赤月詩子の初めてのデート相手は大切な人である1
私は赤月詩子って言います。
友達のリンちゃんは詩子、メェー君からは詩にゃんと呼ばれています。
昨日の夜、リンちゃんから祝勝会するわよってお誘いメールが来ちゃいました。
人から遊びに誘われることは、何度か有りましたけど、それはあくまでも『学級委員長』として誘われていただけです。
だから、『ひとりぼっち』を作らないように……いえ、私が特定の誰かと仲を深めすぎないように、色んな人に声をかけていました。
「誰でもいい」はずだった私が、今はリンちゃんとメェー君の特別になりたいと思っている。
そう思える自分を見つけてくれた私の友達。
少しでも特別な私を見せるため、鏡の前で何度も服装をチェックしてしまいました。
結局、無難だけど少しだけ可愛く見える、お気に入りの白いブラウスに袖を通します。
いつもは髪を後に束ねてポニーテールにしているんだけど、今日は髪を下ろす。
猫のヘヤピンは今日はお留守番です。
メェー君が私に『にゃん』をつけるのは、この猫ちゃんが由来だと思うんですよね。
メェー君は私を裏切らない。
そう信じている。
だから、きっと、気づいてくれるよね。
★☆
待ち合わせ場所は、学校の最寄り駅。
今日は祝勝会というだけあって、リンちゃんのお家でやるみたいだから、ここで一旦集まって、家まで案内してくれる予定になってます。
髪を下ろすとガラリと雰囲気が変わるけど、二人は気づいてくれるかな。
手鏡で身だしなみを整えて……と。
駅のホームからリンちゃんが出てきました。
キョロキョロと周囲を見渡して、私と目が合うと、手を振ってくれました。
私も小さく手を振ります。
リンちゃんは、ゆったりした白いブラウス に、 黒のワイドパンツの組み合わせで、クールな印象です。
「詩子、マイエンジェル。ハグして頂戴!」
手を大きく広げて私に問いかけます。
少し、恥ずかしいけど、ハグをしました。
友達同士ではこれが普通なんでしょうか。
「はぁ〜、抱き枕にしたいかも」
「リンちゃん、嬉しいけど……恥ずかしいかな」
リンちゃんは直ぐにボディタッチしてくる女の子です。
流れるような黒い髪は艷やかで、私と違って豊満なお胸、愛嬌のある可愛い女の子。
「そうね、こんなところで抱き合うなんて、他の人たちのオカズにされてしまうわね」
「オカズってなんですか?」
「詩子は知らなくていいのよ。奏が、きっと教えてくれる日が来るから」
「じゃあ、メェー君がきたら聞いてみますね」
「……詩子、グループチャット見てないの? 今日、奏、お姉さんに捕まって来れなくなっちゃったわよ?」
「ふぇ……?」
私は慌てて、チャットを開く。
『悪い、姉さんが着いてくるって煩くて、無視しようとしたら泣き出したから、今日は無理だ。二人で楽しんできてくれ』
「奏の家に変更しようと提案したけど、姉が余計壊れるから勘弁してほしいですって、妬けちゃうわね」
「そっかー……」
期待して、気合を入れた、私の情熱は風に流されてしまいました。
「もしこれを裏切りだと思うなら、奏と結婚しちゃう? それとも、私が殺そうかしら?」
「全然大丈夫だよ。メェー君が家族思いなのが知れて嬉しいよ」
「そう?……まぁ、詩子の髪を下ろした姿を見れなかったのは、残念がりそうだけど」
「本当に、そうかな?」
「本当よ。試しに写真でも撮って送ってみせる?」
「また今度にするから大丈夫だよ」
直接見てもらいたいから、また今度。
リンちゃんがスマホを出して、電話をかけていた。
「もしもーし、奏? 詩子が髪を下ろしたけど、凄く可愛かったわよ……え、写真がほしいって、詩子が嫌だって言ってたわよ。私達これからお家デートだから、また明日、学校でね」
「リンちゃん! 私、嫌だって言ったのはそういう意味じゃないよ」
「分かってるわよ。もちろん奏も分かってるわよ。でも、凄く落ち込んだ声してたわ。楽しいわね」
まるで無邪気な子供のように笑う。
明るく、私やメェー君をからかう。
時にはメェー君と一緒になって、私をからかう。
私はそれを心地いいと思ってしまっている。
私の心を丸裸にしてまで、友達になりたいと言ってきた人たちだからかもしれない。
「私、リンちゃんが大好きだよ」
「――っ、そ、そう……わ、私もそう思ってる、わよ」
照れているリンちゃんは可愛いです。
私をからかうリンちゃんの気持ちが少し分かった気がして、嬉しく思います。




