27.ギルドの酒場
よろしくお願いします!
「俺からの話は以上だ。他、何かある人―」
『運命変転』の仕様についての説明を終え、俺からは特に話すこともなくなった。
次は、エレノラの番だろう。
俺はチラリと幼女の胸元に目配せする。
「それアイコンタクトのつもりなの? ガン見する場所が違うと思うんだけど」
「俺は構わないぞ。早く話始めてくれ」
「私が構うんだよ。人の話は眼を見て聴きなさいって学校で習ったでしょ」
「そんな記憶はないな」
ただ、話が進まないので目線を降ろす。
チラリと見える太ももなら良いだろう。
というか、バレないだろう。
「じゃあまず、私の改造したガウェインの機能を説明していくよ」
エレノラは、一つ一つ、わかりやすく説明していった。
ガウェインの動力の仕組みだったり、活動限界だったり。
しっかり聞けば理解できたのだろうが、俺は退屈だったのでさわりしか聞いていなかった。
そのため途中からナズナと遊び始めていたが、エレノラは特に気にせず話し続けていたな。
真面目な生徒が一人いたのと、俺たちにそもそも期待していなかったことが要因だろう。
「ということで、ガウェインはかなりの戦力となることが予測されます! これからの冒険に役立ってもらいましょう!」
エレノラはそう締めくくり、講義を終えた。
満足げな表情だ。
好きなものを布教し終えた人みたいな感じだな。
「よし、終わりだな。他に話すことがある人―」
反応はない。
魔道生物研究所の調査で得た金銭などは、ほとんどをパーティの共有財産としてモニカが保管している。
その詳細は数日間の内にエレノラとナズナから伝えられていたから、今更誰も話すことなんてないのだろう。
「じゃあ解散。これから冒険者ギルドに行くけど、誰か来るか?」
「私とナズナは宿の手伝いがありますね」
モニカは普段通りの表情で断った。
そう、普段通りの表情だ。
いつもならゴミを見る目で『あなたと肩を並べて町を歩きたくなんてありません』とか言いそうなものだ。
それが、今は違った。
これは、モニカの俺に対しての好感度が少なからず上昇していることを表しているだろう。
未だにマイナスであることは間違いないだろうが。
「そうか! 気を付けろよっ!」
俺は満面の笑みでモニカとナズナを送り出す。
去り際、モニカは今までにないくらい気持ち悪そうな表情をしたが、俺は気づかないフリをした。
「それで、エレノラ。お前はどうする?」
「君が今の笑顔を見せないならついて行ってもいいよ」
「……じゃあ行くか」
「うん」
相変わらず、俺のパーティは俺に厳しすぎる気がする。
俺とエレノラは、ガウェインの試運転も兼ねて、彼を付いて来させながら外に出た。
そのガウェインの動力には、彼に元々取り付けられていた魔核を、エレノラが加工したものを使っている。
相当な魔力を込められるらしく、危うく爆発しかけたよ。とエレノラは語った。
同時に、空気中からある程度の魔力を供給できるらしい。
要するに、既存のゴーレムから考えたらあり得ないくらい活動できると言うことだ。
プログラムの書き換えもそうだが、普通はそんな高等なゴーレム改造なんぞ、まともな人間にはできないらしい。
それに関しては、流石に神様だな。
「しかし、こんなゴーレムを連れ歩いているのに、あまり目立たないな」
「そう? 結構人に見られていると思うけど」
「ばっかお前、あれは俺に対する嫌悪と、お前に対する好意だろ? ガウェインは注目されてない」
「人間の感情に敏感だな! 一体、過去に何があったんだよ!?」
「そりゃあもうたくさんだよ。なんなら辛酸を具現化できそうだ」
「舐めまくって、夢にまで出てきたのか。おそろしい……でも、それ以上に哀しいコ……」
やっぱこの女神俗っぽすぎだろ。
少年漫画読み込んでるじゃねぇか。
「んで、ガウェインが注目されないのは何でなんだ?」
「まあ、ゴーレム自体は普通に持っている人はいるからね。ガウェインの見た目は普通のゴーレムでもありえなくはないし」
「なるほど」
そうした雑談をしている内に、俺たちは冒険者ギルドにたどり着く。
既に、魔道生物研究所の調査依頼の報告は済ませている。
それなのに、俺がここに来た理由を簡単に言うと、情報収集のため、である。
ガウェイン戦で痛感した、俺自身の戦闘能力の低さ。
それをなんとか、努力を極限まで減らして補える方法を探しているのだ。
また、ガウェインの加入でさらに強化されたパーティの丁度良い依頼や、経験値稼ぎのスポットを教えてもらおうという目論見である。
他にも、噂話の収集もしたい。
冒険者が多く集まるこの場所は、一種の情報交換の場なのだ。
俺がアブノーマルスライムの噂を耳にしたのもこの場所だ。
結果的には、酷い目に合ったが。
「たのもー」
エレノラがそんな寝ぼけたことを言いながら、ギルドの中へ入っていく。
俺たちが目指すのは、ギルドの真ん中奥辺りに位置する、飲食コーナー。酒場と言っても良いだろう。
昼間っから酒に浸っているダメな大人たちがたむろする、変人と変態の巣窟だ。
まるで自分を見ているようだな。
「ねぇ、あそこ私が行っても大丈夫?」
「セクハラを受けまくるだろうが、大丈夫だろ」
「それは大丈夫ではないよね!?」
そうか? 俺で慣れきっているから気にしないと思ったんだが。
「ガウェイン、そいつを捕まえて離すな」
「あ! ズル……うわっ!?」
俺の声に反応したガウェインは、エレノラをその驚異的な膂力で抱きかかえ、俺の後ろに付き従った。
俺の意を察して、エレノラの口を塞ぐファインプレーも見せている。
やはり、ガウェインは有能だな。
俺はそのまま、人が一番集まっているところに歩いて行った。




