お姉さんのブラコンは終わらない4
市民プールに入場し更衣室で水着に着替えた後、俺と小鳥遊は女子達が来るのを待っていた。
俺は短パンにスイムシャツといった感じで、小鳥遊は短パンの水着一枚だけだ。
男の着替えなんて一瞬で終わる。
服を脱いで真っ裸になった後、水着を着るだけだ。なんて楽なんだろう。
女子の着替えは人による、天ネェはとにかく脱ぐのは早いけど、着るのは遅い。何で知ってるかって、家族だからだよ。
他の二人がどうかは知らないけど、たぶん似たようなものだろう。
小鳥遊は足や手をモジモジさせていた。
「トイレなら行ってきたらどうだ?」
「もう行ったから大丈夫だぜ。ていうかお前、何でそんなに落ち着いてるんだよ。女子の水着がもうすぐ見れるんだぞ」
「水着の女子ならそこら辺に歩いてるだろ。何をそんなに興奮してんだよ。青臭いにも程がある」
このネット社会で、異性のアダルトな耐性なんて自然と身につくだろ。
「八木よ、想像してみろよ。いつもの姿を知ってるヤツの布面積が減るんだぞ。ときめくモノがあるってもんじゃないか」
そういうものか?
試しに詩にゃんの水着姿を想像してみる。
控えめな凹凸を隠すようにフリルのセパレート水着。
「へそが出るタイプならときめくモノはありそうだな」
「八木はへそフェチか、俺は肌の露出が高めがいいな」
小鳥遊よ、それはフェチじゃなくて単なる下心じゃないのかね。
「お、男子は着替えるの早いね」
新山さんが更衣室から出てきた。
紺色のショートパンツに、白い半袖のスイムシャツだ。へそが見えないから安心だ。
「八木君とお揃いだね」
「そうだね、色まで一致するなんてすごい偶然だね」
「その、小鳥遊君は……結構お腹割れてない?」
新山さんはチラチラと小鳥遊のお腹を見る。詩にゃんも俺のお腹を気にしていたが、女子は男子のお腹が気になるものなんだろうか。
一応バスケ部の小鳥遊のお腹は見た感じ硬そうだ。頭が緩いのは体を絞った反動なのかもしれない。
「なんだ惚れたか。なんせモテるために鍛えてるからな。ちなみに触る権利は彼女だけにある」
「え! 彼女いるの!」
「今はいないけど……未来の彼女に最初に触ってもらうんだよ」
どんな動機であれ、腹を割っている事実だけは褒めてやろう。俺なんて最近脂肪が付き始めてる感じがするからな。少しは運動をしたほうがいいかもしれない。
「かなで、お待たせ〜」
スク水姿の天ネェと、白いフリルのビキニ姿の古谷が更衣室から現れた。
天ネェはおそらく学校指定の水着をそのまま着ているんだろう。腕と足の露出しかないのに色気を感じる。
古谷はへそや胸元と露出は多めだが、その堂々とした立ち振る舞いで特に何にも感じない。下手に恥ずかしがっていたほうが胸にくるものがあるというものだ。
「お姉様、凄く似合ってますね。古谷もエロくてサイコーだ」
小鳥遊は二人の色気に頭がやられていた。
一人だけ褒めてもらえてない新山が不満そうにしている。例え、小鳥遊みたいなスケベでも褒めてもらえないのは女子として面白くないんだろう。
「新山さん、俺はそういうナチュラルなスタイルは嫌いじゃないよ」
小鳥遊の馬鹿に代わりフォローしておこう。せっかくプールに来たというのに嫌な気分で過ごすのは可哀想だ。
「八木君、ありがとう。でも、変に気を使うくらいなら、普通に可愛いって言ったほうがいいよ。詩子ちゃんと椿さんの時も似たようなことを言ったの?」
「いや、二人とは一度もプールに行ったことないぞ」
「え、一度もないの?」
「ああ」
新山さんは驚いていた。
「クラスメイトとこうしたプールに来るのも初めてだ」
新山さんは頭を手で押さえている。
なんだ、貧血か?
「今日のことは……詩子ちゃんには言ったんだよね?」
「『他の人と遊んでええの?』ってちゃんと聞いたよ」
「女子とも遊ぶって言った?」
「言ってない」
「八木君、今日のことを隠し続けるか、素直に告白して制裁を受けるか、どっちがいい?」
新山さんは真剣な様子で俺に問いかけてきた。
「俺が他の女子とどこかに出かけるのが問題になるのか? 小鳥遊だっているだろ」
「甘いよ八木君、考えてみて。詩子ちゃんが私やランカと一緒に他の男子と一緒に出かけたら、しかも八木君抜きで、どう思う?」
「どうって……」
なんだろう。モヤモヤするな。
「気分が悪い?」
「でしょ、詩子ちゃんも同じことを思うはずよ」
詩にゃんの気分を害する行為に当たるのか?
別に交際してるとかじゃないんだよ?
いや、将来的にそうなればとは思っているけど。
「言ったほうがいいかな?」
「隠されるよりかはいいと思う」
秘密にされたと悲しまれるくらいなら、正直に話したほうが良さそうだ。
「八木と新山、何話してんだ? 早く行こうぜ」
「小鳥遊、そんなにずぶ濡れの女の子が見たいのか?」
「八木よ、そんなの当たり前だろ?」
「小鳥遊君サイテー……ランカちゃん行こっ」
新山さんは古谷の手を引っ張ってプールの方へ向かう。
「おい、新山何であんなに不機嫌なんだ。お前何かしたか」
「どう考えてもお前のせいだろ。せっかく俺達と一緒にプールに来てくれたんだ、少しは接待してやれ」
「それもそうだな、可愛いとか言えば良いんだな!」
それで喜ぶのは相手に気がある時だけだ。駄目だ、小鳥遊がアホすぎる。夏休み、女の子とお出かけで、知能指数が下がっているのかもしれん。
「まぁ、テキトーなこと言わなきゃ……たぶん大丈夫だ。俺はロッカーに忘れ物があったから取りに戻る。先に行っててくれ」
「おう、早く来いよ」
女子の背中を追う小鳥遊の小物感が拭えない。見た目はそこまで悪くないし体つきもいいのに残念な奴だ。
あいつ、態度と発言さえ注意すればモテるんじゃないか。
「かなで、お姉さんはここで待ってるから忘れ物取りに行ってきたら?」
「そうする」
単なる杞憂に終わると思うが、誤解やすれ違いで関係が拗れるのは面倒だ。




