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日本の実家にご挨拶1


短めです。

挙式から1週間後の2人が日本へ行きます。




バッターーーーーーン!!


…………。




「う、うわあ、お父さんお母さんーーー!

やっぱり気絶したぁーー!」


「どうにも私の存在が強烈だったみたいで、すみません…!

ど、どうしましょう!?」


「うん、貴方の容姿は美麗すぎて強烈だよね。

とりあえずネル、客間にお父さん達を運んでほしいかな!」


「お任せ下さいっ!」




ネル王子がまず、倒れたレイカの父を抱え上げた。

妻の親ということで丁重に横抱きにされている。

…ブサイク寄りな父が王子様にお姫様抱っこされている絵面えづらは、少々視界に有害だ。

レイカはさりげなく視線を逸らしておいた。


客間に布団を敷き、父と母を寝かせる。



両親からしてみれば、久々に娘の声がしたと思ってあわてて二階に行ったら、長身でやたら白い超絶美形男がこちらを見下ろしていたのだから、気絶するのも仕方がないというものだ。


そんなの現実だなんて思えないだろう。

それほどまでに、ネル王子の容姿は地球的に見て美しかった。


階段から転げ落ちたりしなくてよかった…と、レイカは、そこだけはホッと息をついた。




****************




相変わらずラブラブなネル王子とレイカ。

彼らは、今日は妻の実家に結婚の挨拶をするために帰省していた。

とは言っても無断帰省なのだが。



現在、ヴィレア王国にレイカが召喚されてから、早くももう2週間が経っていた。


娘思いだった父や母はさぞ心配していただろう。

早く顔を見せて安心させてやりたいと、新米夫婦は予定を最大限早めて(主に女神をせかして)妻の実家に帰ってきた。


そしてレイカの部屋に大きな魔法陣と共に出現したら、父母に気絶されたというわけである。

…合掌。



妻の両親を気絶させたという事実に、ネル王子は落ち込んでしまっていた。

彼らを寝かせた布団の脇に正座して、しょんぼり頭垂れていたので、レイカがポンポンと頭を撫でておく。


彼女とてネル王子の美しさに当てられて気絶したことがあったのだ。

倒れてしまった両親の気持ちもよく分かった。




一応、冷たいミニタオルを彼らの額に乗せておいて、しばらくおとなしく待つ。


まず父が、うっすらと目を開けた。


ハッ!とした様子で、娘とその横の王子をまじまじ見ている。

新米夫婦は緊張しながらも、力強く父に呼びかけた。



「『!…お父さん!』」



「う、うわあーーッ!?妖怪ビナンシだーー!!」




バタン!

まさかの叫びと共にまた倒れられた!

王子の精神力がザクザク切り刻まれていく。



「『ああああッ!?』」




おろおろして途方にくれていると、その悲鳴で今度は母が目を覚ます。


…父の反応にショックを受けた王子はとりあえず、いないいないばぁをする時のように両手で顔を覆っておいた。

そんな彼を再度よしよしと撫でておいて、レイカが一人で呼びかける。



「お母さん…!」



…目を覚ました母は、パチパチと瞬きを繰り返した。


やがて、声の主の姿をしっかりと確認すると、ブワッと目に涙をためてレイカの手を強く握った。



「……!!

まさか麗華、麗華なの…ッ!?」



「!そうだよ、お母さんっ!

いきなりいなくなって、心配かけてごめんね…

私は今、ここにいるよ」



「ーーーこの手の肉厚な感触、間違いなく麗華だわ…!

信じられない。

また貴方に会えるだなんて。

…今日はなんて素敵な日なのかしら!

ちょ、ちょっとお父さん、起きて起きてっ」


「ん…んんんっ…?」


「麗華が帰ってきたのよッ!?」


「お父さん…!」




パチンパチン!と母に頬を引っ叩かれて、ようやく父はまた目を覚ました。


実の娘をじっと見つめ、…勘極まったように声を震わせ、名前を呼ぶ。




「麗華……!!」


「お父さんっ!」



感動の一場面である。

父はボロボロと泣いていた。



「お、お前…心配したんだぞ!?

