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新婚王子、お仕事中

なんてことない一場面。

深く考えずにお読み下さい。

第四王子夫妻はまだまだ新婚さん、言いたいことはわかりますね…ネル王子の暴走は止まらない。



閉ざされた会議資料室。

ーーコンコン、と扉をノックしてユキが入室した。

先に中にいるのは2人のみと聞いている。


そこには、見ているだけで気が滅入るような書類の山をとんでもない早さで片付けて行く白の王子の姿が見られた。

新婚で幸せ真っ只中の、ネルシェリアス第四王子殿下その人である。



椅子に横向きに座って、膝の上には妻であるレイカを乗せていた。体をひねってお行儀悪く机に向かい、書類を片付けている。

報告文をぱぱっと読みながら、サラサラと羽ペンで了承のサインをしているのだが…時々「たまらない!」とでも言うように妻に頬ずりしたりしていた。

その度に優しく頭を撫でられるので、表情なんてもうゆっるゆるである。

空気がえぐいピンクだ。



書類の受け取りをクラズ王子に命じられ、はるばる王宮の片隅の小部屋にやってきたユキは、遠い目をして2人を眺めた。

…こいつ、こんなんでも、内容理解つつ完璧に仕事こなしてるんだもんな。

すげーよ本当。



そう言ったら「リィカが近くにいる程やる気が出るので」なんて返されるはめになる。

お、おぅ、存分にイチャイチャしててくれ……俺はもう慣れたよ?



うん、この2人をここに押し込んだクラズ王子は大正解だと思う。

こんな光景を終始見せつけられたのでは、他の使用人では仕事も手につかないだろう。



恋狂いの国ヴィレアには『結婚してから3ヶ月間は、政治の場でもパートナーと共にいてよい。その間に落ち着け』という法律があった。

結婚後にはきっと、どいつもこいつもこうなっていたのだろうな…

恐ろしい国民性だと思い、ユキはため息をついた。




ユキの入室後すぐに、恥じらったレイカは膝から降りようとしたが、ユキ本人が「いいよいいよ」と言ってそのままにさせた。

(王子の目つきが「邪魔は許さない」と言ってたのもある)

これもネルの仕事のお手伝いの一つってね?なんて言っておく。


俺は耐えるよ。

だからレイカさんも、見られてて恥ずかしいだろーけど、そのままイチャイチャしてて下さいねー!



レイカが顔を赤くしてネルの胸に顔を埋めてしまったので、親友は親指グッ!してイイ笑顔を向けてきた。

うん、良かったな!幸せそうで何より




「お疲れさまです、ユーク。

そろそろ今日の分の書類は片が付きそうですよ」


「相変わらず早いね。

ネルもお疲れサン。レイカさんもねー」


「うっ。

ありがとうございます、私座ってただけなんですけど…そんな言葉かけてもらって良いんでしょうか…?」


「そんな事言ってるとまたネルが暴走するよー?」


「リィカはもう存在が尊すぎるので居てくれるだけでここは楽園なんです。愛してる!」


「ホラ」


「う、うわぁーーー…!?」




新婚で一番熱の入っている時期なんかにそんな発言をしたら、王子が過剰なまでのフォローに入るに決まっている。

またも赤面させられるレイカ。


ネル王子、言葉のバリエーションがとても豊富になってきてますね?

妻に出会うまではこんな言葉を口にした事など無かったので、まさに今勉強中らしい。

ちなみに愛読書は『貴方に囁きたい愛の言葉(著者・グリドルウェス)』だったりする。



書類にサインをする王子。

それが終わったらレイカが魔法で書類を浮かし、次の物と入れ替えていく。

新米夫婦だが、なかなかに息のあったコンビネーションだ。

ユキは感心して見ていた。




「やるねぇ」


「ふふっ、もっと褒めても良いんですよ?

ついでに、仕事の効率も上がるので、これからもリィカと一緒に居られる仕事をたくさん下さい」


「俺にそんな権限無いし。やさしー兄上に頼みなよ?」


「そうしますか」


「ほんと、ネルは可愛いなぁ……」




レイカが照れながらうっとりと呟くと、王子は幸せそうに彼女をぎゅーーっと抱きしめた。

本当に容赦無くイチャついている。

またもピンクのオーラがぶわっと(略)



ユキはオトナな対応として、出来上がった書類をまとめ始めた。

視線はとてもナチュラルに2人から逸らされている。

精神年齢26歳のお兄さんはダテじゃない。




「可愛く見えるのなら、今日の夜はリィカに思いきり甘やかしてもらおうかなー…?

私の事、いっぱい可愛がって下さいね!」



自重しろ。

さすがにユキも、まとめた書類をバサバサ床に落としてしまった。


もはや男の尊厳も羞恥心もかなぐり捨てたネル王子。

あるのは、妻と思う存分イチャラブしたいという欲望のみである。



「いやソレいつもじゃん!

レイカさんお前にずーっとダダ甘じゃん。今更すぎるわ。

はいはいごちそうさまーー爆発してろ」



「うわあああネルッ…!?

こんな明るいうちから、人前で、夜の話なんてしてちゃダメなのよー!」



「『夜』としか言ってないのに、なに想像したんですかリィカー?

…うわぁ恥じらってる可愛すぎます、ぐはっ!」



もう、セクハラですよ!




