友達って何をするものだっけ?2
詩にゃん、まりんを連れて、自宅まで向かう。
道中、コンビニで棒アイスとポッキーを購入していた。
詩にゃんとまりんの距離感が随分と縮んでいる。
まりんのボディタッチは今に始まったことではない。
まりんに触れられても、詩にゃんは動揺する様子がない。
詩にゃんの適応力が高い。
あたふたすることが少なくなった。
少し寂しくも思う。
「本当に仲が良くなったね、2人とも」
「リンちゃんは大親友ですから当然ですよ」
「詩子は私の大親友なのだから、揉み合うこともできるわよ」
まりんは詩にゃんに抱きついて、お腹に手を回していた。
「おなか駄目!」
「布越しでも柔らかいわ!」
「リンちゃん!」
詩にゃんのお腹は柔らかいらしい。
まりんは詩にゃんの弱点を見極めるのが得意みたいだ。
「詩にゃん、次俺もいい?」
「メェー君!」
俺の言葉にさらに動揺した詩にゃん、まじ可愛い。
「ははは、冗談――「奏も触りなさいよ。幸せホルモン分泌して、抱き枕にすれば安眠できるわよ」」
「だから、冗談――「詩子も、奏に触られても嫌じゃないわよね。きっと喜んでくれるわよ、奏は詩子のこと大好きだからね」」
まりんが怒涛の勢いで俺の言葉を遮ってくる。
俺の言葉を単なる冗談で済まさないつもりだ。
「だから! 冗談――「それとも、詩子のお腹触りたくないのかしら?」
触りてぇよ、推しのお腹よ。金払っても触りたいね。
「メェー君が触りたいなら……いいよ?」
もうこれ断れない雰囲気じゃん!
断ったら詩にゃんのこと嫌いって言ってるもんじゃん!
「せめて、部屋でお願いします」
路上で女子高生のお腹をさする事案が発生するのだけは阻止した。
これが俺の精一杯な譲歩だ。
こんな会話が続く。
まりんがからかう。
詩にゃんがまりんに動揺もしくは同調する。
俺が妥協するの蹴り返す。
そして、自宅のドアの前までたどり着いた。
「ここだ」
「四階だったら景色とか良さそうですね」
「この立地なら花火とか部屋から観れるんじゃない?」
「景色はいい方だな」
思いのほか、高評価だった。
「たぶん、天音お姉さんがドアの向こうで仁王立ちしてると思うから覚悟してね」
俺はドアを開ける。
そこには天音お姉さん(天ネェ)がいた。
「お布団で寝てる人がお姉さんですか?」
「扇風機まで玄関に持ってきてるわよ」
天ネェは夜に寝れなかった。
俺の友達が来るから興奮していたのだ。
俺のベッドに潜り込んで、俺に抱きついて、横でブツブツと呟いていたからね。
「待ってる間、仮眠取ろうとして、ガチで寝たな」
寝息を溢しながら、気持ちよさそうに寝ている。
まさか、自分を寝顔を初対面の人に見られるとは思っていないだろう。
玄関を塞ぐように寝ているから、退かさないと通れない。
「ちょっと外で待っててくれ、姉を起こすから」
「はい、わかりました」
「そうね、さすがに寝顔を見られたなんて思われたくないわよね」
まりんと詩にゃんを外に出てもらう。
「おーい、天ネェ起きろ」
天ネェの肩を揺らす。
「うぅん、あと5分」
「俺の友達が来たんたが?」
「かなで……友達?」
「そう」
「…………お姉さんのこんな姿見せたら威厳が見せられない!」
天ネェは起き上がると敷布団を部屋に運び出した。
悪い、天ネェの寝顔はばっちり見られてる。
俺は心の中で謝る。
外で待たせてる二人を家へと招くとするか。
☆★
二人を俺の部屋に案内する。
詩にゃん&まりんは部屋を見渡していた。
「珍しいものなんてないぞ?」
「不自然なくらい物が整理されているわね。見られてはいけない物はちゃんと隠したのかしら?」
「天ネェの目を盗んでまで、部屋にそんな物を置く気力がない」
見られてはいけないものは、俺のスマホの中にある。
ロックは四桁の数字と指紋認証だから、まず開けられる心配はない。
「奏のスマホの中に秘蔵されてるものね」
何でバレてんのよ。
カマかけてるだけだよね?
「見られて駄目なもの?」
詩にゃんは意味がわからないようだ。
「詩にゃんは知らなくていいよ」
「そうよ、いつか奏が教えてくれるわ、きっとね」
まりんは喋らせると余計な事を言いそうで怖いな。
天ネェがここにいたら、反応して俺のスマホチェックが強行されてるところだ。
「よく分からないけど、メェー君が教えてくれるまで待ってますね」
詩にゃんの笑顔が眩しすぎる。
本当に分からない。
それとも、俺に気を使っている?
どっちにしろ、優しくて可愛い。
「まりんも少しは詩にゃんを見習えよ」
「私だって、優しくて可愛いわよね?」
……まりんも優しくて可愛いけど。
「まりんの場合は……悪戯気質な所が、マイナスだな」
「あら? 満足ではないのね」
そう言うと、まりんは両手を使い、俺の右腕を掴む。
「何する気だ?」
「こうするのよ」
まりんの頬に俺の右手が触れる。
少し汗ばんでいて熱のこもった肌は柔らかい。
「これはマイナスポイントかしら?」
誘惑するかのような笑みと視線、そのルックスも相まって、威力が高い。
俺は目をつぶる。視覚情報がなければ余裕なはずだ。
そう、天ネェと思えば、日常だ。動揺するはずがない。
左腕が誰かに掴まれて、同じように柔らかい頬を添えるように触れる。
「メェー君の手って、意外と大きいですね」
汗で湿った生ぬるい肌の感触、指先が僅かに沈む弾力、小さな息遣いが俺の腕を支配した。
両手が天国なんだが、俺の理性が必死にポーカーフェイスを貫けって言ってくる。
仄かに香る花の香りが心臓の鼓動を加速させる。
部屋の扉が開かれて、審判の時がやってきた。
「お待たせしたわね。かなでのお姉さんの八木天音よ!」
家族に説明が面倒な場面を見られてしまった。
「……お姉さんは、まだ夢を見てる? そうよ、これは夢よ、私の可愛いかなでが、両手に花で、感触を愉しむような変態じゃないわ!」
叫んだ天ネェが俺の背中をホールドすると、そのまま引っ張られた。
「おい、危ない」
「かなではお姉さんが守るんだもん」
勢い余って、俺の腕を掴んでいたまりんと詩にゃんも引っ張られる。
背後に天ネェから抱きつかれ、まりんと詩にゃんを胸の中で抱くような感じになってしまった。
背中に押しつけられる優しさ、それとは別の体温と弾力、首筋に吹きかけられる甘い吐息。
体全体を覆う感触に、俺は動けないでいた。
この部屋の熱気で、買ってきたアイスが溶けてないかだけを心配することにした。




