけではない!」


「というか、なんで君の方がガウェインを使いこなしているんだろうね」


 それは俺の他力本願さ故だろうな。

 何かあったらすぐにガウェインを呼ぶ準備ができている。


「話が脱線してるぞ。……それで、俺たちはこの町では珍しい、銀級冒険者のクルトに話を聞きたい。つまり、銀級冒険者になるためにはってところだ」


 魔法やらが実在するなんでもアリの世界で、鉄級の剣士と銀級の剣士の差が、単なる剣の腕だけというわけもないだろう。

 アーツと呼ばれる必殺技もあるそうだし、その辺りに実力向上のキモがあるのではないか。


「それって、商売敵にわざわざノウハウを教えろってことか?」


「まあ、悪く言ったらそうなる。けど、俺たちとお前らじゃあ階級が違うだろ。商売敵にはなり難いんじゃないのか?」


「うーん……」


 クルトは、それでも納得してはいないようだ。

 仕方がない。こちらも少し条件を出そう。


「教えてくれたら、エレノラを好きにしていいぞ」


「だからなんでそうなる!?」


「別にいいだろ、さっき、これが効果抜群だったんだから。減るものじゃないだろ」


「私の自尊心とかその他もろもろが減るんだよ!」


「おいクルト。股間の血を滾らせているところ申し訳ないが、本人から許可が下りなかった。ご期待に沿えない」


「勝手に俺の気持ちを捏造するなよ!? それじゃあ俺が変態みたいだろ!」


「でも腕相撲の時は喜んでいただろ。認めちまえ」


「畜生ッ!」


「ダメだこいつら、ぶち殺してやろうかな」


 マズい。エレノラ様が怒っていらっしゃる。

 ちょっとダシに使いすぎたか。


「じゃあこうしよう。俺たちが無償で、お前らの依頼を手伝ってやる。これでいいだろ」


 鉄級冒険者と言えど、それなりに役に立つ機会はあるだろう。

 しかも今ならガウェインが付いてくる。


「……まあいいだろう。それで、例えばどんなことが知りたいんだ?」


 よし、快諾してくれたようだ。


「じゃあ早速だが、クルトはアーツを使えるか? それか、その他に特殊な戦闘方法は何かあるか?」


「アーツ? そりゃあ、銀級冒険者ならほとんどが使えるだろ。その他の特殊な技能については、俺は知らないな。銀級と鉄級の違いって言ったらアーツと魔法の差くらいだろ。あと単純な身体能力」


 やはり、階級の実力差は自分が持っている特殊技能の差によるところが大きいようだ。

 次点で、単純な身体能力か。これはモンスターを倒した数に依存するから、階級が上がり、長くモンスターと相対していた人間ほど化け物じみていくのだろう。


「なら、その中でお手軽に覚えられそうなのはあるか?」


「まあ、個人の才能にもよるが、短い期間で覚えられるものはあるな」


「じゃあ決まりだ。それを俺たちに教えてくれ」


 ガウェイン戦は、ただ運がよかっただけだ。

 今後自分たちがああいった状況に出くわしても生きて帰れる保証はない。

 実力不足は明白だろう。


 だから、ここでパーティ全体の強化をする。

 俺はそう心に決めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