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失恋こそ至高の恋、学校一の美少女は失恋したい!振られるために【ぼっち】の俺の恋人作りに協力している――失恋青春計画  作者: アリティエ
3章・水着回

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お姉さんのブラコンは終わらない1


 八月になった。 

 この前の勉強会を終え、平和で気だるげな日常が身に染み渡る。


 あれからというもの、夜になると、ボイスチャットを繋げて会話をするルーティンが生まれてしまった。

 いや、まだ、始めて数日でルーティンと呼べるほど習慣づいてはいない。

 ただ、なんとなく、欠席する気が起きないだけである。


 夏休みの宿題を全て終わらせ、あとは遊び倒せるこの解放感に身を委ねていると、横で必死に勉強をしている天音お姉さんが視界に入る。


 今年、大学受験を控える天ネェ(天音お姉さん)にとっては気を抜くことができない大切な時期だ。

 だらけた俺の姿を見せるのは、気の毒だろうと部屋に籠っていたんだが「勉強をサボらないように監視して」と言われて今に至る。


 気持ちは分かる。

 気晴らしに漫画を読めば、いつの間にか最終巻にたどり着き、外は茜色に染まっているなんてよくあることだ。

 気晴らしそのものに目的が移ってしまっては意味がない。

 そんな事態にならないため、横でスマホを扱いながら姉を見守っているというわけだ。


 二年後、俺もその地獄を味わわないといけないと思うと頭が痛くなる。


 スマホの通知音が鳴った。  

 誰かが俺宛にチャットを飛ばした知らせだ。

 最近、よく話し相手をさせられて困っている。


『おーい、今日暇か、俺、昼からプール行く予定なんだけどさ、お前もどうよ!』


 俺のことを友達だと勘違いしているクラスメイト小鳥遊からの遊びのお誘い。

 昨日は、おすすめのエッチィ漫画を俺に聞いてきやがったから、成人漫画顔負けのヤングなヤツを勧めてやった。表現の自由を建前に最近の漫画はとにかくエロいものが多い。


 そんなくだらないやり取りをするくらいには、親しくなったのかもしれないが、俺は小鳥遊の下の名前を知らない。まぁ、小鳥遊も俺の下の名前を知らないだろうし問題ないよね。


『マネージャーに聞かないと分からない』


 そんな、どこぞのアイドルの言い訳のような返答をする。 

 俺は詩にゃんを通さないと外界との接触ができないみたいだ、前に詩にゃんがそう言っていた。下手に親しい人を作って詩にゃんを傷つけるわけにもいかない。


『クラスのグループチャットでそんなこと聞けるかよ! この前も同じことを聞いたけど、スルーしたよな、今度こそ聞いてくれよ!』


 どうやら小鳥遊は詩にゃんに気があるらしく、俺を誘う体裁で詩にゃんを引っ張ってくるつもりだ。

 

『聞くのは構わないけど、メンバーはお前と俺と詩にゃんだけとか言わないよな?』


 詩にゃんを誘うならまりんにも声をかけることになる。

 そうなれば、俺、小鳥遊、まりん、詩にゃんの計四人になるわけだ。


 もちろん、ヘタレな小鳥遊は、俺を盾に詩にゃんに話しかけようとするはずだ。

 詩にゃん&まりんの間に異物を紛れさせようとするのは心苦しい。遠くから眺めるくらいがベストだ。


『他? あんま大所帯でも楽しめないだろ。俺と八木、赤月さん、椿さん、あとは古谷と新山とかどうだ?』


 誰だよ、古谷と新山……

 

『ちなみに、男は俺を含めて何人だ?』

『は? 二人だろ、何言ってんだ?』


 どうやら古谷と新山は女子らしい。

 小鳥遊よ、その女子たちを誘えるのなら詩にゃんも誘えるだろうに……成功するかどうかは知らんけど。


『とりま、詩にゃんに聞いてみる。ダメなら諦めろ』

『サンキュー、古谷と新山もついでに誘っといてくれよ!』


 自分で誘うつもりはないみたいだ。このチキン、流石小鳥遊を名乗るだけはあるな。


 もし、俺が女子達を誘えなかったら、小鳥遊と二人きりでプールに行くことになるのか?

 そんときはお腹の調子が悪いと返信しておこう。


「かなで、スマホに夢中だね。お姉さんよりも素敵なお姉さんでも見てるのかな?」


 不満げに天ネェが俺を見る。

 気晴らしに俺でも眺めていて、俺がスマホに夢中だから拗ねているみたいだ。


「クラスメイトの男子からプールのお誘いが来てたんだよ」

「詩子ちゃん達以外にも友達がいた!」

「いや、相手が俺のことを友達と思ってるかもしれないけど、俺からすれば他人だよ?」

「かなでにも同性のお友達ができたんだね。お友達のことを『お供達』なんて言ってたのに、お姉さん嬉しい!」


 天ネェの中では顔も見たことないチキン小鳥遊は、俺の友達と認定されたらしい。


「詩にゃんとまりんは会ってから判断したのに、同性なら問題ないわけ?」

「かなで以外の男の子に興味ないわ。お姉さんはかなで一筋よ!」

「どういう理屈だよ。結婚しないつもりか?」

「それは……かなで以外の男の人を好きになったら、かなでに向ける愛情が減りそうでお姉さんはなんかヤダ!」


 そろそろ、姉のブラコンを卒業させないと、将来独り身になりそうだな。


「天ネェ、弟を男として見るのは止めたほうがいいと思う」

「がーん! かなではお姉さんに好かれるのは嫌だった……」

「嫌ではないよ。でもね、家族に欲情しちゃダメだ。愛情までにしよう」

「何が違うのさ!」


 何が違うかって……仮に子供ができてしまったら、その子供が遺伝子的に脆弱になるくらいだね。

 あとは、法と世間様がそれを許さない。


 そんな説得で聞き分けてもらえるだろうか。


 国の法律とか倫理観がもっと寛容なら、子供くらいしか問題がない。


「欲情と愛情の違いって天ネェにとってどう違うの?」

「かなでが好きなのが愛情、かなでを愛したいが欲情だよ」


 うん、ほぼ一緒だった。高校三年生にしてこの解答だ。

 下手にエッチィことしたいのって聞いて、したいなんて言われても困っちゃうから止めておこう。


「うん、違わない。でも、天ネェに好きな人ができたら、その人のことちゃんと見てあげなよ。俺はもう大丈夫だからさ」


 我ながら恥ずかしい台詞を言っている自覚はある。

 けど、ちゃんと言葉にしないと、いつまでも心配されてしまう。


「うん、ちゃんと見てるから大丈夫だよ。お姉さんはいつも見てるから」


 いつもの調子で天ネェは笑顔を振りまく。

 見てる人の詳細を聞くのは止めておく。もし、俺だなんて言われたら、困るからだ。


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