人生とゲームを掛け合わせたら、それは闇のゲームだよね?2
戦いの殿堂に集いし決闘者たちが、車と共に地を駆け宙を舞い、フィールドを駆け巡る。見よ、これぞ人生の最強進化系!
――ルーレット開始!
先行するのはまりん。
このゲームはスタートに分岐がある。
進学か就職か決め、五千ドル配布。千ドルで自動車保険に入れる。
正直、自動車保険千ドルは高すぎる。と思うだろう。昔の相場だと十万円くらいだったはずだ。今なら十五万くらいか?
まりんは進学ルートを選択した。自動車保険も入っている。
ルーレットはカラカラ音を鳴らし回り始める。
人生をルーレットって決めるってまさしくギャンブル。
娯楽だからこそ運命をルーレットに委ねることができる。
「やった6が出たわ」
まりんは車の駒を進める。
「えっと、なになに……、東大に進学お祝いとして四千ドルもらう」
「書いてる内容無茶苦茶だな」
「そうね、ドル通貨なのに東大って、それに四千ドルお祝い金なんてもらうってどこの富豪よ」
「このボードゲームってマスの内容もアバウトで面白いですよね」
たしかに、波乱万丈な人生をマスに閉じ込めるなら、これくらい書かないと盛り上がらないか。
「次は私の番ですね。えい……2でした」
詩にゃんも進学コース自動車保険組だ。
「タレントになれる、気に入ればタレントの職業カードを取り、6マス進むです」
「詩子がアイドルデビューするのね」
「いや、女優かもしれないぞ」
「ゲームですよ、まぁ、これでいいかな」
無難な選択だ。進学コースは職業カードが取れるコース、でも、欲張りすぎるとフリーターになるリスクがある。
給料日にもらえる金額が平社員よりも下がってしまう。
「待って、私、次に1を出さないと フリーターだわ」
「まぁ、頑張れよ」
「どこで逆転できるか分かりませんからね」
さて、俺の番だ。
リスク回避なら、平社員のビジネスコース、こっちは、安定型で、給料日マスを通過するたびに給料が千ドル加算されていく。が、キャリアアップしてもそんなに給料は増えない。代表取締役までなれば化けるが、それも運次第だ。キャリアアップマスはルーレットの数値で決まるからだ。
「奏、手加減を要求するわ」
「なんでだよ。舐めプは嫌いだ」
「女の子を虐めて楽しむんだ。奏の鬼畜」
「ゲームは弱いものいじめしてるときが一番楽しいんだぞ」
「詩子にも同じこと言えるのかしら?」
「詩にゃんは庇護対象だから別だ」
「二人ともゲームなんだから楽しもうよ。それにメェー君、ゲームで手加減はダメだよ」
詩にゃんは戦いの流儀を知っているみたいだ。
俺は自動車保険に入り、進学コースを選ぶ。このコースはハイリスクハイリターンだが、本気で勝つならこっちだ。
★☆
ゲームも中盤に迫っていた。
中間トップはまりん。
職業カード、大学教師を持ち、メリットマスばかり止まり、資産額トップ。
詩にゃんは職業カード、タレントを持ち、バランスよく資産を増減させていた。
そして俺は職業カードフリーター。つまり底辺だ。
中盤というのに、約束手形が一枚ある。運が悪すぎる。
「このゲームは楽しいわね。好きになりそう」
「ボードゲームって久しぶりだから楽しいです」
「俺は楽しくないね」
詩にゃんは苦笑い。
まりんは満面の笑顔。
マジでゲームって性格が出るね。
「奏、人生は堅実に夢を追うにはリスクが伴うのよ」
「まりんは運がいいだけだろ」
「運も、実力のうちよ」
運だけのゲームは嫌だね。
カードゲームなら、デッキ構築の段階である程度、リスク操作はできるんだけど、スタートからゴールまでルーレットに運命を委ねるため、それができない。
自分でコントロールできるのがリスクの選択だけだから、噛み合いが悪いとこうなっちゃう。
「メェー君、私のお金を少し分けましょうか?」
ゲーム内通貨を援助されるって、どんな屈辱だよ。
詩にゃんの優しさが俺の自尊心を破壊してくる。
「そうね、可哀想だから手をハンデがいるわね?」
「バカ言ってんじゃねぇよ。ゲームは最後まで何が起こるか分からない。逆転のマスに止まればまだ勝機はあるんだよ」
「ふーん、でも、結婚マスで扶養家族が強制的に増えるから出費が増えるわよ」
「止まったプレイヤーに祝い金を払わないといけなくなるのかよ」
結婚式呼ばれるたびに祝儀渡してる奴らは苦労しそうだ。俺はそんな知り合い少ないから心配しなくていいな。
「はい、結婚マスに止まったわ。ご祝儀プリーズ」
まりんが真っ先に俺に手を伸ばす。
「くそ、借金してまで祝儀出すって、このゲームの主人公はどんだけ律儀なんだよ」
「まるで奏みたいね」
「自分の人生崖っぷちになってまで誰かを祝う気にはなれないよ」
「どうかしら」
精神年齢が高くなると、ボードゲームでする会話も変わるもんだな。
ルールだから従うしかない。
まりんに祝儀を渡し、詩にゃんにターンが回る。
「……あ、私も結婚マスに止まりました」
「はい、結婚おめでとう」
「ありがとう、リンちゃん」
「ほら奏もよ」
「なけなしの資産をどうぞ」
「奏、ゲームでよかったわね」
「本当にそうだね」
もしこれがリアルなら、借金してご祝儀やるお馬鹿ちゃんになってるね。
「ところで、なんで、俺の駒からピン抜いて詩にゃんの駒に挿してるんだ?」
「詩子に養ってもらいなさい、フリーターなんだから」
「詩にゃんにフリーターを押し付けんなよ」
「……私、頑張ってメェー君を養うよ!」
詩にゃんがやる気になってる。
「俺はフリーターにはならないからな」
俺は新しくピンを自分の駒に挿す。
途中で主人公変わっちゃったよ。フリーターの運命を背負わされた誰かさん。
簡単に人生を譲渡できるのはゲームだからだよ。
何をやってんだろうね。
「奏、詩子の隣は予約済みよ」
「リンちゃん!」
まぁ、楽しめてるみたいだし、深く考えないようにしよう。




