自分勝手なルール3
「スケベ先輩もしつこいですね。何の用ですか?」
「スケベというのは止めないか、非常に不愉快だ!」
「じゃ、まりんの『ストーカー』を止めて下さい」
スケベは苛立ちを吐き出すように、ため息をする。
「それは誤解だと言ってるだろう。俺は、真鈴さんと君みたいな卑怯者とは、釣り合わないと言ってるんだ」
「卑怯者?」
「そうだ、真鈴さんというものがいながら、赤月詩子さんという人と、できているだろ!」
「真実はいつも一つ、かもしれないですけど……その曇った目で真実なんて見えているんですか?」
今頃、詩にゃんが、にゃんにゃん、動揺してるかもしれないのに、このスケベのせいで観れない。俺も猫じゃらしを振りたいんだけどな。
「真鈴さんに失礼じゃないか!」
その真鈴さんの公認なんですけどね。なんて言えねぇ……
「本当にしつこい、キモっ」
俺にしか聞こえない声量で、まりんが呟く。
「えーと……で?」
正論を突きつけ、優位を取ろうとしても、スケベの言葉は俺の心には響かない。
スケベは俺の態度が心底気に入らないのか、怒りの衝動を歯を食いしばりながら我慢している。
「用がないなら、消えてくれません。俺たちの時間にスケベは要らないんですよ?」
自分の意見が全く通らないのが、そんなに嫌なのか、鬼の形相で睨みつける。
「真鈴さんに必要なのはこの俺だ!」
端から見れば悪い男から、美少女を、助ける英雄だろうね。周囲からキャーキャー聞こえてくる。
「真鈴さんに必要ね……主語を間違えてますよ。先輩はスポーツマンなんですよね?身勝手なルールを押し付けないでもらえます?」
「身勝手だと……」
……身勝手の極意。あるいは、わがままの極意。
極意とまで言ったら、あの誇り高き本家の方々に失礼だ。こいつにあるのは、研ぎ澄まされた格好良さなんて欠片もない、ただの私欲だ。
「スケベの極み……それが一番しっくりくる」
「真鈴さん、こんな人の悪口しか言わない人と、どうして一緒にいるんですか!何か弱みを握られているなら、この僕が相談に乗りますよ」
自分の意見が通らないから、その矛先をまりんへと変えた。本当にスポーツマンなのかと疑いたくなるほど卑怯者だ。
観衆の注目は俺達から、悲劇を勝手に押し付けられたヒロインへ向けられる。
「詩子、今度、お泊り会とか、しない?」
「え、ちょっ、……え?」
明らかに、時と場合を間違えてる。詩にゃんが『今する話なの』って動揺して、まりんと俺達を交互に見ていた。
観衆は凍り付いた。
英雄が囚われたお姫様に手を伸ばしているにも関わらず、孤独な檻の中で、猫とじゃれてるんだから。
「え……」
自分勝手なルールを極めたスケベに、この光景が理解できない。普通の人でも理解できないから、尚の事だろう。
今頃、心の中のハーヴェストが叫んでいるはずだ。




