6話 闇の森
「ふあぁぁ…」
目が覚める。
周りを見ると、シャドウウルフたちは眠っているが、ダークウルフの姿が見えない。
「ガウッ」
鳴き声が聞こえたと思うと、近くの影からダークウルフが飛び出してきた。そして、その勢いのままこちらに飛びかかってくる。
「わっ」
ステータスはこっちの方が上とは言え、体格差のある相手が飛びかかってくるのを抱きとめられるわけもなく、そのまま上から抑え込まれる形で倒れ込んでしまう。
「うぅ…」
「クーン」
その体勢のまま顔を擦り寄せられる。モフモフしていて気持ちがいい。
「見張ってて…くれたの?」
「ガウッ」
「ありがと…」
どうやら私たちが寝ている間一匹で見張りをしてくれていたようだ。お礼を言いながら頭をなでる。うん。もふもふだ。
「クゥン…」
「んっ…くすぐったい…」
ダークウルフが顔を舐めてくる。かなりくすぐったいのだが、やめてくれる気配はない。力ずくでどかそうとしても、のしかかられて押さえ込まれているうえに、くすぐったくてうまく力が入らない。
「んっ…やめ…やっ…」
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あれから1時間ほどたってようやく解放された。
眠っていたシャドウウルフたちもすでに起きている。
そしてご飯を食べようとして気が付く。
「あ…調理…できない…」
そう、食料としてシャドウウルフの死体を回収しておいてものの、ナイフもないこの状況じゃ解体することもできない。
「仕方ない…血だけ…飲む…」
吸血鬼は血を飲むことで生きていくことができる種族。別に血だけでも生きていけるけど、小さいうちは普通の食べ物を食べないと成長に影響が出る。だから子供がいる家では普通の食事をするのが普通だ。
そういえば、ダークウルフたちには吸血をしていない。血を吸えばスキルや魔法をもらえるから吸血しておいた方がいいだろう。
「皆…少し…血をちょうだい…」
ダークウルフたちにそう呼びかけると近づいてきてくれた。そして少しずつ吸血していく。
ダークウルフたち全員から吸血を終えたとき、ステータスはこうなっていた。
名前:アシュレイ・ルージュ
種族:吸血鬼
性別:女
年齢:7
Lv5 [1↑]
HP:13000/13000 [4000↑]
MP:19000/19000 [4000↑]
STR:960 [220↑]
DEX:790 [260↑]
VIT:1500 [500↑]
INT:2800 [900↑]
AGI:1600 [300↑]
MND:330 [30↑]
スキル
・吸血
・霧化
・高速再生Lv10
・飛行
・吸血吸収Lv10
・オールウェポンLv10
・隠蔽Lv10
・隠密Lv10
・大鎌術Lv10
・無詠唱
・テイムLv10
・上級鑑定
・連携Lv7(1280) [1↑]
・指揮Lv2(20) New!
属性
・闇魔法Lv10
・光魔法Lv10
・召喚魔法Lv10
・時空魔法Lv10
・影魔法Lv6(340) [2↑]
称号
・転生者
ダークウルフの持っていた指揮のスキルが追加されていた。これの横にも数字が付いている。この数字がなんなのかは謎のままだ。
「朝なのに…暗い…」
昨日はいきなりとばされたせいで気にしている余裕がなかったし、起きてからはずっとダークウルフに押さえ込まれていて気にしている余裕などなかったが、落ち着いて周りを見てみると分かる。この森、もうすでに日は昇っているはずなのに真っ暗なのだ。
アシュレイは知らなかったが、このオスクロ樹海、闇の森という別名もある。これはこの森が1年中1度も日がささないことからそう呼ばれるようになった。
「早く…森を…ぬける…」
特に暗闇が苦手というわけではないが、視界が悪い状態だといつ奇襲を受けるかもわからないから早く森を抜けることにしよう。そう決めて森の中を歩く。暗い森の中だといつどこから奇襲が来るかわからないから周囲を警戒しながら歩く。それでもダークウルフたちが常に周りを警戒してくれているから他の人よりも楽だが。
「ガウッ!」
ダークウルフが警戒の声をあげる。どうやらこの先に何かがいるらしい。避けて進んでもいいのだが、このまま進むことにする。
