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MEZAME  作者: 夜風
8/9

MEZAME 15&16

MEZAMR15


タイミング




部屋に微妙な空気が漂う中、続いて口を開いたのはカーナーだった。


「カーナーだ。言ったと思うが、俺は元々詐欺師だった。…これ以上詮索するなよ?」


威圧ともいえるその言葉に、一同は黙りこんだ。如神根との一件もあったし、最低限の情報だけあればいいと皆何も追及しなかった。


そんな空気などお構いなしに1人、立ち上がった。


「…風江良莉鈴。聖モホズエラ学園の2年。以上よ」


そこに咲夜が口を挟む


「いや、以上って。能力は?」


すると莉鈴は思いっきり嫌そうな顔で睨む。


「アナタ程度に教える義理はないと言ったはずよ。本当に永久バースデーな頭してるわね」


「ちょっと?脳みそパラダイスよりひどくなってない?」


咲夜がツッコむ中、如神根は苦笑いをしていた。彼女は、莉鈴の能力を知っているからだ。


マクガルドに聞いたところ、莉鈴は『器を入れ替える』能力をもつ。つまり、精神交換だ。ここで咲夜に教えてしまうと、なぜ知っているのかと逆に訊かれてしまうのであえて言わない。


「はあー、まあいいか。じゃあ次は俺で」


続いて咲夜が立ち上がった。


「桜川咲夜。穂盛江夢む学園の2年だ。一応呪術を使えるから、近接戦闘は俺の担当だな。あんたには負けるだろうけどな」


と言ってマクガルドの方に目を向ける。


「はっはっは!まだボウズの戦いっぷりを見てないからわかんねーけどな!」


そうしていつものように笑う。一見ふざけたようだが、鍛え抜かれた身体を見ても只者じゃないとわかる。マクガルドは笑った後に自己紹介を始めた。


「マクガルドだ!フィドル…いや、カーナーの旦那とは縁がある。元兵士だから、腕には自信があるぜ。そして気になるのは俺の能力だろ?聞いて驚くなよ、俺の能力は―」


とマクガルドが続けようとした瞬間、


『ビーッ‼︎』


凄まじい音量でサイレンのようなものが鳴った。


「な、なんだ⁉︎」


咲夜が驚き声を出すとカーナーが、


「ちっ、今か…この音は街にバケモノが出た合図だ。すぐに現場に向かうぞ」


すると莉鈴が冷静に告げる。


「戦闘は私1人で十分です。みんなは自分の身、そして街の人たちの安全を第一にして」


「ちょっと待て、それは無理がある。俺も戦う」


「あなたがいるより、私1人で戦った方が効率的だわ」


「何も見ていないくせによく言うよ…」


咲夜との口論が酷くなる前にカーナーが止める。


「あーもう!お前ら2人で行けばいいだろ…で、お前はどうする?」


言いながらマクガルドに一瞥向ける。


「俺は住民を避難させるよ。あの2人ならたぶん大丈夫だろうからな」


「そうか…じゃあお前ら!各自できることをしろ!1人たりとも死人は出すんじゃねえ!」


カーナーの気合いが入った声に全員が頷く。


『了解!』


秘密




現場は幸いなことに人のいない街のはずれだった。


咲夜と莉鈴が現場に到着すると、そのバケモノはいた。


今回は吸血鬼ではなかった。いや、人型ですらなかった。だが、体格はかなり大きい。まるで凶暴なライオンを彷彿とさせる見た目だ。


「グルルルル…」


”それ”は唸り声を上げながら2人に近づいていく。


「俺は動物を殺りたくはないんだけどな。まあ異世界のバケモノだ。仕方ない」


そう言って日本刀と呪符を取り出した。だが莉鈴はそれを手で制止する。


「そんなもの取り出す必要はないわ」


すると莉鈴はバケモノに向かって歩き出す。


「お、おい!何やってんだ…」


咲夜が言っても足を止めることはない。


バケモノとの距離が2メートルくらいになる。唸り声がさらに大きくなっていく。だが莉鈴は静かに目を閉じる。まるで自殺行為だ。そして莉鈴に飛びかかって襲う―ことはなかった。


突然、バケモノの動きが止まったのだ。莉鈴はまだ目を閉じている。そのまま、バケモノは倒れこんでしまう。


「…!」


咲夜は言葉も出なかった。一体今、なにが起こったのだろうか。


そして、まるで何もなかったかのように莉鈴が戻ってくる。対して咲夜は訊く。


「…これが、お前の能力なのか?」


「さあ、どうかしらね」


そう言ってまた以前のように微笑んだ。さらに莉鈴は何か思い出したかのような顔で、


「じゃああなた、少しその刀と呪符を貸してもらえるかしら」


「はあ?これ?なんで…」


「別に大したことじゃないわ」


「まあ、いいけど…」


咲夜は日本刀と呪符を渡す。その2つを得た莉鈴は倒れているバケモノに向かって歩き、


ぺたっ。


呪符を刀に貼り付けた。刀は黒く光る。そしてその刀を、


ぐさっ。


思いきりバケモノに突き刺した。


「…はっ⁉︎」


あまりの衝撃に咲夜も変な声を上げてしまう。


「なに驚いてるのよ…これがあなたのやり方でしょ?」


「いや、そうだけどさ、気絶してるならそのまま異世界へ戻した方がよかったんじゃ…」


「はあ、本当に脳みそウルトラフィーバー状態ね。あのバケモノは人を襲うのよ?幸い今日は人がいなかったけれど、今後も増えていくはず。1体でも多く殺さなきゃ埒らちがあかないわ」


