人生とゲームを掛け合わせたら、それは闇のゲームだよね?3
ボードの上では三人の人生が終わりを迎えようとしていた。
まりんは大学教師までキャリアアップし、大豪邸までも資産に加えトップ独走。お宝カードもほぼ独占状態。
それに続いて、トップアイドルまでキャリアアップした詩にゃん。子持ちのアイドルが成立するのがゲームの不思議なところだ。
俺といえば、フリーターのまま自宅もなく借金地獄の苦労人。その上、子どもピンがカンストしてる。やることはやるダメ人間を体現している。
ゲームの途中、俺の駒のピンが詩にゃんの駒に乗り込んで、正体不明のドッペルゲンガーが駒へと挿入それたんだから、これは俺のアバターではない。
じゃあ誰なんだ、もう一人の僕か?
いつ、闇のゲームというより、闇を感じるゲームだな。
「奏、ゲームってここまで悲惨な結果になるものかしら?」
「対象年齢六才児のボードゲームがそこまで高難易度なわけないだろう。これは普通のボードゲームと違ってカジノで一発逆転が可能なんだ」
「その結果、借金が膨れ上がるなんて、世知辛いゲームね」
カジノマスはまさしく一攫千金を狙えるギャンブルマス。ルーレットを三回行う。出た数字の合計でギャンブルカードが手に入る。
ぴったり、二十一だと大当たりのカードになる。
逆に合計数が低いと負債になるという感じだ。
俺は見事に1を三回連続引くというミラクルを引き起こし、一度も使ったことのない、貧乏神のカードを手に入れた。
久しぶりすぎてどういう役割のカードか覚えていない。
ゴールした時に、資産を換金する際に影響を与えるカードのはずだ。
「このギャンブルゾーンのマスって手作りですよね。メェー君が作ったんですか?」
「昔の友達と……天ネェと一緒に作ったんだ。ローカルルールみたいな奴だね」
「昔の友達ですか?」
孤独なぼっちぃをやってた俺に、『みんなの輪』勧誘活動していた詩にゃんからすれば不思議だろうね。
「『ひとりぼっち症候群』が発病する前の話かしら?」
「そうだね………」
二人には元幼馴染のことは話していない。
特段話すことでもないからだ。
「喧嘩しちゃったんですか?」
「失恋しただけだよ」
「失恋……、そのごめんなさい」
「別にもう気にしてないから、大丈夫」
その失恋が無かったら、まりんと詩にゃんと仲良くなれなかっただろう。
「失恋ね……昔から仲が良かったのでしょう? それでも振られるものなのね」
「いや、仲が良かったのは小学生に上がる前だな。それから八年間片想いしてただけだよ。我ながら滑稽だろ?」
俺が最後にゴールを決める。
このゲームの幸せはゲーム内の資産の量で決まる。
幸せの形を価値へと変換し、競い合う。
ゲームだから許される。
もし、俺らの人生も終わりを迎えた瞬間、ゲームの駒だと言われたらどうしよう。
やり直しとかさせてくれるのだろう。
いや、そもそもやり直したいと思うか?
そんなくだらないことを、心の中で駒の車に乗っているもう一人の僕へと語りかけてみた。
「そんなことないと思うな。八年間も想い続けるなんて素敵なことだよ」
詩にゃんは優しく微笑む。
「俺に好かれたら、拒絶されない限り想い続けるって言ってるんだけど」
「それって、メェー君が紳士ってことだよ」
俺のことを誠実だと言ってるのだろうか。
そうでありたいと思ってるが、誠実かと言われるとしっくりこない。
先程の風呂場で醜態を晒し、自分が生き物だと実感したばかりだ。
「奏は紳士というよりも頑固者だ私はと思うわ」
「そんなことないよリンちゃん。メェー君はとっても紳士だよ。面白いし優しいし一緒にいて嫌じゃないもん。それって紳士だからだよ」
「そうね、奏は紳士な頑固者ね。それよりも詩子、随分と奏を擁護するわね。特別な感情でもあるのかしら?」
もはや様式美。
まりんのイタズラ心はいつものことだ。
詩にゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめる。
正直、詩にゃんが俺に対して特別な感情を抱いている。ということは何となく判断できる。
そこまで鈍感ではないし、無関心でもない。
詩にゃんに好かれることが目的であり、常に意識している。
まりんの失恋計画を成功させるため。
俺は詩にゃんを好きになり、好きになってもらう。
それは誠実な紳士のすることなのだろうか。
別にだまし討ちをしようなんて思っていない。
俺は詩にゃんが好きだ。
利用する形で、そう思い込むようにしていた。
結果、好きになっている。
利用するために近づいた後ろめたさを感じてしまう。
これは裏切りになるのだろうか。
「リンちゃん、メェー君、ゲームの順位を決めましょう。決算タイムです」
まりんに、「おらおら好きなんだろう、白状しちゃいな」みたいなノリで迫られ、ゲームに意識を戻しに来た。
「ねぇ、最下位の人に罰ゲームとかどうかしら? トップの人が決められるのよ。面白そうじゃない?」
「これから判定に入るってタイミングで言うなよ、卑怯だぞ」
「人生何が起こるか分からない。ゲームを締めるためにちょうどいいと思ったんだけど、奏は怖いのかしら」
いつものまりんの挑発だ。
ここで屁理屈をこねても怖いと認めることになる。
なら、普通に受け入れるとなれば、俺の負けが濃厚な今、マゾフィスト認定されかねない。
「こ、怖くなんかないさ、もし、僕が最下位になったらら、鼻からスパゲティを食べながら、逆立ちで町内一周してやら!」
ネコ型ロボットに泣きつく未来が見えそうな強がりを言う。
もしこれで「楽しみね」とまりんが喜んだら、良識内の言う事にしてくださいと謝る算段だ。ドア・イン・ザ・フェイスの応用技。
マリンの良心が妥協すれば、心理的に優位に立つことに成功する。
「そこまでしろとは言わないわ。普通の罰ゲームよ」
完璧、作戦通り。




