21.最低な話
最低な話です!
よろしくお願いします!
二階へと続く階段を登り切った俺は、そこで、奇妙なものを見た。
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けーなオイ」
直感で気づいた。これが俺の求めていたスライムなのだろう。
ただ、知りたくなかった。出てきて欲しくなかった。
こんな見た目だと知っていたら、俺は決してこいつに会いに来なかっただろう。
「オイオイオイオイ! そのフォルムは白色じゃないと許されねぇぞ!? 何、パチモンが肌色で登場してんだ! 生々しいんだよアホか!」
そいつは、薄橙色のスライムの頭頂部に、アレを乗っけたような見た目をしていた。いや、ナニとは言わないが。
そんな奴らが、所狭しと並んでいた。バーゲンセールのようだな。ハッハッハ。
……どう考えても狂っている。こいつを作り出した奴は何を間違えてしまったんだ。
全部か。
まさに人類による生命の冒涜。名状しがたい宇宙的恐怖を感じさせられた。
「ラインズ! 君だけ先に行ったら危ないよ!」
俺の後方から、エレノラの声が聞こえる。
どうすればいいんだ、こいつら。こんなわいせつ物陳列罪の象徴みたいな奴ら、うら若き乙女に見せていいものか。ショッキングが過ぎるだろ。
俺は前のご立派な砲塔どもから目を逸らし、エレノラたちに声をかける。
「お前ら、来ない方がいいぞ。マジで」
「何を言っているんですか。あなた一人だとスライムすら危ういでしょう」
「そっかー」
これは止められそうにないな。さて、このアブノーマルスライムとやらがどんな生態を持っているか。
それが一番のキモだな。
どうせロクなものじゃないんだろうが。
近づいてきたら容赦なく叩き斬ることにしよう。
「なんだか怪しいねラインズ。何があったの……!?」
ナズナが階段の下から現れる。と、同時に目を見開く。まるで理解できないものを見たようだ。うん、俺も理解できないよ。
「ナズナ? どうしたんですクァ!?」
「二人とも、何固まってるの……ォン!?」
後からやってきたモニカとエレノラも見てしまったか。
そして、あまりの映像に固まってしまったようだ。固くなっているのは彼女らだけではないが。
女性陣が二階に現れた途端、陳列されたわいせつ物は一斉にモゾモゾと動き始める。
キモいキモいキモいキモい!
見たことあるだろうか。一斉に荒ぶるそれらの群れを。
ここで忘れていけないのが、彼らの体長は人間の顔ほどもあるということ。
そして、その上で急激に膨張しているということだ。
「おまっ! 膨張はマズいだろ! 常識的に考えて!」
無慈悲なことに、スライムに人語は通じない。
極限まで膨張した彼らは、その銃口をエレノラたちに向けた。
よかった。俺が巻き込まれなくて本当によかった。
俺まで巻き込まれていたら、確実にトラウマになっていただろう。
その分、彼女らには犠牲になってもらうことになるが、まあ頑張ってくれ。
色々な意味で『突っ込んでくる』ことはなかったので、不幸中の幸いなんじゃないですかね。知らんけど。
ひとしきり膨張し終わった彼らは、キュイイイン。と奇妙なエネルギーを蓄えるような音を鳴らす。
……待てよ?
これ、もしかして単純なレーザー攻撃だったりしないよな?
もしそうだとしたら、一応、俺は彼女らを守ってやらねばならないんだが。
これが攻撃技だったとして、その技でパーティ壊滅。なんてことになったら。
きっと、明日から俺の異名は『アレに人生を狂わされた男』だ。
外聞が悪いなんてレベルじゃないな。
「畜生! 助けてやるよ!」
俺はエレノラたちに全力で飛び込んだ。
タイミングはギリギリ。いけるか?
