初見殺しの契約2
数日で、詩にゃんとまりん、そして、俺。
この組み合わせが日常になり始めた。
だが、周囲の者達からすれば、疑問は深まるばかりだろう。
すれ違う人達の視線を集め、話しかけるのにも勇気と覚悟がいるような学校一の美少女。
誰にも優しく誰にも笑顔を振りまく聖女のようなアイドル的な可愛い娘。
この二人に話しかけられるまで、特に目立つこともなく、日陰の住民として名前すら覚えられてるのか疑問の俺。
それがこの三日間、突如として形成された。
元々、陰キャと美少女のカップル疑惑渦巻く中にクラスのアイドルもその舞台に浮上する。
挙句の果てに、リア充の代名詞みたいなスケベに喧嘩を売るようなこともしている。
気にならない方が可笑しい。
「えーと、八女君だっけ?」
誰だよ、やめ君って。
昼休み、詩にゃんがにゃんにゃん来る前に、女子が一人、俺に話しかけてきた。名前は……分からない。
「いつも、赤月さんと椿さんと君で三人でしょ。お昼、私たちも混ざっていいかな?」
詩にゃんの営業活動によって、人の輪を作るスキルは伝承されているのか?
「詩にゃんとまりんが、大丈夫なら」
「そっか、良かったよありがとうね、八女君♪」
名前は間違えているが、俺も名前知らないしお互い様だな。
「じゃあ、八女君もこっちにおーいで」
「お、おう」
男子がまた睨んでいる気がする。
「おい、お前いい加減にしろよ!」
ついに沸点の限界が来たのか、一人の男子が名乗りを挙げた。
「お前、椿さんと、親しくて、赤月さんとも仲良くて、挙句の果てに、クラスメイトの、女子に誘われるなんて……」
それは嫉妬されても可笑しくないね、ごめんね。
「これ以上。常磐先輩怒らせるようなことは止めてくれ!」
「誰だよ」
「昨日の朝、お前が口喧嘩してたバスケ部のエースだよ。最近、練習での当たりがキツくて参ってんだよ。リア充爆発しろ!」
どうやら、あのスケベのとばっちりは、他のバスケ部に向かっているらしい。
正論の暴力。後輩の指導の名の元、理不尽に近い正義を突きつけられたのか、俺への嫉妬と相まって我慢の限界だったのか、俺をリア充と勘違いしている。
「あー、えーと、君も一緒にご飯食べる?」
俺は人生で初めて、誰を食事に誘ったのかもしれない。
「……まぁ、お前がそこまで、俺と、一緒に食べたいって言うんだったら、一緒に食べてやるよ」
うんうん、まさか女子と一緒に昼食を取れる機会が来るとは思わなかったんだろうね。
「ごめん八女君、男子1人だと気まずいよね。私達のことは気にせず、男子同士で仲良くやっていいよ」
「気まずいとは思わないぞ。うちの姉が横にいるほうがまだ気まずい」
延々と俺を好きだと小言を漏らしてるからね。
それに、俺を敵視してる奴と二人きりは嫌だ。
「女子と食事なんて男子にとっては憧れなんだぜ?」
俺はバスケ部に、ドヤっとエールを送った。
俺の意図を汲んだのか、俺を盾にするようにして後ろから両肩を掴む。
「たくっ、八木はスケベな奴だな。仕方ない奴め、俺も一緒についてってやるかぁ」
その割には嬉しそうだぞ?
「八木? あ、ごめん名前間違えてた。赤月さんがメェー君って言ってるから」
「別に気にしてないから」
日が増すごとに、俺の周囲が騒がしくなっていく。
「あら、奏。随分と楽しそうわね。もう、私は不要、かしら?」
満面の天使スマイル。
俺の肩を掴んだバスケ部の手に力が入る。
「ふ、不要じゃ、ないですよ……な、八木」
「まりんがいないと、詩にゃんが悲しむからな」
「本当にオスティナートね、まぁ、いいわ」
一人じゃないのも悪くない。そう、錯覚させるくらいには嫌ではない。




