ポッキーゲーム 朱璃&蒼泉
蒼泉くんに呼ばれた。夜でもないのに部屋に呼ばれるのは久しぶりだから、なにがあったのかなって、半分楽しみで、半分不安。
ノックをすると、やけに声が弾んでいたから、不安は半減した。
「蒼泉くん?」
「朱璃、来てくれてよかった。ねえ、これ、知ってるよね?」
「な・・・」
ポッキー。なんて久しぶりな。って、ああ、今日、十一月十一日だっけ? 蒼泉くんの意図は分かったけど、恥ずかしいな。やったことなんて一度も無い。
蒼泉くんは私の口に一本捻じ込むと、自分も咥える。パキポキと音が響く。私も食べる。美味しい。懐かしい。
「さて、じゃ、本題に行こう」
「え・・・」
「え、分かってるよね? まさか、気付いてない?」
「ううん、分かってるから嫌なの」
「えっ、僕の事、嫌いになっちゃった・・・?」
「ち、違うの、違う! 恥ずかしいだけ・・・。やる」
ふっと笑うから、ドキッとする。こういう大人っぽい笑み、嫌いじゃない。
「朱璃、チョコの方と、持つ方と、どっちがいい?」
「どっちでもいいよ」
「じゃあ、チョコの方ね?」
そういって蒼泉くんはポッキーを咥える。私も恐る恐るポッキーに口を付ける。
蒼泉くんの瞳はとっても綺麗。でも、瞳を見ると見つめ合う事になっちゃうから、恥ずかしくって。何処見ていいのか分からなくって、視線を下に向けると、蒼泉くんに顎を持たれた。まっすぐに向き直させられる。
「や、やだ・・・」
「朱璃、こっち見てよ」
「ん・・・、でも・・・」
「じゃあ・・・、目、閉じて」
柔かな感触が襲う。ただキスなら、何回かやったけど、それでも恥ずかしかった。なのに、こんなシチュエーションって、もっとドキドキする。
みんなだってこの同じ館に居るから。鍵だって掛けてないから。扉を開けられちゃうんじゃないかって思って、それが余計に恥ずかしい。
そっと、ちょっとだけ触れるキスをすると、蒼泉くんは笑って頭をくしゃくしゃと撫でる。
私が顔を上げると、もう一度、唇を奪われる。とっても、濃い。
「朱璃、口のなか甘い」
「蒼泉くんも」
「ああもう、可愛い!」
ギュッと抱きしめられる。なんか、いつもより積極的かな・・・。全部、ポッキーのおかげ・・・?
蒼泉くんのこと、好きだから。こういうのも、全然嫌じゃない。寧ろ、私は望んでるんだけど、蒼泉くん、いっつも、こういう事、してくれないの。だから、嬉しい。
「まだ食べる?」
「ん・・・」
「朱璃可愛い」
「じゃぁ、甘い甘い私、食べて、くれる?」
蒼泉くんは一瞬キョトンとした。それから、顔を真っ赤にすると、私をひょいっと抱き抱える。
「逃がさないから」
「っ!」
耳元で囁かれて、ドキッとした。ゾクッとする。けど、それも心地いい。
ふわりというベッドの感触を感じながら、私は蒼泉くんに身を委ねた・・・。
兎獣人で勇者とか酷なんですけど! より、主人公の朱璃ちゃんと彼氏? の蒼泉くんでした。
兎獣人で勇者とか酷なんですけど! の方もよろしくお願いします。