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失恋こそ至高の恋、学校一の美少女は失恋したい!振られるために【ぼっち】の俺の恋人作りに協力している――失恋青春計画  作者: アリティエ
3章・水着回

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八木奏はドレスコードが大事だと常々思う3


 二人の期待の視線が俺の沈黙を許さない。

 今日は先日のお詫びをするため、家に来てもらったのだ。

 ここで、逃げるようなマネはできない。

 恥ずかしさを堪えて、脱衣シーンを見せてくれた詩にゃん、明らかに俺を困らせようと策略したまりん、どちらを優先するかは目に見えている。


「詩にゃん、俺に……その、靴下を脱がされてもいいのか?」

「メェー君が嫌じゃないなら……」


 うまく誘導されてる感じがするが、どのみち、彼女たちに恥をかかせないためにも、俺もこの茶番に付き合うべきだろう。


「わ、わかった。脱がすよ」

「奏はスケベね」


 まりんさんが何か言ってる、この中で一番その言葉が似合うのは確実に君だと思うけどね。


 まりんがやっと俺を解放する。

 自由になれたはずなのに、俺の行動に自由がないのはなぜだろう。他人に生殺与奪の権を委ねてるから理不尽な目にあうんだよ。水柱さんも言ってた。


 俺は床に膝をつき、詩にゃんの足元へと視線を落とした。

 水着姿の少女の足元に跪く。


「し、失礼するね……」


 震える指先で、詩にゃんの足首に触れる。

 綿の靴下越しでもわかる、彼女の華奢な骨格と、火照ったような体温。


 詩にゃんは身を固くして、ぎゅっと自分の水着の裾を握りしめている。おっと、これ以上視線を上に向けるのは、詩にゃんに悪い。近距離で水着を凝視なんてされたくないだろう


 ゆっくりと、踵から爪先へと布地を引き抜く。

 現れたのは、部屋の照明を反射して白く輝く、形の整った足先だった。


 ただ、靴下を脱がすだけで何でこんなに心拍数を上げないといけないんだよ。これが介護行為なら、健全なんだよね。明らかに俺たちが不健全に見えるのは、ドレスコードの問題だ。


「あ、あり、がとう……」


 衣類を脱がして感謝されるなんて、水難救助で体温確保するために濡れた衣類を脱がすときくらいだ。その状況なら水着でも不思議はないんだろうね。


 視線のやり場に困る。

 自分の部屋なのに居場所がまるでないように思えてしまい、俺は動けずに正座していた。


 詩にゃんは肩の力が抜けたようにその場に座り込む。


「恥ずかしかったです」


 人の家で、しかも男子の家で水着姿で居るほうがよほど恥ずかしいはずだ。「脱衣」の恥ずかしさが詩にゃんの羞恥心をバグらせてるようだ。


 さて、どうしよう。

 この二人の意図がわからない。俺の動揺を誘っていることだけはわかる。でもね、ここまで普通はしないよね。


 どう話を切り出そうか悩んでいると、まりんが後ろから抱きついてきた。その柔らかいものを押しつけるの止めてもらえますか。


「何だよ……」

「どうだったかしら?」

「どうって……君らドレスコードって言葉を知ってる?」

「それくらい知ってるわよ。時と場所、それに相応しい服装でいることよ」

「じゃあ、今回の脱衣からの水着はドレスコードを間違ってるよね?」


 クールだ。クールになれ八木奏。これ以上ペースを乱されるわけにはいかない。顔がニカってなっちゃう。だって男の子だもん。

 

 「そんなにドレスコードを気にするなら、ふさわしい場所にいきましょうか」

「ふさわしい場所?」


 この家にそんな場所ないと思うけど。


「お風呂よ」

「たしかに水場だけど、なんでそうなるんだよ」

「だって奏が言ったんじゃない、ドレスコードが間違ってるって、ならお風呂しかないでしょ?」

「そもそも、水着でいなきゃいいだけだよね?」


 まりんの吐息が俺の耳元をくすぐる。


「そんなに私たちの水着姿が嫌だった?」


 相変わらず、人を誘導するのが上手いやつだ。


 ここで嫌だといえば、彼女たちは服を着るだろう。その場合、ここまでの二人の勇気を否定することになる。


 なら、ドレスコードが不適切と言えば、風呂場へ行こうと言われてしまう。これを拒否するのもまた、一緒に風呂場に行くのが嫌ということになる。

 この場合、風呂場にいたくないのと、水着を見たくないと言うのも同然だ。

 

 俺は詩にゃんを絶対に裏切らない友達であり、まりんの失恋相手だ。彼女たちに協力する義務がある。そういう契約だ。


 ここまでお膳立てしてるのに、逃げるような真似は裏切りに等しい。


「わかったよ。風呂場に行こうか。水でも溜めるか?」

「それなら、天音さんに頼んでお湯を張ってもらってるわ」

「まりん、お前、ここまで予測してたのか……」

「お風呂に一緒までは詩子と作戦を練ってたわよ。あとはアドリブね」


 つまり、良いように踊らされていたわけか。

 ヤラレっぱなしは趣味じゃねって、アメフト三兄弟がよく言ってたセリフが脳裏によぎる。


「まりんも詩にゃんもその水着可愛いな、写真に収めたいくらい魅力的だ」


 少しは羞恥心を揺さぶってみようと軽口を叩く。


「あら、ありがとう。頑張ったかいがあったわね、詩子」

「うん、メェー君に見てほしくて、頑張りました」


 衝撃的過ぎて忘れられそうにない。今日の夜ちゃんと寝られるか不安になるくらいのインパクトはあった。


「写真を撮りたいなら、私と詩子のツーショットでも撮る?」

「写真……メェー君になら、良いよ?」


 水着の女の子が二人肩を並べる。

 二人してダブルピースだ。

 ぎこちない笑顔の詩にゃんと満面な笑顔のまりん。


「ほら、撮らないの?」


 俺はそっとスマホを取り出し、シャッターを切った。







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