ポッキーゲーム ソフィア&ジェイド
「ジェイドさん、ジェイドさん!」
「はい・・・、ああ、マリン様ですか」
「ね、ね、これ、知ってますか? 知らないですよね!」
「?」
目の前で楽しそうに頬を紅潮させた少女はソフィアの前世の妹、マリン様。悪戯を企む少女のような気がするのは、気のせいでしょうか・・・?
彼女は私の目の前で真っ赤な袋で包装された何かを持っています。確かに・・・。見た事はありませんね。
「それ、ポッキーっていうんですけどね、ポッキーゲームというものがあって・・・。ま、お姉ちゃんが知ってるかな」
「ソフィアが? という事は、その、前世の方のものです?」
「はい。あ、先に開けて一本味見してみてくださいよ。じゃ、私はこれで、うふふっ!」
・・・。なんであんなに楽しそうなんでしょうね?
ともかく、袋を開けてみます。中から出てきたのは・・・、プレッツェル? チョコレートでコーティングされています。一つ口に入れてみると・・・。甘くて結構美味しい。
「でも、一体どういう事でしょう?」
マリンがジェイドの所へ行けって煩い。よく分からないけれど、何か企んでるんだろうね。偶には乗ってみるのも悪くない。
コンコン、とノックをすると、向こうから返事が返ってきたので扉を開ける。
「って、ちょ、なに持ってるの?」
「え? いや、マリン様に渡されたので」
「あいつめ・・・。ルール聞いた?」
「いえ?」
ってことは、私が教えなくちゃいけない・・・だと? そんな恥ずかしいこと出来ないんだけど。
溜息をついて一本咥える。歯に力を入れると、パキン、という音がする。懐かしいな、これ。甘くて美味しい。
「で、これってどうするんです? ソフィアが知ってるって言ってたんですけれど。教えて下さい」
「やだ」
「なんで!」
「だって、説明するの恥ずかしいんだもん・・・。とにかく、やってみりゃわかるって」
ジェイドの隣、ソファに座ると、一本咥えてジェイドに言う。
「ほら、其処、咥えてよ」
「・・・え?」
「離したら負けね」
躊躇いがちに咥えるものだから、笑ってしまう。ジェイドって、やっぱり可愛い。
「ほら、食べてよ」
「え、え?」
「ほら、早く!」
静かな部屋の中、パキン、ポキン、という音だけが響く。それが、やけに恥ずかしくって。
あとちょっとのところで、ジェイドがパッと口を離す。ちょ、待ってよ!
「離したら負けって言ったじゃん!」
「だ、だって・・・。なんか、恥ずかしくて」
「・・・、馬鹿」
俯いて、呟く。真っ赤な顔のジェイド、嫌いじゃないけど。寧ろ、嬉しい。恥ずかしがってくれるの。
ジェイド、最初こそこうだったけど、一カ月もすれば『好き』も『愛してる』もすんなり言ってしまうし、キスだって流れる様に美しい動作でやる。つまり、慣れた。それじゃ、つまんなかった。
でも、新しい事には慣れていないジェイド。偶にちょっと違う事をすると、それだけで面白い反応をしてくれた。でも、そんなネタ、もうあんまりない。だから、こういうの、久しぶりで、新鮮で、良い。
もう一本咥えて、無言で促す。ジェイドが咥えたのを確認してから、私はソファにジェイドを押し倒す。今度は逃げさせるものか。一口齧った時、視界が大きく動く。反対側に、押し返されていた。小さく笑うのが、気にくわない。
ジェイドの首に手を回す。ジェイドは私の背中に手を当てると、自然な動作で抱きあげる。
「・・・、甘い」
「そりゃ、お菓子だもの」
「違いますよ、ソフィアが甘いんです」
「っ! ああもう、馬鹿!」
こういう事をすらっと言っちゃうんだもん・・・。ほんと、大好きだよ!
金髪青目の美人エルフに転生! より、主人公のソフィアちゃんと使い魔兼夫のジェイドくんでした。
金髪青目の美人エルフに転生! の方もよろしくお願いします。