表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/65

28.腕相撲

よろしくお願いします!

 多くの冒険者に囲まれた円卓の上では、二人の男が互いに向き合っていた。

 がっちりと手を組んでいるところを見るに、力比べでもしようというつもりなのだろう。


 俺は机を囲む冒険者の一人に声をかけた。


「これは、何をしているところなんだ? やけに野次馬が多いな」


「腕相撲だよ、見りゃわかるだろ? ここでは互いに賭けをしてるんだ。見物人は順番待ちやら冷やかしやらだな。……まあ、遊びみたいなもんだが」


「へー。賭け腕相撲ね」


 よく見ると、どの冒険者もゴリゴリのマッチョメンだ。やはり、力自慢なのだろうな。


 周りの冒険者がわっと一気に盛り上がる。

 どうやら今やっている試合の決着がついたようだ。


 そこまでの大金は賭けていないようだが、まあお小遣いにはなりそうだな。


 面白そうだし、俺たちも参加してみるか。


 順番通りに次の冒険者二名が円卓に着こうとした時、俺は人を押しのけてこう叫んだ。


「ちょっと待ちな! 呑んだくれマッチョメンども!」


 楽しそうにしていた冒険者たちは、きょとんとした顔で俺の方を見る。

 俺は構わず続けた。


「俺たちと勝負しないか!? もちろん、それなりのものを賭けさせてもらう!」


「ああん? おめぇ、そんな細っせぇ腕で勝負しようって言ってんのか? ……それで、何を賭けるって?」


「よくぞ聞いてくれた! 俺が賭けるのは、この幼女に何でも一つ言うことを聞かせる権利だ!」


 俺が言い放つと同時に、ガウェインが拘束していたエレノラを解放する。


 このレベルの美幼女は、美形が多いこの世界でもあり得ない程だ。

 おまけに巨乳。


 ロリコンではなくとも、釣られる人間は多いと見た!


「なんでそんなに自信満々なんだよ!? 私はそんなの認めないよ!」


「お前が認めるかどうかは問題じゃない。野郎どもを見ろ」


「ウォォォォォォォォォォ!!」


「子ども相手に興奮しすぎだよこいつら!? 頭が終わってるやつしかいないのかよ!」


「ここはダメ人間の巣窟だからな。このくらいは序の口だぞ」


「大丈夫なのこのギルド!?」


 既に上がり切っているボルテージを収めることなどできない。


「やっぱり無理です。なんて言ったら最悪殺されるぞ。男心を弄んだ罪で」


「そんなに!? ぐぅ……勝算はあるんでしょ? 絶対勝ってよね!」


 よし、本人の了承が出た。


「エレノラ。それを言うのは俺じゃないぞ」


「え?」


 エレノラが、間抜けな声を出す。

 俺が、力比べで勝てるわけないじゃないか。


 最適な人材がいるだろう。


「ガウェイン君! 頑張ってくれ!」


 俺の命令に応じ、彼はガシャンガシャンとテーブルに着く。

 やる気は十分だな。


「オイ、坊主! あいつ、ゴーレムだろうが! そんなのルール違反だ!」


 若い冒険者が、俺に異議を申し立てる。


「はて? ゴーレム? 聞いたこともないな」


「絶対嘘だろ! なんか機械音聞こえるし! 眼に光が点いてるし!」


「ああ、それは気にしないでくれ。彼はちょっと体中が発光するタイプの種族なんだ」


「それこそ聞いたことねぇよそんな種族!? お前、流石にゴーレムは……」


「お兄さん」


 若い冒険者の言葉を遮り、エレノラが声を紡いだ。


 上目遣いにおめめをうるうるさせ、手を取って懇願する。

 あざといなさすが女神あざとい。


「……勝負して、くれないの?」


「勿論勝負させて頂きますとも! なあ兄弟ども?」


 一瞬で手のひらを返した若い冒険者は、他の冒険者たちにも確認した。


「ウォォォォォォォォォォ!!」


 ちょっと引くぐらいの勢いで賛成する兄弟たち。

 こちらも、気合は十分のようだ。


「チョッロ」


 中身が漏れてますよ。エレノラさん。


 こうして試合は始まった。


 ルールは単純な腕相撲。互いに手を組み、先に手の甲がテーブルに着いた方、肘が浮いた方が負けだ。


 賭けるものは、俺たちがエレノラ。

 最初のお相手は、有り金全部だそうだ。

 エレノラには、それでも釣り合わないとかほざいていた。


 まあ、どうでもいいか。


「では第一試合。ガウェインVSキンニ。レディ……ファイッ!」


 公平に、受付嬢をお呼びして審判を勤めて頂いている。

 事情を聞いた彼女は、エレノラとガウェイン以外、この場にいる全員を酷く蔑んだ目で見ているがな。


「いくらゴーレムって言ってもなぁ、俺に勝とうったってそうは……」


 爆発のような轟音。

 キンニと呼ばれた冒険者は、その場にいた誰もが追いきれないスピードで、ガウェインの左側にいた野次馬もろとも吹き飛ばされていた。


 ってか飛びすぎだろ、俺たちが戦った時よりも強くなってねぇか?


「ガウェインは私のゴーレム製造技術の粋を集めた最高傑作だからね! その辺の冒険者には負けないよ!」


 ガウェインがここまでの物だなんて想像もしてなかったぞ。

 流石にやりすぎの域だ。


「こ、殺されるぞ!?」


「うわぁぁぁ!」


「逃げろ! 絶対に刺激するな!」


 挑戦者や野次馬たちは、みな散り散りに逃げていく。

 完全に殺人鬼扱いである。


 しまった。もう少し分捕れそうだったのにな。


「そもそも、情報収集が目的なら、なんで腕相撲なんかしたのって話なんだけど」


「ガウェインの性能を試したかった、誰でもよかった」


「これは快楽殺人鬼だね。間違いない」


 その後、俺たちは遠巻きにこちらを見る冒険者たちを相手に、無駄な説得をしなくてはいけないのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