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ツーリスト・アドベンチャー1

SFショート

「ツーリスト・アドベンチャー」

 ――飛鳥弥生

※四百字換算、二十八枚

※40字×40行換算、十枚


「ツーリスト・アドベンチャー1」


♪「パラダイス~桃源郷~」


 時間は無限で人は死なず

 友達は永遠に友達なのだ


 友と人気とお金に価値があり

 楽しく見えれば幸せな国

 ここは桃源郷であり

 天上界でありお伽の国だ


 夢を夢見て願って祈る

 それは素敵なファンタジー

 未来は未来永劫 未来であり続け

 決して訪れない架空時間


 若者はいつまでも若く

 年寄りは年寄りとして生まれる

 目醒めぬ眠り、眠れぬ夜

 なんて素晴らしいのだろう


 友と人気とお金に価値があり

 楽しく見えれば幸せな国

 ここは桃源郷であり

 天上界でありお伽の国だ


 目醒めぬ眠り、眠れぬ夜

 なんて素晴らしいのだろう

 夢を夢見て願って祈る

 それは素敵なファンタジー



 ――ワープを繰り返し、亜空間ラムジェット旅客機に揺られること数時間。

 遂にやってきました、ザッツ・リアルワールド。

 ヴァーチャルワールドからの3泊5日の小旅行。

 鼻息も荒くさっそく税関へ向かうと……。


 原子破壊熱線砲、没収。

 瞬間移動チップ、没収。

 変形素子擬態帽、没収。


 便利グッズを何もかも没収されて、手元に残ったのは次元パスポートと葡萄味の飴玉のみ。

 こんなで大丈夫ですか? ザッツ・リアルワールド観光!

 道すがら見つけた同年代っぽい彼に観光案内を依頼してみると、唐突の申し出に驚いた風だったが、案外とあっさりOKが出た。暇なのかしら? ともあれ結果オーライでレッツゴー!


 まずは奈良の大仏……こんな人、あたしの世界に沢山いたな。

 京都・五重塔……弐千五百重塔を見てたから珍しくもない。

 東京タワー……イルミネーションはともかく、てんで低いったらありゃしない。


 だったらどんなところがと云うキミに、あたしは珍しいものと注文してみる。

 そして連れて行かれたのは、なんてこともない原っぱだった。

 が、これはこれで珍しい。そうそう、こんなところはあたしの世界になかったっけ。

 うーん、なんて素敵なザッツ・リアルワールド。


 一泊してキミと合流し、旅行もいよいよ終盤。

 最後くらいは凄く凄く珍しいものでも観てみたい、そうキミに告げる。

 ならば、と向かったのは、これまたどこにでもあるような鉄橋と河川敷。

 でも、こちらもあたしの世界にはなかった光景。

 ぼーっと数時間、何も考えずに眺める、二人して。


 そしてタイムリミットがやってきた。

 これはナイショだけど、三日間の観光旅行で一番珍しかったのは、観光ガイドをやってくれたキミだってこと、気付いてた?


 名残惜しさを押し殺し、またね、と社交辞令半分、残り半分は……。

 また会えるといいね、キミは云うけど返す言葉が思いつかない。

 そして終わる、ザッツリアルワールド観光旅行。


 また、がいつなのかは解らないけれど、そう、また会えるといいね、いつか。

 熱線破壊光線銃とパスポートを両手に、亜空間ラムジェット航空機へと乗り込むあたし。

 ワープが始まる直前、例の鉄橋が遠くに見えたけど、キミの姿はとうとう見えず仕舞いだった。


 ――おわり

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