自分勝手なルール10
俺の提案を元に、スケベを嵌める契約書が完成した。
たった一度の悪魔の契約書だ。
だが、能力至上主義のスケベに、能力すら使わせず勝つにはこれしかない。
鉢上先輩が話を通しておくと言って、その日は解散した。
スマホの連絡先がまた一つ増えてしまった。この件が終われば使うことのない番号だが……
「たーいま」
家に帰り着いて、自室へ向かう途中、我が家の暴走機関車が俺に抱きついてきた。
「かなで!おっかえり!私の弟は何でこんなに可愛いんだろうか。お姉さんと一緒にお風呂入る?背中を流してあげよ。うんそれでいい!」
元気の塊、思考の回路が入り口と出口しかない姉、八木天音だ。
「よくねぇ。見てわらない疲れてるよねぇ。天ネェ……」
リリックのキレはイマイチだねぇ、まぁ初めてだし当然だねぇ。
「憑かれてるの! お塩を持ってくるから、待っててね」
「あ、待て、風呂にも塩入れたりするなよ。また怒られるぞ!」
俺の忠告は虚空に消え、台所から、色んな音が聞こえてきた。
部屋に逃げるか。母さんのお説教に巻き込まれたら面倒だ。
姉は俺と二つ歳が離れている。今年は受験生というのに、まだ落ち着きという言葉を学習しない。
昔に比べたら、やっと人並み程度に迷惑をかけない人間になっただけ安心ではある。小学生の時、駄菓子屋で会計を済ませてない菓子を口に入れて、何故か俺だけ怒られ拳骨を貰ったのは今でも覚えている。
姉は思考が単純だ。だから、時々出口を間違える。ルールで縛って正しい出口を示してやらないと、お茶の間のテレビに名前が流れかねない。
でも、どんなに間違えても人を傷つけないところが姉の良いところだと皆が知っている。
だから、自分勝手なルールで人の迷惑を考えない奴が嫌いだ。