…こんなおバカな会話をしながらも、皆はそれぞれしっかり自分の仕事をこなしていた。

書類はついに無くなった。



イェーイ!とハイタッチをする3人。

なんとも緩い空気だが、他の者がいないので問題はないだろう。



ユキが時計を見ると、彼の次の仕事まではまだ少し時間があった。

そうとうギリギリのスケジュールを組んでいたはずなのだが、王子の仕事が捗りすぎたようだ。



「ちょっと休んでっていい?」


「「どうぞ」」




ユキも近くに椅子を持ってきて、トスン!と腰掛けた。

ふぅーー、と軽めに深呼吸する。

ネル王子が彼に楽しそうに問いかけた。




「ユークは今、気になる女性とかっていないんですか?」



恋バナだった。女子か。



「んー。俺だって綺麗な子にならときめいちゃうよ?」


「それ以上リィカを見ないで下さいね?減るので」


「ねーよ」


ジェラシーが酷い。

まあ冗談めかした言い方だったが。



「レイカさんは地球の美的感覚的には美人じゃないって何度も言ってるだろうが。

学習しろ。

そうじゃなくてさー、こう、目が大きくて鼻が高くて色白で可愛い」


「………ネルだ!?」



レイカが全力でビビった表情をする。

そんな事を言い始めると、話がすごくこんがらがってくるんですが。


うっわ、王子と元王子の嫌そーーな顔!!



「やめてよ!?

俺ノーマルなんだからねレイカさん、変なイメージ付けないで…!

女の子大好きだから、超好きだからッ!」


「その言い方だととたんに遊び人のように聞こえますね」



悲鳴のような声を上げているユキ。


正直面白がって悪ノリしていた新米夫婦は、揃って首を傾げた。




「「…じゃあミッチェラ(さん)とか?」」


「ああ、ときめくねー」



今度はいい当たりだったようだ。

うんうん、と頷くユキ。

夫婦が興味深げにワクワクと身を乗り出す。




「性格的には?」


「まあ、素直な子だと思うから好意はあるかな。

治療魔法が独特で気持ちよかったよね」



「…あの激痛かつしみるミッチェラの治療魔法が!?」


「へ、変態さん…!」



「いや、好みの違いなだけだから。

確かに彼女の治療は痛いんだけどさー?

俺、過去にザルツェンで散々痛みは与えられてたから、なんかニブくなってるのか、それくらい強烈なのが心地いいんだよね。

もうマッサージ的なものに感じる」




り、理由が可哀想すぎる……!

労ってやりたい。



くっ、と涙を滲ませた王子とレイカに、ユキはもみくちゃにされた。


黒紫の髪をわしわしと撫でられる。

元気づけるように肩を叩かれ、あれもこれもとおやつの焼き菓子を服のポケットにねじ込まれていた。

この夫婦、まるで大阪のオバちゃんのような手際の良さだった。



過剰(と本人は思った)な反応に、ユキは少しだけ戸惑ったように、でも楽しそうに笑う。

次の仕事の時間が来たので席を立った。

美味しそうな焼き菓子は、あとで頂くことにした。




「なんか、ありがと。またねー」


「お疲れさまユーク。

また恋の話の続き、聞かせて下さいね!」


「ユキさん、私、もし本当にミッチェラさんに恋したんだったら全力で応援しますからー!」


「ありがとー」




照れ臭そうに笑って、ユキは資料室を後にした。

パタン、と扉が閉められる。





そして閉ざされた部屋には2人きり。

今日の仕事はもう終わってる。

では、あとはどうなるか分かりますね…?

王子がうっとりと妻の名前を呼ぶ。



「リィカ」

「ん?……んっ」



ちゅっ、とお互いに顔を近づけ、キスをした。


二度ほど深めに口付けたら、いきなり王子が立ち上がる。立った勢いのまま、レイカを軽々とお姫様だっこした。

「わわっ!?」と首にしがみついた愛しい彼女の頬にまたキスを贈って、そのまま扉の方に歩き出す。




「うーん。このままここでキスしてたら、抑えが効かなさそうですから…。

今から、自室に帰りましょうか?」



「ええっ、まだ夕方だよっ!?

う、ネ、ネルってば何考えてるの……」



「おや、聞いちゃうんですか?

リィカとイチャイチャしたいなー、と思いまして!


年齢=彼女いない歴だった18歳の男に、いきなり美人の妻ができるとこうもなります。

もう、貴方が可愛くて可愛くて仕方ないんですよー?

…だめですか?」



必殺!美麗スマイル!(地球視点、当社比2割増し)



「ーーーッダメじゃないです…!

うわ、魅了された…」



そして夫ラブな妻はカンタンに陥落した。



「ふっふっふー。リィカ、大好き!

今日はあなたが可愛がって下さるんですか?お姉さん」


「~~!!?」


「楽しみ!」



はいはい。

今日も今日とて、愛の国の皆さんは平常運転のようです。

安定して幸せーーー!

どうぞ、ラブラブしてて下さいませーー!



ヴィレアの歴代王族もだいたいこんな感じだったので、寝室に向かうまでの廊下で彼らを見かけた使用人たちは、察して、そろって生暖かい目で2人を見守っていた。



次の日に女神に「昨晩はお楽しみでしたねぇ♡」と言われるまでが、テンプレとなっていた。



読んで下さってありがとうございました!

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