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失恋こそ至高の恋、学校一の美少女は失恋したい!振られるために【ぼっち】の俺の恋人作りに協力している――失恋青春計画  作者: アリティエ
2章・青春ラブコメ編

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夏休みはまだ始まったばかりである2


 詩にゃんの背中と俺の胸が密着していて、心臓の鼓動が伝わる。

 女の子の身体は片腕に収まるくらい小さいのだと感じた。

 

 詩にゃんの息遣いが速くなる。


「嫌だった?」

「えと、その、嫌、じゃない……」


 どうやら、俺の友情をわかってくれたようだ。

 嬉しさのあまり、強く抱き寄せてしまう。

 詩にゃんのお腹に布越しに触れていた右手に自然と力が入る。


 お腹を押さえる俺の右手に、詩にゃんが両手で触れる。


「私のお腹……変じゃないかな?」


 震える声で聞いてきた。

 詩にゃんのお腹は柔らかいと思う。

 全身で詩にゃんの熱と感触を感じている。


 やばい、いつまでも抱きしめていたい。

 そんな欲求が膨れ上がるのを察して、思わず離した。


 ……友情の証明は出来たはずだ。

 最大限の覚悟を持って抱きしめた。

 

 不純な動機はなかったことだけは心の中で反芻する。

 でも、身体は正直だった。

 俺は正座をして、下腹部を隠すように両手を組む。


 まりんに、からかわれる未来しか見えない。

 そっと、まりんの様子を窺う。


 まりんは『むぅ』みたいな擬音が聞こえそうな顔で、しかめっ面をしていた。

  

 詩にゃんを取られて嫉妬してるのか、可愛いところもあるじゃないか。

 俺の状態異常には気づいてないみたいで良かった。


「メェー君……もう止めちゃうんですか?」


 詩にゃんが期待を込めた眼差しを送ってくる。


 可愛いかよ。 

 そう言えば、天ネェに抱っこされてた時、嬉しそうにしてたし、人の温もりに安心するタイプなのかもしれない。


 俺は気の使える男だ。


「まりん、詩にゃんが待ってるぞ」


 まりんにとっても詩にゃんは大切な友人だ。

 友達が他の人と話してると嫉妬するのは自然なことなのかもしれない。

 俺だって、詩にゃんが俺とまりん以外と仲良かったら嫉妬する。


 「詩子、奏は少し壊れてるみたいだから、もっと攻めないと駄目よ」


 まりんは後ろから詩にゃんに抱きつきながら俺の悪口を言う。


「そうだね……」


 今度は詩にゃんが「むぅ」と頬を少し膨らませていた。


 俺はちゃんと友情を証明したはずだ。

 女の子に対して、信頼されているという覚悟を行動で示したはずだ。

 かなり勇気の必要なことだと思うんだがね。

 もう、ハグでは証明たり得ない。 

 何度もすれば、それは下心と大差ないからだ。


「はぁ……奏にはもう少しお勉強が必要なみたいね。詩子、耳貸して」


 また、ひそひそ話だ。

 まりんの中で流行っているのだろうか。


「リンちゃんのスケベ!」

「詩子、声が大きいわ」


 まりんのセクハラが炸裂したみたいだ。


「そ、それはまだ早いよ」

「それくらいしないとオスティナートの旋律は変えられないわよ」

「で、でも……」

「お腹は良かったんでしょ?」


 まりんは詩にゃんのお腹に手を伸ばす。


「抱っこされながらお腹触られるのは安心するから……でも、私のここはその小さいし……」

「可愛くて私は好きよ」

「リンちゃんはデカいから言えるんだよ」


 まりんは大きくて、詩にゃんは小さいらしい。

 一体何の話をしているんだろうね。

 八木君は無垢だからわかんないな……


「まりん、何の話をしてるか知らないが無理強いは良くないと思う」

「奏、話を理解もせず仲裁されても説得力がないわよ」


 本当にそのとおりですね。

 即座に論破されちゃった。


「奏、詩子のちっぱい触りたい?」


 デリカシーどこに置いてきたんだよ。

 人がせっかく、心の中で無垢な八木君演じてたのに、パワーワード一発で台本叩きつけるなよ。


「……え、なんだって」


 ついに難聴アピールすることになるとは、世の中のラブコメ主人公って苦労してたんだね。


「詩子の小さくて可愛いお胸に触りたくないのかしら?」


「……え、なんだって?」


「奏、真剣に聞いてるんだからふざけないで」


 真剣な質問に聞こえないから冗談で済ませてあげようとしてるんだろ!


「リンちゃん、いい加減にして!」


 詩にゃんが叫んだ。

 あの温厚で優しい詩にゃんが怒っている。


「メェー君が困ってるのわからないの! 親しい仲にも礼儀はいるんだよ!」


 珍しくまりんが動揺していた。

 今まで自分の無茶振り全てに受け身だった子が、反抗してきたことに驚いているみたいだ。


「メェー君だって、答えづらいことだってあるよ。だって、男の子だもん!」


「う、詩子……」


「メェー君ごめん、私帰るね」


 詩にゃんは荷物をまとめ始めた。


「え、え……」


 まりんは不測の事態に混乱していた。

 もちろん、俺も混乱していた。


「じゃあ、ばいばい」


 そして、逃げるようにして詩にゃんは部屋から出ていった。


 そして、俺とまりんだけが部屋に取り残されてしまった。

 

 人と人が関係を築く上で、すれ違いや意見の衝突はあって当然だ。

 もちろん、喧嘩だってすることもあるだろう。

 今まで、詩にゃんが優しかったのは超えてはならない一線が高く広かったから、上手く関係が築けていただけだった。


 まりんにとって、俺にとって、初めての仲違い。


「おい、どうするんだよこれ」


「かなでぇ、詩子に嫌われた……」


 大きな涙を流していた。

 掠れた声を漏らしながら、その場に座り込んでまりんは泣いていた。

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