昔のオトコ
思い出は美化されます。
雨。
しとしとと降る雨。
憂鬱だ。
なぜだろう。
昔を思い出してしまうからか・・。
心が痛くなる。
閉まっておいたはずの思い出が勝手に騒ぎ出す。
ざわざわ・・ザワザワ・・。
気がつくと、今ではもうあるはずもない“カレ”の存在を
まだ部屋のどこかに感じるのではないかと目を走らせる自分がいる・・。
もう、はっきりと顔すら思い出せないのに。
残っているのは、楽しかったという思い出だけ。
なにがどうっていう具体的な出来事を思い出すのは至難の技だけど
「あぁ、たのしかったな」ってその程度の思い出と共にある、一枚のCD。
カレと聞いた思い出の曲。
特にどうのってわけでもないけど、よく一緒にきいてたCD。
あのころは、この歌詞のように、永遠に一緒にいれるって疑わなかった。
若かったっていっちゃえばそれまでだけど。
永遠なんて、ないって知った。
別れたばかりのころは、毎日のようにカレのことを思い出しては涙をからしていたっけ。
いまは・・いまではカレの顔はぼやけている。
あのとき、ああしていればって、後悔もするけれど、
きっと、これでよかったんだと思う。
私とカレはきっと、これでよかったんだ。
べつに、自分にそう言い聞かせてるわけではないけれど、
けれど、
ときどき、切なくなる。
この気持ちはなんなんだろう。
この胸が痛くなる思いはなんなんだろう。
私だけだろうか。
みんな、どうなんだろうか。
そして、あの人はどうなんだろうか。
元気でやってるのかな・・。
そう思いながら、
私は今、他の男に抱かれている。