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赤月詩子の初めてのデート相手は大切な人である2


  メェー君不在のまま、メェー君の祝勝会をするため、リンちゃんのお家に向かうことになりました。


 道中、リンちゃんが私をからかってきます。

 

「それにしても、髪を下ろした詩子が尊い。いつもは人懐こいワンちゃんみたいな明るさなのに、今は雨に濡れてちょっと元気のないワンちゃんみたい!」


「リンちゃん、私、犬じゃないですよ」


「わかってる、わかってるわ……でも、愛嬌の詩子と儚さのある詩子の二面性が私を狂わせてしまうのよ。なんて罪な生き物なんだろう」


 少しわざとらしく私を褒め倒しに来るリンちゃん。

 初めて会話したときは、意味が分からなすぎて怖かったけど、もう慣れてしまった私がいた。


「リンちゃんはいつも大袈裟だと思います」

「あら……私は私に正直なだけかしら?」

「そうかも知れませんね」


 私は人から縁を切られるのが怖くて、誰かと深く交友を持ってこなかった。

 そんな私を不安にさせないために、リンちゃんは大袈裟さに振る舞っているんだろうって、最初は思っていました。


「私、家に大親友を呼ぶだなんて初めてのことだから、とっても楽しみだわ。家なら詩子のあんなところやこんなところを触りたい放題ね!」


「――っ、エッチぃのは、駄目ですよぉ……」

  

 最近では、過度のボディタッチを要求されて、少し困っています。

 リンちゃんは、本当に私を好きになるためだけに行動してる。それは理解できました。

 でも、限度はあるべきだと思うんです。

 私が少しでも慣れ始めたら、平常心を壊してくるんです。

 

「ふふふ、少し愛情表現が過ぎたわね。私は詩子が大切よ。嫌なことは絶対にしないわ。だから、私に触れられても嫌じゃなくなるくらいに好きになってもらうわね」


「リンちゃんのスケベ……」


 リンちゃんは遠慮をしない。

 いつも私の心臓をバクバクさせてくる。  


「奏には本当に感謝しなきゃね……」


 遠くを見つめるように、優しく微笑むリンちゃん。

 

「リンちゃんがそんな風に笑ってるの初めて見たよ」

「そんな風にって、どんな風にかしら?」

「まるで恋する乙女みたい」


 でもそれだとメェー君が好きってことなのかな?


「…………そうなのかしら?」

「メェー君のことが好きなんですか?」

「わからないわ、私今まで人を好きになったことはないもの」

「私を好きだって言ったのは嘘だった!」

「詩子は好きよ大好きよ。今でも柔らかくて可愛い感触が恋しいくらいなのよ」

「リンちゃんのスケベ……」


 咄嗟にお手々で隠してしまいました。


「そういう詩子は奏の事はどう思ってるのかしら?」

「友達ですよ」

「本当にぃ? じゃあ、奏に詩子の柔らかくて可愛いところを揉まれる想像してみて」


 …………!


「どうだったかしら?」

「そんな恥ずかしいこと言えません!」

「嫌ではない……と」


 まるで見透かしたように、リンちゃんは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


「もぉう、私のお胸の話はしないでください」

「私はそんな言葉を一度も使ってないわよ? スケベなのは詩子じゃないかしら」


 怒りを通り越して、悔しいです。

 完全に弄ばれています。

 

「意地悪ばっか言うんだったら、もう口利きませんよ」


 ふんっだ。私だって怒るときは怒りますよ。

 これで少しは反省してください。


「――もしもし、奏、私、詩子にもう口を利いてもらえないらしいから、絶命するわ。サヨウナラ」


「冗談です冗談です。私はリンちゃん大好きです。リンちゃんはいのちを大事にしてください」


「だって、詩子がもう口を利かないって言うから……」


「それでも、死ぬと絶命すると言っちゃ駄目です!」


「ごめんなさい。次から気をつけるから許してちょうだい」


 今回はちゃんと反省しているみたいです。


「いのちはだいじに、ですよ」


 学校一の美少女と呼ばれて、皆から距離を置かれている印象を以前は持っていました。

 けど、中身は単なるお茶目な女の子だと、短い付き合いの中で、そう感じました。


「あら、お喋りしてたら、もう私の家の前まで来たわね」


 住宅街の一軒家です。


「普通でした!」


「詩子は私を何だと思ってるのかしら?」


 少し変わった特別な女の子だと思っていました。

 けど、私と何も変わらない普通の女の子ですよね。


「リンちゃんは可愛い私のお友達ですよ」


「詩子は私の可愛い大親友よ。ほら、行きましょう。


 私は肩を押されながら、お友達の家にお邪魔しました。



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