自分勝手なルール5
授業と授業の小休憩の間も、皆の視線釘付け。
何なら授業中も視線を感じた。
そして、昼休み。
「メェー君、一緒にお昼にしよう、リンちゃんも来るみたいだよ」
詩にゃんからお昼を誘われた。
『ぼっち撲滅運動』はもう止めたのか、尻尾を振りながら俺の所へ来た。これじゃ、詩わんだ。犬の尻尾も、猫の尻尾もどっちも可愛いよね。
「今日は信者……他の人と一緒じゃなくていいの?」
「もっと二人と親睦を深めたいから、大丈夫だよ!」
「そっか」
詩にゃんは、『俺が絶対に裏切らない友達になる』契約を結んだ女の子だ。
まりんが彼女の心の壁をぶち壊し、俺の友達にするために契約を持ちかけた。
俺が信頼されてるように見えてるのは、契約があるからだ。
俺は約束を破らない。
「詩にゃん、今、楽しい?」
「前よりか、ドキドキしてますよ」
「それはそれは、まりんも頑張った甲斐があったね」
「……メェー君もリンちゃんも、大丈夫なんですよね?」
「大丈夫って?」
「昨日、あのスケベな先輩と喧嘩したって、それに朝も……」
詩にゃんは自然に笑えていた。
誰からも嫌われない笑顔じゃない。
好かれるための笑顔だ。
あのスケベがいる限り、俺達は迷惑する。
まりんと詩にゃんが暗い顔になる。
「俺は口喧嘩で負ける気がしないからね。勝って助けるし、助けて勝つよ」
自分の言葉で励ますこともできないなんて、我ながら情けなさすぎる。
「それ聞いたことありますよ。人を助けるアニメで言ってますよね」
「え、アニメとか見るの?」
「はい、お父さんが見てるのを一緒に見てるんです。僕は頑張ってる感じの、デクの坊って」
これは特に興味はないけど、何となく見てるって感じだな。
あのヒーローみたいに捨て身の覚悟なんて持ち合わせてない。ミスチョイスだったか。俺は勝てる勝負しかしない男だ。ヒーローとはほど遠い。
「なになに、アニメの話?」
なんでこの女、いつも俺の後ろから話しかけるの?
「あ、リンちゃん、いらっしゃい。今ね、メェー君とアニメの話をしてたんです」
「アニメ? 奏が時々変なことを口走ってるやつでしょ。シーザーだったかしら?あれって今思えば、シェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』の有名なセリフを私に見立てたのかしら?私は奏を裏切らないのに酷いわね」
「ブルータスお前もか!ってやつですよね」
――ブルータスお前もか!
俺が知ってるシーザーは友人のために命を落としたからね。
「あれってアニメにされてるのかしら?」
「知らねぇよ」
「奏でも知らないことあるのね」
俺は司書じゃなくて、ただのアニメ好きの一般人です。
シェイクスピアなんて『ロミオとジュリエット』しか知らない。
すれ違いによる悲恋だっけ?
お互い思い合ってお互い身を滅ぼすとかそんな感じだった気がするが、フィクションはフィクションだから娯楽になり得るんだよね。




