椿真凛は失恋がしたい2
私は美少女だ。
私を見るときの皆の目が、呼吸をするようにそう決めつけてくる。
奏は私をどう見てるのか、不安になるときがある。
彼もまた、私をただの『美少女』として、見ていないだろうか。
彼には私を見つけてもらわないといけない。
そして、捨ててもらわないといけない。
たとえ、彼が心の底から私を認めてくれたとしても、それを手放してくれないと信じられないだろう。
私の内面を知って、私が必要ないと言ってくれたら、その言葉なら私は信じることができる。
一生懸命、恋をした相手から拒絶されたら、それは疑いようもなく、私を評価してくれていることになる。
奏は、私の歪んだ望みに真剣に向き合ってくれている。
私はそれが嬉しい。
最近の奏は良いところしか見当たらない。
面倒な先輩の前に立って守ってくれた。
私を守るために、普段の彼からは想像できないくらい喋ってくれた。
少し、心臓の鼓動が速くなった気がしたのは気のせいだろう。
フリースローを詐欺師のような手段で勝つこと提案したときは、自分を飾らない所に好感を持てた。
常磐先輩に説教を垂れ始めたときは驚いた。
誰かのために真剣に怒れる人だと思った。
ただ、喋ってくれるだけなのに、どうしても目を離せないでいる自分がいた。
彼の指を口でくわえた時なんか、別に嫌とは思わなかった。
私は恋を知らない。
もしこれが恋心に繋がるのなら育てたい。
恋心を育てるためにはライバルがいる。
赤月詩子だ。
友達になった可愛い女の子。心の中を全部晒しだして、半ば脅迫に近い形で友達になった。
ちょっと酷いことした自覚はあるけど、奏という裏切らない友達を見つけてあげたのだから、許してほしい。
深く彼女を知って、誰でもいい顔をする所に惹かれた。誰でもいいのなら私でもいい訳だ。
そして、『奏を信じて』という私の言葉を信じてくれたのだから、私にとって信用できる人になる。
最近では、どうからかって反応を見ようか、意地悪なことを考えてしまう。
だって可愛いんだから仕方ない。
彼女なら、私を振る言い訳として申し分ないと思っている。
ただ、一つ懸念があるとすれば、奏が思っていた以上に優しいことだ。
最初は冷徹で冷めた人。
簡単に私を捨ててくれると思った。でも、彼は優しい。
私の約束を守ろうと必死な人。
人の為に怒ることができる人。
そして、行動に移してくれる人。
私はそんな優しい人に、振ってくれと頼んでいる。
きっと、心を痛めてしまうかもしれない。
それでも、彼は契約に固執する頑固者だ。
私から『やっぱり無し』なんて言ったら、きっと嫌われるだろう。
だから、彼が私を振ることなんて苦にならないくらいの青春を約束しなければならない。
私の恋は実らない。
でもそれでいい。
私は失恋がしたいんだから。
第1章完結です!面白いと思ったら評価・ブクマお願いします




