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ブッキング

 校舎に入り、一息ついていると、低い声があたしの名前を呼んだ。

「東雲」

 聞き慣れない声に顔を上げると、天使がいた。

「いっ」

 あたしは驚いて逃げようと身構える。と、背後から。

「朱莉先輩、あの車の男性は誰ですか?」

「う……」

 振り向くと、八尋君がしかめ面で立っている。あたしのかばんも彼の手の中にあった。に、逃げられない。

「東雲、今日は俺の話を聞いてもらう」

 前後をふさがれ、左右は下駄箱だ。参った。あたしは何度も彼らを振り返った。挙動不審もいいとこ。

「東雲、責任は取る。俺と結婚しよう」

「ぎゃああああ!」

 あたしは思わず叫んだ。どういうこと!? 付きあうとかそういうの飛びぬかしていきなり結婚ですか!?

「女性のやわ肌を見てしまったんだ。そのくらいの責任は取るぞ」

「意味がわかりません!」

「いや、問題ある!」

「やわ肌ってどういうことですか!」

 や・め・てー! やわ肌って連呼しないでー!

 あたしのパニくった顔つきに気付いたのか、二人は言い争うのをやめてわたしの顔を見入った。

「男に二言はない」

「ぼ、僕だってないです! 朱莉さんはぼくがもらいます」

 天使はやたら男らしいし、八尋君は先輩からもうさん呼ばわりだし、あたしは周りの状況についていけず、目が回った。

「やめて、いきなり結婚とか、考えられない!」

「じゃあ、せめてあの車の男のことだけでも教えてください!」

「そうだ、俺も気になる!」

「うう……、あたしの婚約者の郁哉さん……」

「なにー!?」

「なんですって!?」

 そらみろ、やっぱり叫んでる。

「だからもういいでしょ!」

 あたしがやけくそになって叫ぶと、天使が言った。

「もういい、なんてない。あれ以来、お前のことが思い出されて……、ブーッ!」

「ぎゃあああ! 鼻血ふくな~!」

 なにを妄想してるんだ! 

「鼻血ふくような何を見たんですか!」

「聞かないで~」

「誰にも言わないのなら」

「言わないで~」

 あ、八尋君の顔が真っ赤になってる! いやぁ、なに話してんの! ちょっと!

「朱莉さん、僕以外の男性にすべてをさらしたなんて……」

「ちょっと! なに吹きこんでるのよ! し、し、下着姿でしょ!」

「全裸じゃなかったのか!?」

「きゃああああ! なにいってんのよ!!」

 あたしは周囲のげた箱から手当たり次第に靴を天使に向かって投げつけた。

 

 確かにあの日は白に黒いアクセントの下着だったけど、全裸じゃない! このビン底メガネやろう! なに妄想して鼻血ふいてんだ! 天使みたいな顔してるくせに! 金髪碧眼の美男子なのに! イメージ総崩れじゃん!!

「そんな風に思ってたのか」

「また声に出てた! ぎゃあ!」

「朱莉さん、僕は負けませんからね!」

 なんの勝負をしてるんだ~!?

「よし、わかった」

「なにが」

「デート対決しましょう」

 打ち合わせなしでツーカーな仲になってしまった八尋君と天使。二人で何やら話しこんで、あたしに言った。

「今度の日曜日、デートをしよう。待ち合わせ場所は僕と矢島先輩のいる場所の二か所。朱莉さんは好きなほうに来て下さい。そしたら片方は朱莉さんのことをあきらめます」

「ちょっと待って、なんであたしはどっちか選ばないといけないのよ。あたしの意見は!?」

「じゃ、そういうことでいいな、瓜生」

「はい、矢島先輩」

 ていうか、二人が並ぶといい感じじゃない。もうあたし抜きで二人が付き合えばいいんじゃないの!? などというあたしのごたくは無視され、天使は去って行った。

「朱莉さん、あなたの魅力を知ってるのは僕だけですから。他の男は選ばないでくださいね」

 にこりともせず、そういう八尋君は何となくサドの香りがした。怖い……。

 それでも、校門までかばんを持ったまま送ってくれ、携帯を貸してくれた。あたしはすぐに井上さんに電話したのだった。


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[一言] 天使の、 「もういい、なんてない。あれ以来、お前のことが思い出されて……、ブーッ!」 に吹き出しちゃいました! 八尋君の、 「鼻血ふくような何を見たんですか!」 に、またしても吹き出しちゃ…
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