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しばらく警戒しながら進むと話し声が聞こえてくる。
「それにしてもこの森はいつ来ても暗いな」
「そうね、闇の森って呼ばれるくらいだものね」
「…止まれ。そこに何か居る」
「!…魔物か?」
「わからない」
どうやらこちらに気が付いたようだ。このまま出ていくことにしよう。
「…!女の子?」
「…お兄さん…たち…誰?」
そこにいたのは盾と剣を持った男の人と弓を持った身長250cmはありそうな男の人。それに杖を持った白い翼の生えた女の人だった。
「俺たちは冒険者だ」
「冒険者…?」
「あぁ。冒険者がわからないのか?」
「分からない…冒険者って…なに?」
「冒険者というのは冒険者ギルドに登録している者のことだ。それで、俺の名前はライ、こっちの大きいのがリューゲ、そっちの女がメンティーラだ。お嬢ちゃんの名前は?」
「私は…アシュレイ…」
「アシュレイか。それで、アシュレイはどうしてこんなところに一人で居るんだ?両親は何をしている」
「両親に…捨てられて…ここに居る…けど…一人じゃ…ない」
「一人じゃない?それはどういう…」
ダークウルフたちを呼ぶ。
「こいつらは…アシュレイ、お前がテイムしたのか?」
「うん」
「そうか…シャドウウルフを6体も…すごいな…」
シャドウウルフたちを見て驚いている間に鑑定を使ってステータスを見てみる。
名前:ライ
種族:人間
性別:男
年齢:18
職業:剣士
Lv13
HP:700/700
MP:70/70
STR:60
DEX:40
VIT:70
INT:15
AGI:50
MND:40
スキル
・剣術Lv4
・盾術Lv3
名前:リューゲ
種族:巨人
性別:男
年齢:21
Lv12
HP:400/400
MP:100/100
STR:70
DEX:80
VIT:40
INT:20
AGI:50
MND:30
スキル
・長弓術Lv4
・気配察知Lv3
名前:メンティーラ
種族:鳥人
性別:女
年齢:19
Lv11
HP:300/300
MP:500/500
STR:20
DEX:30
VIT:20
INT:70
AGI:50
MND:60
スキル
・飛行
・杖術Lv3
属性
・風属性Lv4
・火属性Lv3
・回復魔法Lv4
剣士に弓使い、それに回復魔法も使える魔法使い。なかなかバランスのよさそうなパーティーだ。
「それでアシュレイ、親に捨てられたといったか…これからどうするか決めてるのか?」
「これから…どうするか…」
これからどうするか、か…今のところやりたいことというのも別に決まっていない。
「まだ…なにも…」
「そうか…少し待っててくれ」
そういって男の人、ライは他の二人に近寄っていく。そして何やら話を始めた。時々こちらを見ながら話しているが、話し声はこちらまでは聞こえてこない。
しばらく会話したあとライは再びこちらに近寄ってくる。
「アシュレイ、もしよかったらおれたちと一緒に来ないか?」
「一緒に…?」
「あぁ、何も決めてないということは行くところもないんだろ?だったら俺たちと一緒に来ないか。俺たちは冒険者だから危ないこともあるが、アシュレイはシャドウウルフを6体もテイムできるだけの腕がある。それに本当に危ないときは冒険者ギルドで待っててくれればいい。もし嫌なら街で引き取ってくれる人を探すが…どうする?」
危ないことはこのステータスがあればきっと大丈夫だ。それに街で引き取ってくれる人を探すと言ったって、そうそう居るとは思えない。それにライたちは何と無く信用できる気がする。
「ライたちと…一緒に…行く…」
「そうか、じゃあこれからよろしくな。アシュレイ」
「よろしく、アシュレイ。ライから聞いてると思うが、俺はリューゲだ」
「よろしくね、アシュレイちゃん。私はメンティーラよ」
三人が挨拶をしてくる。それに私も返す。
「よろしく…みんな…」
それからとりあえず街に向かうということになり、移動をしようとしたとき。
「…!みんな、また何か来る。この気配は…強い」
「なんだと…アシュレイ、下がっててくれ」
近くの茂みが揺れ始め、やがてそいつは姿を現した。