1話 プロローグの始まり
その日は暑い夏の日だった。
その日もいつもと変わらぬ一日のはずだった。
「暑い…」
これは自分だろうか、学校の制服を着て同じ格好の二人の男性と二人の女性と一緒に歩いている。
「もうすっかり夏になったね」
一人の女性が自分のつぶやきにそう答える。
「もう帰りたい…」
「ははは、今日は終業式だけなんだからしっかりしなよ」
一人の男性が帰りたがる自分にそう言う。
しばらく5人でたわいもないことを話しながら進むと、信号に出た。
「ん?あのトラック、なんかこっちに来てないか?」
「え?」
信号無視をしてこちらにトラックが進んでくる。勢いは全く衰えていない。
「おい、逃げろ!!」
一緒に歩いていた男性が叫ぶ。しかし、とっさに逃げることができたのは一緒に歩いていた男性二人だけだった。女性二人は一瞬固まってしまったせいで逃げるのが遅れている。このままじゃ間に合わない。
間に合わないと判断した自分は、とっさに女性二人の背中を押す。
「「えっ!?」」
女性二人が驚きの声をあげ、次の瞬間
自分はトラックに轢かれて死んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これがおぬしの死んだ瞬間の映像じゃ」
自分は目の前の人物に自分が死んだ瞬間の映像を見せられていた。
なぜそうなったかというと…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ここは一体…」
そこは見渡す限り真っ白な世界だった。
「ここは神界じゃよ」
後ろから声がした。振り返ってみると、一人の老人がそこに立っていた。
「神界…?」
「死後の世界とも言うの」
「死後の世界…つまり自分は死んでいるということですか?」
「そうじゃ」
老人はそう言った。しかし、自分には自分が死んだという記憶がない。それどころか、自分が何者かも分からなかった。
「ふむ、その様子じゃとどうやら本当に記憶喪失のようじゃの」
「記憶喪失…?」
記憶喪失か、それが本当なら記憶がないのも分かる。だけど
「すでに死んでるのに記憶喪失になるんですか…?」
そう、目の前の老人は自分がすでに死んでいるといった。それなのに記憶喪失になるのだろうか。
「正確には、死んでしまう直前に記憶喪失になったじゃな」
「死ぬ直前に…ですか?」
「そうじゃ。おぬしはトラックに轢かれて死んだからの。その時に頭をぶつけたのじゃろう」
なるほど。それなら一応納得できる…かな?
とりあえず記憶がないのはもうしょうがないので置いておくとして気になっていることを聞いてみる。
「あの…神界と言いましたけどもしかしてあなたは神様…ですか?」
「ん、あぁ、まだ言ってなかったの、そうじゃ、儂は神じゃ」
やっぱり神様だった。しかし、自分が騙されているだけと言う可能性もあるだろう。そもそも記憶がないのだから本当に死んだのかどうかも分からない。
「ん?なんじゃ疑っとるのか。しょうがないの、じゃあ見せてやるかの」
「え、見せるっていったい何を…」
「おぬしの死んだときの映像じゃよ」
そういって老人は自分に自分が死んだときの映像を見せてくれた。