確かにそうだ。そもそもこの部隊はバケモノを倒すために編成されている。だが一つだけ気づいたことがある。咲夜は莉鈴に引いたような声で告げる。



「お前、ドSだな…」


MEZAME16


咲夜達が戦闘をしている一方。他の4人は…カフェでお茶をしていた。マクガルドのおごりで。


如神根がカーナーに問う


「こんなことしてていいんですか?」


「しかたないだろう。奇妙なくらいに街に人がいないんだからな。まるで他の奴が避難させたみたいだ」


悩むカーナーにマクガルドが問う


「しかし避難警報とかでてねぇんだろ?旦那、それとも何か聞こえるかい??」


「いいや、街にチラホラ人がいるぐらいだな。しかもみな建物の中だ」


「不思議だな。ここにはあんまり詳しく無いから知らないんだがここら辺の街外れってのはこんなもんなのかい?」


マクガルドが如神根に問う


「いや、流石にこんなに人がいないのは不自然かな」


3人が頭を抱えている横でアニューシャは見たことない飲み物に目を輝かせていた。会話は一切頭には入っていないだろう。


「お、そろそろ終わったまたいだぞ。」


カーナーが能力で咲夜達の会話を聞いていたのだろう。4人はカフェを後にした。



「おぉいたいた」


咲夜と莉鈴が4人に駆け寄ってくる。


「それで戦闘はどうだったんだ?」


マクガルドが咲夜に問う


「俺は何にもしてねないよ。みんな莉鈴がやった」


「やっぱり嬢ちゃん1人で良かったってことだな」


マクガルドは咲夜を笑い飛ばす。



「楽しそうにしているね?」急に聞こえたのは落ち着くような澄んだ低い美声。奴の声だ。6人の近くの空間が歪み奴―吸血鬼が姿を表した。


「何しに来た!?」


咲夜が叫ぶ。恐怖でカーナーの後ろに隠れ泣きそうなアニューシャが咲夜には見えた。無理もない。


「別に今君達を殺しに来たわけじゃないよ。まだ早い。君達と僕のゲームをもっと楽しくしようと思ってね。1つ提案をしに来たんだ」


吸血鬼が淡々と話を進める


しかしその話をマクガルドが遮った


「何ゴチャゴチャ言ってんだ!?俺らはお前を倒せばゲームクリアなんだよ!ルールなんて関係ねぇ!」


そして目にも止まらぬ速さで飛び上がり吸血鬼の目の前で拳を振り上げていた。咲夜達には瞬間移動をしているかの様に写っていた。これが彼の能力なのか?


重たい拳が吸血鬼の顔面に向かって振り下ろされる。


「死ねぇ!」


しかし吸血鬼はその拳を人さし指で止めた。


「ふぅ~危ない危ない。さすがの僕もそれを食らったら一溜りも無いよ。」


「お前どうやって!?」


「これは僕の能力の1つ。手で触れている間物を静止させる能力だよ」


そんな能力があったのか。やつはいったいいくつの能力を持っているのか。そんな疑問が咲夜を襲う。吸血鬼はマクガルドの拳の直線上から離れマクガルドから手を離す。


「うわぁっ!」


するとマクガルドは空をからぶって地面に落ちた。


「人の話は最後まで聞くもんだよ?まぁ僕は人じゃないけど。で、話の続きなんだけどこっちにも君達と似たようなチームを作ったんだ。子供4人と年寄り2人の」


「おいおい、俺まで年寄り扱いかよ?」


マクガルドがいつもの調子で問いかける。きっと彼はこれで戦地を駆け抜けて来たのだろう。


「僕にとっては君達全員子供だよ。そこを二つに分類してあげたんだ。」


「ほぅ。そりゃ感謝しねぇとな」


「そんなことはどうでもいいんだ。とりあえず君達にはそのチームと戦ってもらうから。僕と戦うのはその後だよ。おもしろくなりそうだ。」


「勝手に話を進めるな!」


咲夜が怒鳴る


「いや、進めさせてもらうね。これは僕のゲームだ。いつだって終わらせることはできる。だから今すぐ死にたくなかったら従ってもらうよ。あとさっき似たようなチームって行ったけど君達よりははるかに強いから頑張ってよ」


今まで黙っていたカーナーが口を開いた。


「おい、今の異世界から召喚された怪物もそのチームとやらの奴の能力だろ?」


「おぉ勘が鋭いね」


「近くにな、明らかにおかしい息遣いの人間がいてな。異世界召喚はそうとう力を使うらしいな。」


「そうだね。そろそろ僕は帰るとするよ。」そう言い残すと吸血鬼は歪んだ空間に取り込まれて消えた。


「くそっ!調子のいいことばかり言いやがって」


咲夜は吐き捨てる


「奴のことは後回しだ。今はとりあえずそのチームの1人を潰しておこう。異世界召喚でバケモノをしょっちゅう呼び出されたら迷惑だからな。」


一同はカーナーの指示のもと近くの建物と建物の間に足を運んだ。


そこにいたのは穂盛江夢の制服を来た少年―



「おい、嘘だろ…」



咲夜だけはその人物を知っていた。


その人物は―ヒロシであった。



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