俺は、エレノラたちを突き飛ばすような形になりつつも、あのわいせつ物の射線上から彼女らを避けさせることに成功する。
これで、一直線に飛ぶ攻撃なら当たることはないだろう。
「な!?」
だが、彼らが発射したのはレーザー光線などではなかった。
一斉に放たれたそれは、正体がまるで見当もつかない液体だ。
なんだかドロッとしている。
「なんか、あれだけは食らっちゃいけない気がする! 男として!」
俺は生命の危機を感じ、即座にその場から脱出する。
しかし、咄嗟のことでエレノラたちにまで手が回らない。
結果、俺はエレノラたちを置き去りにし、一人だけ回避行動をとった。
こうなったら、あの液体に殺傷能力がないことを願うしかない。
俺は先ほど彼女らを突き飛ばした際に偶然得た、巨乳とロリ巨乳と虚乳の感触を堪能しながら、神に祈りを捧げた。
そりゃあもう真面目に。
一瞬後、正体不明の液体の雨がエレノラたちを襲う。
視界がもうもうと立つ水蒸気や土埃で埋まる。
豪雨は、数十秒間続いた。
◇◆◇◆◇◆◇
「……ん……あ……」
「起きたか!?」
未だ土埃が舞う中、俺は誰かの声を聞きつけた。
生きてたか。
あのまま死んでもらっては寝ざめが悪い。外聞も悪い。
俺は声のする方に向かって駆け寄った。
不思議と、二度目のエネルギー音は聞こえなかった。
だが、警戒しすぎて悪いことはないだろう。
「ちょ、ちょっと! 来ないで!」
「あん? なんでだよ」
この声はナズナか。
「よくわからんけど、近づくぞ」
「き、君! やめたほうがいいよ!」
「エレノラも無事か。良かったな」
なんか嫌がってるから、もっと近づこう。
ナンデイヤガルンダロウナー、ワカラナイナー。
土埃がだんだんと晴れていく。ナイスタイミング、グッジョブ神様!
「本当に! 来ないで!」
「いいや! 行かない訳にはいかないな! 仲間の安否確認だ!」
「仲間って言葉を便利に使いすぎだろ!」
エレノラがやかましい。だが、そんなことで俺は止まらねぇ!
「さあ、エレノラさんたちこんにちは! 大丈夫ですか!?」
大丈夫でないのは知っている。
エレノラはすぐ近くに座っていた。
やはりアンバランスで、その小さい腕では隠しきれていない大きなお胸。
ボロボロになった衣服から、チラチラと見える水玉模様の下着もまた可愛らしい。
予想だにしていなかったエレノラの惨状に、俺は思わず顔を背ける。
……フリをして他の面々を探す。
「す、すすすすまん! そんな状態だなんて思わなかった!」
こういう時のために練習しておいたセリフを一気に吐き出し、ナズナの方を見る。
と思ったら、お隣はモニカか。
あまりに刺激が強すぎたのか、モニカは目を見開き固まったまま、立ち直れていないようだ。
ライムグリーンの縞模様の下着。モニカらしいと言えばモニカらしいな。
布面積が小さかったからなのか、衣服への被害は小さくすんだようだ。
良かったな。
「ラインズ! 見ちゃダメっ!」
モニカの隣に座っていたナズナが、視界を封じようと俺を突き飛ばす。
だが、これはこれで都合が良い。
既に、エレノラとモニカの分は目に焼き付けておいた。
俺は飛び込んでくるナズナの姿を、冷静に分析する。
一番被害が大きかったのだろうな。上着は布切れのように小さい。
花柄の下着がチラリと覗くくらいで、ほとんど裸みたいなものだ。
隠さなければいけない部分も隠れていない。
そのため強調されるのが、ゆさゆさと揺れるその爆乳だ。
やっぱ、エレノラより大きいんだな。ついでに揉んでおこう。
もにゅ。もにゅもにゅ。
最高の柔らかさ。今まで、こんなに柔らかく、気持ちの良いものに触れたことがあっただろうか? いや、ない。
うむ。我が生涯。一辺の悔いなし。
予想外の腕力で突き飛ばされた俺は、後ろにあった階段から転げ落ちる。
だが、それでもいい。
もし、ここで死のうとも俺は構わない。
だって、こんなに心地良いのだもの。
視界が二転三転し、上下左右の感覚もわからなくなる。
そのまま、俺は意識を失った。




