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10.花の副作用

よろしくお願いします!

「おい! これじゃないか!?」


 俺は声を張り上げた。

 なにせ、何時間も探し続けてようやく見つけ出したのだ。そりゃあ、叫びたくもなる。


「はいはい。頑張って下さいね」


 モニカが興味なさげに言う。なんだコイツ。俺のこと全く信用してないな。

 まあ、さっきから帰りたくて似たような花を本物だと言い張っていたから仕方がない。オオカミ少年現象だ。

 だが、今度こそは本物だ。


「これは嘘じゃないぞ。ほら、こっち来てみろ」


 モニカは、そこまで言うなら、と近づいてくる。

 そして、俺が見つけた花を見た。


「紫色、独特な香り……間違いありません。パフムの花です」


 念願の花を見つけたにしては、少々冷静すぎるな。もっと褒めろや。


「おい、俺に何か言うことがあるんじゃないか」


「ラインズ! すごいよ! お手柄だね!」


 後ろから、駆け寄ってきたナズナがぴょこぴょこと跳ね回る。子どものような仕草だ

 ふう、やっぱり美少女に褒められるのは最高だな。


「ん? そこの人からは何もないのですかな? ん?」


「確かにお手柄だとは思います。ただ、あなたの魔法でなんとかならなかったのですかね」


 マホウ? ああ、召喚魔法のことか。ぶっちゃけ今まで存在を忘れていた。


 だが、さすがに俺も馬鹿じゃない。ましてや、女風呂に夢中になって思いつかなかったわけでもない。最初に花を取ってきてくれという依頼をされたとき、試しはしたのだ。


 結果として、よく似た性質の花が召喚された。あれは、俺がその時はパフムの花の特徴を詳しく知らなかったから。とか様々な理由があったんだろうと推測している。女神がいれば話を聞けたんだろうが、いなくなったものはしょうがない。


 まあ、特徴とか詳しく知っていればもしかしたら召喚できたかもしれないが、女風呂の誘惑に負けてしまったわけだ。つまり、あのえちえちボディのナズナが悪い。QED。


「なぜかできなかったんだよ。あらゆる手段を尽くしたがな」


 とりあえず建前としてこう答えておこう。


「本当ですか?」


 何を疑っているのか、モニカがじっとした目でこちらを見る。本当、こういう勘だけは鋭いな。


「ひどい! 仲間を疑うなんて! なあ? ナズナ」


「そうだよ! いくらラインズでも、信じるところは信じなくちゃ」


「ちょっと! ナズナは卑怯ですよ! この子アホの子なんですから! 何でも信じるんですよ!」


「な!? アホじゃあないよ!」


 なにやら話が脱線しているが、ここで軌道修正しておこう。


「なあ、それで、花の量はそれで足りるのか? 俺が見つけたのと、周りの数本だけしかないぞ」


「多分、もう少し必要だと思います。それこそ、あなたの魔法で増やせないんですか?」


 ああ、それもそうか。……何て言うか、俺アホなのか?


「やってみる。召喚。パフムの花」


 俺が唱えると、いつも通りの青い魔法陣が浮かんだ。

 イメージは大きめの花束だ。それだけあれば大丈夫だろう。

 魔法陣から姿を現したそれは、ギリギリ俺が持ち切ることができる量だった。


「よし、これで今後、楽になったな」


「改めてですが、その魔法、本当に便利すぎですね」


「え? なにそれ!?」


 モニカは何でこんな人間がこの魔法を……。といった風だ。口には出していないが、大体わかる。一方、ナズナは非常に驚いているようだ。そういえば、見せるのは初めてだったな。


「詳しくは説明できないが、召喚魔法って魔法だ。欲しいものが出てくる。理屈はわからん」


「へぇ。ラインズってこんなこともできたんだね!」


「ああ、ただの才能だけどな」


「嫌な奴ですね」


「知らなかったのか?」


「知って……」


「知ってたよ!」


 ナズナが、モニカの言葉をかき消して、元気いっぱいに答える。うん。ナズナに聞いたわけじゃなかったんだよ。悲しくなるわ。

 すると、急に、モニカがナズナの体にもたれかかって、言った。


「ちょっとナズナぁ、私の言葉を遮らないでよ」


「あ、ごめんね?」


「もう、ナズナだから許すけど」


「う、うん? ありがとう?」


 何だろう。ナズナも感じたようだが、なんかモニカの話し方に違和感を感じるな。なんだか、甘ったるいというか、なんと言うか。


「どうした? モニカ? おなかすいたのか?」


「なにが? 別に全然ふつーだけどぉ?」


「いや全然普通じゃないなそれ? だいぶIQ下がってないか?」


 心なしか顔も赤い。


「聞いたことがある……」


 急に閃いたようにナズナが言った。


「どうした? 何か知っているのかナズナ!」


「以前、クラウスさんが、話していたような」


「何をだ!?」


「パフムの花は、少ない本数ならばただのいい香りがする花。だけど、あまりに大量に用意してしまったら……!」


「用意してしまったら?」


 ナズナは、深く息を吸って言った。


「……アホになる」


「は?」


 真面目な顔で、何をのたまってんだコイツは。間違いなくアホはお前のことじゃないのか。

 そう言いたい気持ちを堪え、続きを聞く。


「花の良すぎる香りと魔力がなんやかんやして、アホになってしまう! しかも、元々、落ち着いている人、頭のいい人ほど効果は絶大!」


「な、なんだってー!?」


「あ! あまり信じてないね!」


「信じてないよ。そんな馬鹿げた花、あるはずがないだろ。おーい、モニカ、そろそろ帰るぞ」


 そう言って、モニカを見る。

 すると、彼女はいつの間にか遠く離れた場所にいた。


 よく見ると、蝶々を追って、前も見ずに走り回っているようだ。

 あ、木にぶつかった。


「うわぁぁぁ! 痛いぃぃ!」


 おいおい、泣き出してるんだけど。

 あ、泣き止んでまた蝶を追いかけ始めたようだ。

 あ、今度はこけた。


「ナズナ」


「ほら見て! アホでしょ!」


 なんでそんなに嬉しそうなんだよ。確かに見ていて面白くはあるが。

 だが、これから帰るって時に、邪魔でしかない。


「絶対! 元に戻すぞ!」


「おーっ!」


 不毛な戦いが今、始まった。


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