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失恋こそ至高の恋、学校一の美少女は失恋したい!振られるために【ぼっち】の俺の恋人作りに協力している――失恋青春計画  作者: アリティエ
3章・水着回

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64/90

お姉さんのブラコンは終わらない3


 坂道を登った高台にある総合体育館の近くには市民プールがある。

 俺が通っている高校から近く、駅からも近いためアクセスは悪くなかった。

 プールと言えば、真っ先にここが思い当たる。

 ていうか、他に手頃に行けるプールを知らない。


 小鳥遊と他二名の女子と現地で集合ということになった。

 俺と天ネェが一番乗りで他の連中はまだ来ていない。


 天ネェが同行する旨は伝えていない。

 理由としては俺のちっぽけなプライドを守るためだ。勝手についてきたという体裁を取るためとも言える。たまたま、今日、姉も『同じ場所に用があったんだよね』という言い訳を通すつもりだ。


「ここに来るの久しぶり。前に来たときはかなでが小学生の時だったよね」

「そうだっけ?」

「うん、私が水着を忘れて、水着をレンタルしたのを覚えてるよ」

「そんなこともあったね。水着どころか財布も忘れてて、俺が全部支払った気がする」

「かなで、今日はちゃんとお財布持ってきたよ」

「中身は」

「ふふん、お姉さんを甘く見ないでよ……あれ?」


 天ネェは財布の中を必死に確認し始める。


「かなで、お金忘れちゃった」


「そうなると思って、多めに持ってきてるから大丈夫だよ」

 

 天ネェの忘れ物なんていつものことだ。

 外出すると高確率で財布を間違えるか忘れるからね。


「かなで大好き!」


 天ネェは外でも『ぱふぱふ』してくる。

 こんな場面を同級生に見られたら、誤解を生みそうだね。


「あー! 八木君が浮気してる! 詩子ちゃんに言いつけてやるんだから!」


 見覚えがあるような気がする女子が指さして、見当違いな事を言う。

 黒髪ショートの明るめな雰囲気で、服装は短パンTシャツとボーイッシュスタイル。

 名前は……セラさんだ。名字は知らない。


「いや、浮気も何も、俺は詩にゃんと付き合ってないんだけど……それにこの人は俺の実の姉だ」


「あれでまだ付き合ってないの! それにお姉さんいたんだ!」


 色々とリアクションが激しい子だな。

 教室ではもっと大人しいイメージだった気がする。

 まぁ、ろくに知ろうとせず勝手に判断してるだけなんだけど。


「はーい、かなでのお姉さんやってる八木天音です。かなでのお友達?」


「え、はい。一緒のクラスの新山世良って言います」


 新山って苗字だったのか。

 いつまで俺の記憶に残るか分からないけど、すぐ忘れそうだから今のうちに心の中で謝っておこう。ごめん。


「新山ちゃんはかなでのこと、どう思ってるのかな?」

「え? クラスメイトですけど」

「男の子として特別だったり?」

「八木君は面白いですけど、異性として特別と言われるとノーとしか言えませんよ」


 ふ、よかったぜ。ここで初々しい態度で「私、気になります」とか言われたら、間違いなく吐きそうな顔をする自信がある。

 俺はまりんと詩にゃんのことで頭いっぱいなんだ。あと、天ネェも不安の種として残ってる。


「ふむふむ、かなでを好きになる予定は永遠にない?」

「私、他に好きな人いるからないですね」

「恋する乙女さんなのね。お姉さん応援するわ」

「ありがとうございます?」

「好きな人には、こうやってぎゅ~って抱きつくのよ。でね、耳元で……『好き』って伝えること」

「え、え、え?」


 新山さんは天ネェに抱きつかれて困惑していた。

 

「汗臭いから匂いを嗅がないでください」


 八木さんちの天音さんは人懐っこい大型犬みたいな人だから仕方ないよね。


「かなで、世良ちゃんから乙女の香りがするよ!」

「そりゃ、乙女だから当然でしょ」

「八木君、君のお姉さんをどうにかしてぇ」

「天ネェ、もうその辺で勘弁してやって、初対面の距離じゃないから」

「……でも、私の学校じゃ、同性のお友達にこれすると大好評だよ!」


 それは皆、お姉さんのダイナマイトボディから繰り出されるぱふぱふに魅了されてるだけだよ。

 

「いくら俺の知り合いの女の子でも、許可無しで抱きつくのは駄目だと思うよ」

「え! 世良ちゃん嫌だった。ごめんね」


 天ネェが新山さんを解放する。

 

「いえいえ、その、いきなりでビックリしただけですから、そんなに落ち込まないでください」


 新山さんは優しい人なんだろう。不躾に抱きついてきた人相手にフォローを入れるなんて、俺の好感度爆上がりなんだが?

