自分勝手なルール7
俺と詩にゃんは真鈴と合流して、さっさと学校を離れることにした。
あのスケベに捕まると面倒だからだ。
仮に真鈴を諦めたとして、次のターゲットに詩にゃんが選ばれる恐れだってある。
「ねぇ、奏?私にお勧めのアニメとかあるかしら?奏のこと知るには、そこからだと思うのよ」
「うんうん、私も知りたいかもです」
不快なスケベを忘れるためなのか、俺の趣味を知りたいのか……
「あー、二人に勧めるなら、奇妙な冒険は、女子に勧めるべきか……自分の頭を食わせるヒーローかプリティー&キュアな魔法少女ものか?」
アニメなんて種類は多いから、下手なのは勧められないからね、悩むよ。
「そんなに悩むくらいアニメってあるのね。胸が躍るような恋愛頭脳戦とか、ないのかしら!」
「私、知ってるよ。告らせたいってやつだよね」
「えー、勝手に告ればいいじゃない。そっちのほうが手っ取り早いでしょ」
「恋愛物は告白するまでか、告白してからの話だからな……」
校門の前を通り抜けようとした時、何処かで見たような美人な女性が、道を塞ぐように前に立つ。ネクタイの色からして二年生だ。
「楽しく談笑してるところ、ごめんなさい。貴方達に迷惑かけてる誠治君のことで謝りたいの!できれば話を聞いてもらえたら助かる」
そう言って頭を下げてきた。
「誠治って、誰だっけ」
「腹が立つほど顔だけの、スケベのことじゃないかしら?」
真鈴の言葉で思い出した。
あの時、俺に親切な対応してくれた良い人だ。
「頭を上げてくれませんか?これ以上敵は作りたくないんです。面倒なので……」
「そうか、話を聞いてくれるんだな。ありがとう」
詩にゃんと真鈴を合わせて、大人の魅力を少し纏った、そんな感じの美人だ。
可愛いは正義だ。そう思ったら最後、素直になるのが人間の本能と言えるだろう。
しかし、俺には詩にゃんという推しがいる。投げ銭は彼女にしか投げないぞ?
トロフィー大好きなスケベがこの人を振ったとは信じられない。
確かに真鈴も負けてはないが、そんなもの和菓子と洋菓子を比べるようなものだ。
美人……一言でこの人をそう呼ぶのは失礼だ。
「俺は八木奏って言います。先輩は?」
「ああ、私は二年の鉢上だ。君は本当に律儀だな」
「そう評価してくれるのは鉢上先輩だけですよ」
本当に良い人だ。素直で元気で誠実で、凛とした佇まいから、この人が努力の人だと窺える。人によく見られる努力をしている人だ。
別にそれが悪いとは言わない。それを誇りと思えるのなら、それは本物だといえる。
「ちょっと、私は奏を『オスティナート』だと思ってるわよ」
「私も……律儀に面白い人だと思いますよ」
なぜか、二人が対抗意識を出してきた。
「あぁ、知ってるよ」
俺の視線は、目の前の情報提供者に向けられている。