晴れの成人式の日にいなくなって、もう2週間になるから…!

何か悩み事があって、自殺でもしたくて家出したんじゃ無いかと、気が気じゃなくてだなぁッ……!!ぐすっ」



「お父さぁん!

うん、確かに私ね、ブスさには悩んでたけど…」



「「ブスの遺伝子の原因でごめん!!!」」




…間髪入れずに両親が土下座した。

ブス・ブサイク同士で結婚して、容姿で子供を病ませてしまっていた(と思い込んでた)事を、どうしても謝りたかったらしい。


レイカは顔を引きつらせた。

いや、気持ちは分かるよ?

だって私の容姿の醜さは相当だし、実際、つい先日までは悩んでいたのだし。


でも伝えたかったのはそこじゃない。




「も、もう!

話はちゃんと聞いて?

うん、ブスには悩んでたけどそれは…もういいんだ。

そうじゃなくてね。

私はこの2週間、異世界にいたのよ」



「「……異世界?」」



「そう。その話を聞いて欲しくて」




ぽかん、と両親が口を開けて固まっている。そりゃそうだ。



いきなり異世界とか言われても困っちゃうよね、とレイカは苦笑しながら言った。

どこか色気をにじませながら微笑む大人びた娘の姿に、両親は戸惑う。


相変わらず絶世のブスな娘だけど、なんか…表情が明るくなってる?




レイカは左手で優しく、隣に座る旦那さまの右手に触れた。

両親がようやくギギギ、と彼を直視する。



レイカのその仕草につられたネル王子が、チラリとだけ、指の隙間から瞳を覗かせた。



ーーー空を閉じ込めたような鮮烈な青さの瞳。

うっすら滲んだ涙の膜で、宝石のようにキラキラとうるんでいる。




…レイカの両親は絶句して、目もそらせずに、その青の瞳を凝視していた。



白い彼は緊張からか、またパッと瞳を隠してしまう。


娘がクスクスと笑いながら、なぜか意気揚々とした幸せそうな様子で、白い人物へと『外国語』で話しかけた。

…彼がおずおずと、その手を顔から離し膝の上に置く。



あらわになったのは恐ろしい程の完璧な美貌だ。

細めの繊細な輪郭、大きな青の瞳、スッと通った鼻筋に、薄い桃色の唇。

両親は現実から目を逸らしていて見てなかったのだが、改めて直視してみると、白い髪や肌も、身体のバランスすら美しかった。

とんでもない美男子だ。

キラキラ眩しくて、もう目がどうにかなりそう。



現実離れした美貌にあてられてぼんやりしている両親の耳に、娘の少々甲高い声が軽やかに響いてくる。




「紹介するね?

彼は、ネル。

ーーーネルシェリアス・ヴィー・レアンス第四王子殿下だよ。


異世界ティラーシュにあるヴィレア王国の王子様なの。

それでね。

…レイカの、旦那さまになってくれた人なんだ。


異世界で結婚したのよ。

今の私の名前はね、『リィカ・カグァム・レアンス』と言います。

…黙って結婚決めちゃって、ごめんなさい!

でも私ね、こんな素敵な旦那さまに愛してもらえて、今…とってもとっても幸せなの」



『リィカ…!』




ネル王子がその美声で、うっとりと妻であるレイカの名前を呼ぶ。


あまりに甘ったるい響きに、両親はぎょっと背筋を凍りつかせた。

そんな、まさか…こんな美しい人が本当に娘を?



レイカはなおも真剣に親を見つめている。




「彼はとても私を大切にしてくれるよ。

私にとっても彼は何よりも大切な人で、これからずっとヴィレア王国で一緒に生きて行きたいと思っているの。

…今日は結婚の報告に来ました。

事後報告になっちゃったけど、お父さんとお母さんも、私たちの結婚を祝福して…くれるかな…?」





「「ーーーーーー!!?」」



「『あああッ!!?』」




バッターーーーン!!




………。





よく気絶する家族だ、などと言ってはいけない。

人は歳を重ねるごとに頭が固くなり、思考もショートしやすいのだから。



そうしてまた場面は、両親を起こす所から始まる。




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