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23.敵前会議

よろしくお願いします!

 ガウェインとか言う変わり種のゴーレムは、未だ部屋の中央で仁王立ちをしていた。

 眼に光は灯っているものの、動く気配はなさそうだ。


 これ、もしかしたらハメ技で圧勝できるんじゃないか?


 俺の頭の中に次々と悪知恵が浮かぶ。


「戦いますか?」


 モニカが少し不安そうに問う。


 そりゃ、ユニークモンスターなんて言われたら不安にもなるか。

 この世に二つとない、ということは、それだけ情報が少ないということだ。


 既知のゴーレムの常識を覆すような性質を持っているかもしれない。

 事実、ゴーレムにあるまじき敏捷性を見せていたしな。


「別に、無理して戦う必要はないんじゃない? 他のモンスターとは桁違いに強いかもしれないし」


 慎重な意見を述べたのはナズナだ。


 だが、残念。逃げるという選択肢は既に消え去っているのだ。


「この扉、もう開かないぞ」


 俺は、俺たちが入ってきた扉をガチャガチャ動かして、それが閉ざされていることを明白にする。

 魔法的な仕組みでも施されていたのだろうか。剣で殴ってみても、ビクともしない


 セオリー的には、あのゴーレムを倒せばよさそうだが。


「他に、出口は無しか……」


 エレノラは、再度部屋の中を見渡した。


 当然、この殺風景な部屋には件のゴーレムしかいない。


「よし、じゃあ土で生き埋めにするから、ちょっと待っとけよ」


 俺は腰にぶら下げたポーチの中から、魔石を探す。

 こういう時のために常備しているのだ。


「うわ。ガウェインが可哀想。あんなに決闘を望んでいるのに」


「誰かに忠誠を捧げるような仕草もしていましたし、騎士道精神に乗っ取った行動原理を持っているのでしょうね」


「それを、ラインズは今から踏みにじるんだね! 頑張れ!」


「どうした!? お前ら俺よりガウェインの方が好きなのか!? 出会って数分経たない奴に俺は負けたのか?」


「まあ、残念ながら当然だよね」


「あなたの好感度はマイナスですので」


「わ、私はそんなこと思ってないよ!?」


 エレノラ、モニカの辛辣な言葉が俺の心に突き刺さる。

 別に、どんな罵詈雑言を吐かれようが気にはしない。


 だが、この鎧に負けたのはなんか癪に障るな。

 一応、モンスターだぞ? こいつ。


 相変わらず、目に見えて俺に柔らかい態度をとってくれるのはナズナだけのようだ。

 ナズナもナズナで、別に好印象を抱いているわけではなさそうだが。


「クソが! 俺の召喚魔法の前にひれ伏せ! でくの坊が!」


 八つ当たりも兼ねて、俺は魔法を発動する。


 しかし、何も起こらなかった。


 召喚が失敗したときのように、魔法陣から何も出ないのではなく。

 そもそも、魔法が行使されなかった。


 その奇妙な感覚に、首をかしげる。


「あん? 魔法が発動しねぇぞ」


「君自身の魔力切れじゃなくて?」


「ああ。お前も試してみろよ」


 俺がそう言うと、エレノラが頷いた。

 だが、彼女も何やら不思議そうな顔をする。


「魔法が使えない。多分、あのゴーレムが原因だよ」


 結論を出すように、エレノラは言った。


「それは……困りましたね。戦力が半減してしまいます」


「逃げようにも扉は使えないしな。何だよガウェイン先輩、全然正々堂々勝負しようとしてねぇじゃねーか。ゴミだな」


「それあなたが言いますか……」


「不発だからノーカンだ」


 毅然とした態度でモニカに答える。


「それで、どう戦えばいいの?」


 ナズナは不安気に俺を見る。

 一応、彼女も魔法を試そうとしているみたいだが、やはりダメのようだ。


「じゃあ、ナズナとエレノラ。お前らは魔法以外に何ができるんだ?」


「私は……付与術くらいかな」


「私も……聖術だけ」


 おっと、新出単語がいきなり出てきたな。

 とりあえず、エレノラの付与術ってのから聞いておくか。


「付与術って何だよ? 魔法じゃないのか?」


「厳密には違うんだよ、発動までのプロセスがね。効果を簡単に言うと、エンチャントってところかな」


 なるほど、お約束と言えばお約束だな。


 武器などに魔力を込めて、より強力にするっていうアレだ。

 今まで使っていなかったことから考えて、明らかに支援魔法の方が効果は高いのだろうが。


「で、聖術ってのは?」


「この世界の神様に祈りをささげることで得られる奇跡のことです。基本的に、治癒の効果があることが多いですね。後は、アンデットの浄化などでしょうか」


「なるほど」


 説明が苦手そうなナズナに代わり、モニカが答えてくれた。


 ……聖術。これもまあ、お約束か。

 僧侶とか聖女とかがよく使っていそうな特殊能力だ。


 エレノラが聖術を使えないのは、神自身だから信仰も何もないってことだろうな。


「わかった。じゃあ、隊列はこれまで通り。後衛は自分ができることに徹し、前衛は自分たちの攻撃だけでアイツをぶっ壊す。そういうことでいいな?」


「ええ。そんなところでしょう」


 モニカが俺に追随する。


 ナズナのバ火力魔法が使えないのが痛いが、やるしかないだろう。

 決定打に欠ける印象があるが……仕方がない。


「付与術も聖術も、あんまり離れていると使えないから、そこだけ気を付けてね」


 エレノラの忠告。


「了解」


「ラインズ。聖術はあるものの、攻撃は食らわないに越したことはありません。地道に、持久戦で行きましょう」


 モニカの忠告。


「わかった。命大事に、だな」


「ラインズ。大丈夫? 戦える? 無理に行かなくてもいいんだよ?」


 ナズナの忠告、というか、心配。


「俺ってそんなに頼りない見た目してんのか? 心配になってきたぞ」


 一応、チートを三つ持った異世界人なんだが。


「あのガウェインの方が強そうではあるよね」


「なんだよチクショー! 絶対ぶっ壊す!」


 エレノラの即答と付与術とやらを受けながら、俺は剣を構える。

 少し離れた位置に立つモニカも、短剣を携え、臨戦態勢だ。


 この作戦会議中ピクリともしなかったガウェインも俺たちの殺気を悟ったのか、その武骨な騎士剣を振るい、正中に構えた。


「行け! モニカ!」


 俺はそう言いながら突撃する。

 特に効果を期待しちゃいないが、あわよくば騙し討ちを食らわせたい。


「……」


 騎士は無言で、一歩も動かずに俺を迎え撃つ。


 あ、騙し討ちなんて通じませんかそうですか。


 俺の舌打ちを合図に、決闘の火蓋は切って落とされた。


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