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失恋こそ至高の恋、学校一の美少女は失恋したい!振られるために【ぼっち】の俺の恋人作りに協力している――失恋青春計画  作者: アリティエ
3章・水着回

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八木奏はドレスコードが大事だと常々思う5


 今、ドキドキお風呂タイムが始まる。

 風呂場に三人で入室した後、洗い場に三人で立つにはあまりにも狭すぎた。


 二人の水着姿に慣れた。

 俺も水着姿で上半身は何も着てない。

 風呂場での水着というドレスコードは間違ってはいない。


 そのはずなのに、胸の高鳴りは止まらない。


「奏、詩子、洗いっこするわよ」


 まりんは両手をガオ~と構えて、何かを揉むように指を動かす。


「俺もかよ」


「当たり前じゃない。仲間外れはしないわよ。この前、奏抜きで詩子とデートした時、ちょっと可哀想なことしたかなって思ったんだから」


 別に俺には声かけないんだな、とか思ってなかったよ。

 秘密の買い物をするのなら、男女混合だと不都合になることもあるだろう。


「それはお優しいことで、ちなみに俺は誰を洗うの?」


「そうね、一人に対して二人で洗うのを三回繰り返すなんてどうかしら?」

 

「たしかに仲間外れは、してないね……」

「楽しそうですね、メェー君」


 詩にゃんほど無垢という言葉が似合う。


「そうだね、楽しそうだね」


 ここは下手に刺激せず、流れに任せるべきか? 

 それで上手くいった試しが一度もないけどね。


「健全な感じで頼むぞ?」

「私が健全だと思ってるものなら大丈夫かしら?」


 まりんさんの健全が、世間一般的な健全でないと俺は知っている。


「メェー君、体を洗うことは健全ですよ?」


 無垢なる者詩にゃんが首を傾げた。

 なぜだろう、間接的に俺が不健全な思考の持ち主だと言われているような気がしてならない。


「詩子もそう言ってるじゃない、体を洗うことは健全なことよ? 誰でもしていることじゃない?」


 まりんが獲物を狙うように目を細め、口端を上げる。まりんには『可愛くも美しい笑顔を浮かべ、妖艶な言葉で迷える子羊を追い詰めろ』なんて召喚口上が似合いそうだ。


「そうだね、誰でもしてるね」


 男は見栄を張る生き物だ。

 下手に否定して『下心があるんだね』なんて思われたくない。


「誰から洗おうかしら? 最後に洗ってほしい人はいる?」


 何事も一番手というものは遠慮される。

 理由は簡単だ。お手本がないからだ。発表にしろ、行動にしろ、順番で多人数が動く時、前に動いた人が基準になりがちになる。


 まりんに一番最初に体を洗わせるのはまずい。

 まりんが基準になる。

 それだけは阻止しなければならない。


「まりんを一番最初に洗うってのはどうだ?」

「奏が早く私の体に触りたい気持ちは理解できるわ。でも、お楽しみは最後の方がきっと良いと思うのよ」

「俺は真っ先に味わうタイプだ」


 もう、見栄とか言っていられない。まりんを基準にするのだけは避けるべきだ。


「そう、奏は私に触りたくて仕方ないのね。詩子が嫉妬するわよ、ね?」


 詩にゃんに問いかけるまりん。


「べ、別に嫉妬とかしない、よ?」


 詩にゃんの『あれ、私、嫉妬するのかな』みたいに首を傾げる動作は可愛いと思います。

 

「なら、問題ないのかしら?」


 どうやら、まりんの策略を回避出来そうだ。


「そうそう、真っ先にまりんを綺麗にしてやるよ。な、詩にゃん」

「そうですね」


 洗うって言っても背中を流す程度だろ。余裕よ余裕。


「奏のリクエストに応えてあげるのだから、私の要求も聞いてもらおうかしら」

「要求……?」

「奏が私の体を真っ先に洗いたいのでしょ。私だって恥ずかしいのよ。それなら、少しくらいお願いを聞いてもらわないと不公平だわ」


 恥ずかしいなら、洗いっこなんて案は出てこない。

 白々しく、照れたように頬を赤らめる。演技がお上手ですね。


「恥ずかしいなら止めよう」

「いいえ、奏が私のお願いを聞いてくれるなら、我慢できるわ」

「我慢は良くないよ」

「でも、奏は私を洗うのがお楽しみなんでしょ? 期待に応えたいと思うもの、それに私は奏に洗って貰えて嬉しいのよ?」


 まりんは恋する乙女のような眼差しを俺に向けてくる。優しくも美しい笑顔だ。普通の男なら一発で心を持っていかれるだろう。


 俺からすれば、罠にしか思えない。

 なんなら、もう罠が発動中だ。


 この状況で下手に拒絶しようものなら、まりんの失恋計画に支障がでる。彼女は本気で俺を好きになる努力をしているのだ。それを邪魔するようなことは、俺が非協力的だということになる。


 俺はまりんを振る。


 そのためにはまりんの恋心が前提条件だ。


 それを作る過程を俺が邪魔できないことを逆手に取り、逃げ道を潰してきた。

 

「そのお願いって何?」

「素手で体を洗ってほしいのよ」


 それくらいなら、まぁ、許容範囲か――


「奏が正面で、詩子が後ろからお願いね」

「どこまでの範囲のこと言ってるの?」

「肌が露出してる部分よ。当たり前じゃない」


 肌の露出って……


「正気か、そっちのほうが恥ずかしいと思うんだけど」

「恥ずかしいわよ。どちらにせよ恥ずかしいのなら、もっと恥ずかしいほうがいいじゃない!」

「普通逆なんだよ」

「嫌なのかしら?」


 嫌ではないんだけどね。ほら、詩にゃんが見てるじゃない。教育によろしくないわ。


「私もメェー君に……す、素手で、その、正面から洗って、もらってもいいですか?」


 世の中の保護者の皆様は、どうやってセクシュアルな内容を教えているのだろうか。近代の情報社会で完全規制なんてできないんだから、調べようとしたら簡単に見つかる。


 それならば、分別のつくように導くことが大切なのだろう。


「別にいいけど、誰にでもそう言うこと言ったら駄目だよ。危ないから……」


「それくらいわかってるわよ」

「メェー君は私を絶対に裏切らない友達ですから、大丈夫です」


 俺が下心を抱かなければいいだけらしい。

 そう、体を洗うことは健全なことだ。

 誰かに責められるようなことではない。

 

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