青春失恋計画の会議は放課後のカフェで2
「じゃあ、ターゲットは詩にゃんさんね。奏は詩にゃんさんのことを、どこまで知ってるのかしら?」
「クラスの飼育……学級委員長をしてる。ポニーテールと愛くるしい雰囲気がチャームポイントの女の子」
いつの間にか用意していたノートに、何やらメモを取っていた。
「他には?」
「他? えーと、『ひとりぼっち撲滅運動』をしているお節介さん、あと猫のヘヤピンをいつも頭につけてるな」
「猫のヘアピン、ね。……ふふ、奏ってば、意外と女の子の細かいところまで見てるのね。合格だわ」
椿はさらさらとノートにペンを走らせる。そのページには『詩にゃん攻略&私の失恋計画書』とでも書かれているのだろうか。
「合格って、これくらい誰でも判断できるだろ?」
「いいえ、それは『関心』という名の恋の種よ」
「……その種、芽が出る前に枯れるぞ。彼の関心が種なら、土は詩にゃん、それだけじゃ何も育たない」
そう育ちはしない。栄養を生成するための光や水がないのだからな。
「土が足りない? 水がない? なら、私が全部用意してあげる。肥料も、太陽の光も、必要なら温室だって建ててあげるわ。……あ、でもそうね」
椿はペンを止め、不敵な笑みを浮かべて奏を見つめる。
「光がないなら、私が君を焼き焦がすほどの熱になる。水がないなら、私が君を潤すだけの栄養になる……奏、勘違いしないで」
彼女は身を乗り出し、机を指先でトントンと叩く。
「君が詩にゃんさんに惚れるために必要なものは、すべて私がお膳立てしてあげる。君はただ、その温室の中で、私のためにスクスクと育って……そして最後は、私に失恋という花火を見せてくれればいいわ」
彼女にとって、俺の悩みさえも、失恋を盛り上げるための最高のスパイスみたいだ。
「いいのか。花火だと一瞬で終わるよ?」
失恋も一瞬物だろうけど。
「人はなぜ、一瞬で終わるものに情熱を注げると思う。それはね。そこに愛があるからだよ」
「ねぇ、今までのセリフ全部ボイスレコーダーで記録したいからワンモア、それからクラスのみんなに聞かせていい?」
椿は一瞬フリーズすると、乗り出した身を戻し席を正す。
「ゴホン、では話がちょっとズレ始めたと思うので、閑話休題としまして、詩にゃんとフレンドリーになる作戦を、詰めていこうと思います」
あのキザなセリフを大衆の前で晒せば、流石の美少女様でも恥ずかしいらしい。




