友達って何をするものだっけ?4
扇風機とエアコンで部屋は冷えてきた。
さっきまでの熱気が嘘みたいに思える。
「お姉さんは椿ちゃんのことを……本当は認めたくないけど、好意があるという点は認めました」
詩にゃんを足の上に乗せて、頭を撫でながら、天ネェが言う。
威厳はどこへやら、単純に妹(仮)を可愛がってるお姉さんになっている。
「認めてもらえて嬉しいです」
まりんは動じることもなく答えた。
「呼び出したお姉さんが言うのもなんだけど……かなでと何をして遊ぶつもり? さっきみたいなエッチなのは駄目よ」
むぅって威嚇してるけど、天ネェと詩にゃんの組み合わせが威厳の欠片も感じさせない。
「甘噛みがエッチだなんて、お姉さんは可愛いんですね」
「お姉さん、馬鹿にされてる!」
まりんは天ネェに近づいていく。
「そんなことないですよ?」
天ネェの頭を撫でて、挑発的にまりんは言った。
「やっぱり馬鹿にされてるよね!」
八木さんの家の天音さんを弄るなんて流石だと思う。
我が家で一番騒がしいのが天音お姉さんだ。
俺は袋からアイス棒を取り出す。
若干、溶けかけているが、崩れるほどではない。
「あ、メェー君食べっこするんだよ」
どうやら、食べさせ合いのことは無かったことにはできないみたいだ。
「仕方ないね、はいあーん」
ポッキーゲームのことはこれで満足してもらって、忘れてもらおう。
詩にゃんはお口を開ける。歯並びが綺麗で白くて健康的だ。
白いミルクアイスの棒アイスを詩にゃんの口へと運ぶ。
「はむ……ちゅぱ……れろ……」
食べさせてもらう時間を堪能するように、棒アイスをしゃぶる詩にゃん。
咀嚼音とビジュアルが、アダルディックに聞こえるのはきっと気の所為だ。
「なかなかシュールな光景ね」
まりんはスマホを向けて、カシャリと音を鳴らした。
「リンちゃん、写真恥ずかしい!」
詩にゃんが慌てて、物申す。
舐めて溶けたアイス棒が俺の手元に残っている。
「あら、記念写真よ。それよりアイスが崩れるわよ」
「もぅ……あーん」
続きを寄越せと口を再び開ける。
アイスの冷たさに慣れたのか、少しずつ噛み進み口に入れていく。
なんか、雛鳥に餌付けしてるみたいに思える。
食べ終えて、アイスの棒だけが手元に残った。
……捨てるよ? うん、捨てる捨てる。
心の中で不思議な誓いを立てる俺。
「あら、詩子、口元についてるわよ」
まりんは詩にゃんの両肩を掴み、そっと顔を口元へと近づける。
驚きで固まる詩にゃんの唇の端を、まりんの舌先が迷いなく丁寧にさらっていく。
「……んっ……ふぇっ!?」
「ふふ、甘いわね」
まるで、さっきの俺みたいな立場にいる詩にゃん。
友達の舌の感触を知る日が来るとは思っていなかったのだろう。その気持ちはよく分かる。
羞恥心と混乱で、詩にゃんは触れた部分に触れる。
「リンちゃんのスケベ!」
「嫌だったかしら?」
「嫌じゃないけど、スケベ!」
俺達は友達同士で何をするのかよく知らないけど、たぶん、これは普通じゃないはずだ。
「椿ちゃんは誰でもそんな事するのかな! お姉さんわからないわ!」
「詩子と奏だけしかしませんよ。お姉さんも混ざりますか?」
「かなで〜、椿ちゃんが怖い、助けて!」
あの天音お姉さんをここまで動揺させるなんて……
「取り敢えず、アイスでも食って落ち着いたらどうだ」
そう言って、俺はアイスを袋から出して、天ネェの口へと運んでやった。
「食べる!」
時々、こうやって食べさせてるから慣れたもんだ。
なぜか、詩にゃんとまりんから不機嫌な視線を送られてる気がする。
「奏って誰でもそういう事をする人なのかしら?」
「メェー君……」
いやいや、これは正当性は俺にあるはずだ。
「家族にあーんは普通だろ?」
普通だよね、父さんも母さんにしてもらってるぞ。
「それは私達は家族のように心を許せる存在として認めてる、そう捉えても良いってことかしら?」
質問を質問で返すなと、女性の手しか愛せない変態と同じ事を言うわけにもいかない。
たかがあーんに特別な意味なんてあるわけもないんだから。
けど、人は否定されると悲しむ生き物だ。相手がどんな人間でも否定は辛い。
「ご想像にお任せします」
「ふーん、じゃあ、次は私にもしてくれるのね?」
まりんは逐一意思確認をしてくるな。
俺もしかして調教されてない、気のせい?
「悲しい、お姉さんに咥えさせて、他の女の子といちゃつくなんて酷いよ!」
「天ネェ、その誤解を生みそうな表現は止めようね」
アイスバー一つで、何でこんな会話が生まれるんだよ、不思議だよ。
「メェー君、誤解って何?」
ほら、純粋な子が疑問を持っちゃったじゃないですか、いや、俺が余計な事を言わなかったら疑問すら抱かなかったのか!
「ほらほら、奏、誤解って何のことかしら?」
人をからかうように笑みを浮かべるまりん。
「誤った解釈をすることだよ。世の中に的外れな捉え方をする人がいるから、発言には細心の注意が必要なんだよね」
「そう……なんですね?」
キョトン、と首をかしげる詩にゃん。
「私がはっきり説明しようかしら!」
「余計なことを言うな!」
「お姉さんは分かった上で言ったから……その、ごめんね」
天ネェは俺から目を逸らす。
「どんな誤解だったんですか」
「えーと、それは……かなでが女の子をもて遊ぶ悪い男って意味で……」
自分で言って恥ずかしがるな!
「メェー君は良い人ですよ!」
この空間で一番の良い子は詩にゃんだよ。