 いや、あれよ。人として尊敬してるって意味だからね。勘違いしないでよね。誰に勘違いしてほしくないんだろうね俺。


「お、いたいた。やっほー」


 小鳥遊がアホ面で手を振って姿を見せる。

 やっほーって何だよ、俺のことを山か何かだと思ってる?


「……なんかすげぇ美人がいるんだけど、誰?」

「俺の姉」

「参考までに聞きたいのですが、八木君のお姉様はお付き合いしてる人とかいるんでしょうか?」

「知らね。ってか、なんで敬語になってんだよ」

「ふーん……何だよその目、参考だよ参考。俺もワンチャンスあるかもしれないでしょ、兄弟」

「誰が兄弟だ。天ネェとお近づきになりたいなら俺を倒してからにしろ」


 俺を倒せたら、連絡先の交換までなら許してやる。まぁ、俺を倒すような奴と天ネェが仲良くするとは思えないけどね。


「倒せって、さてはお前、お姉ちゃん大好きっ子だな。意外と可愛いとこあるじゃん」

「この世の有象無象を好きになるくらいなら、天音お姉さんを好きになる方が幸せだ。至高のぱふぱふをしてくるしな」

「ぱふぱふって、マジか! あのぱふぱふだよな。亀の甲羅を背負った仙人が要求したあのぱふぱふか!」

「ぱふぱふに『あの』も『その』もない。ぱふぱふはぱふぱふだ」


 小鳥遊はぱふぱふを特別な物だと思っているが、意味は柔らかいもので挟むことだ。心を中学校に置き忘れている小鳥遊には刺激が強かったみたいだね。


「男子二人でおっぱい談義……胸か、やっぱり胸なのか」


 見慣れた子ギャルが現れた。


「は、ぱふぱふって言い出したのは八木だからな。おい、古谷、新山にチクろうとするな!」

「ぱふぱふで動揺するのはスケベの証だ。良かったな未来のバスケ部エース」 

「スケベはバスケ部エースの代名詞じゃねぇよ!」

「小鳥遊、スケベはバスケ部エースを降りたのか!」

「降りてねぇって、お前だけだぞ、常盤先輩をスケベ呼ばわりするの」


 小鳥遊が時々常盤先輩の近況を報告してくる。

 部内の人も当たりが良くなり、他者をリスペクトするようになったとか。

 内面もイケメンになったらもはや無敵なのかもしれないが、一度植え付けられた印象とは簡単に払拭できるものではない。


「俺はいつまでもスケベと呼ぶから気にするな」

「常盤先輩の前だけは止めろよな。お前と同じクラスってだけで俺だけ当たりが強いんだよ」


 なんと心の狭いヤツだ。リスペクトはどうした。


「おーい、スケベな男子共、いくぞー」


 子ギャル古谷が天ネェにぱふぱふされながら俺達を呼んでいた。


「八木君のお姉様は誰にでもハグをするのですか?」

「今んところ、気に入った女子にはハグしてるな」

「お姉様の好きな食べ物を教えてください」


 こいつ、天ネェにハグされたいから餌付けでもするつもりか。流石の天ネェもそこまで単純じゃねぇよ。


「最近は昆虫食にハマってるな」


 虫を触るのも嫌う天ネェの好物を昆虫だと嘘を教えておいた。

 因みに昆虫食にハマってるのは俺の方だ。


「昆虫か……」


 なんだ抵抗があるのか、宇宙飛行士だって食ってる立派な食材だ。


「他には何かない?」

「知らないのか、女は秘密を飾って美しくなるものなんだぞ。俺は天ネェの美しさを守る義務が弟としてあると思っている」

「八木が教えたくないだけだろ、シスコン野郎」


 人をシスコン扱いするなんて失礼なヤツだ。

 ちょっとお姉さんが好きな健全な弟だと言ってほしいね。


 

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