自分勝手なルール4
予鈴の音が、この茶番の幕引きを告げる。
「そろそろホームルームが始まりますよ?」
「……っ、とにかくだ。君は何かしらの弱みを握って、真鈴を――」
「――真鈴って呼ぶの止めてくれないかしら?」
その一言は、夏だというのに冷気を感じさせた。
「我慢してたんだけど、もーう無理!お前に名前を呼ぶ許可は与えてない!」
嫌悪感丸出しで言い放つ。
長い黒髪が揺らぎ、力強くも美しい眼光は怒りで染まっている。
嫌悪と怒りで染まった顔でも美しいと言えるのは、美少女の特権なのかもしれない。
「……っ」
その場の誰もが、まりんに怯えた。
詩にゃんだけが猫型ロボットみたいに慌てていた。
幕引きの時間だ。
「はいはい、じゃあ、これにて朝のショーは終わりでーす。皆様、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!」
ただ事実を述べるように、空虚に発声した。
「詩にゃん、教室戻るよ。おやつはまた今度ね。まりんも自分の教室に戻りなよ」
「そうね、ここにいても気分が悪いだけだわ……またね、奏、詩子」
「うん……、またね、リンちゃん」
まりんも自分の教室へと歩き出す。
俺は詩にゃんを連れて教室へ戻る。
不思議なことに、俺達三人以外の時が止まったのかと錯覚する。幕は降りたのに、誰一人として席を立とうとしない。
「詩にゃん、朝からごめんね。スケベのせいで、怖かったでしょ、手に力が入ってるよ」
「あはは、手……、握っちゃってるからバレちゃいましたね」
……ん?
俺の右手にヒンヤリと柔らかい感触があった。
「……友達だろ?」
「友達だもん、普通……ですよね」
友達って便利な言葉だな。皆が多用したくなる気持ちが分かったかもしれない。
推しと握手するためにチケットが要らないからね
……これ、いつまで握ってていいんだろうか。
教室に入るまでは、スケベのせいで乾いた心を潤すオアシスを堪能しよう。




