自分勝手なルール2
「そんなところで何してるんですか?」
詩にゃんは笑顔しか知らないのか、まりんに流されかけた以外で笑顔が崩れたところ見たことないぞ。
「人間に生まれて良かったって初めて感じたかもしれない」
「分かるわ、その気持ち、よーく分かる」
「?」
何が起きてるのか分からず、ご飯まだ、みたいに首をかしげる犬みたいになる詩にゃん。
俺とまりんは手を合わせて頭を下げる。
「私、仏様じゃないですよ!」
「そうね、聖女様かしら?」
「いや、今は可憐さが増して、妖精と呼んでも違和感ない。間をとって天使だな」
「天使可愛い、イズ・詩にゃん!」
ふ、いつもの調子に戻ってきた。
考えすぎて、思考の迷路を彷徨っていたが、「朝ですよー」って現実に引き戻すなんて、恐ろしい子。
「詩子は天使、だ~い好き」
まりんは詩にゃんの背後に回り込んで抱きつく。
どさくさに紛れて、まりんは感触を品定めするように愉しんでいた。
「ひゅ、リンちゃん、そこ触っちゃ駄目」
「そうよね。ごめんなさい。私今まで大親友なんて居なかったから距離感が分からなかったわ。お詫びに。私のも揉んでいいよ」
「リンちゃんってスケベ……なんですか?」
たぶん、この世で詩にゃんに嫌われず、詩にゃんの羞恥心を煽れるのは、数多の魔法を使いこなす魔女様だけだろう。
「君たち、親しき仲に礼儀があるんだよ。人の目が多いところで、あんまりそういうことはするもんじゃない」
澄ました顔で正義感を振りまく男がそこに立っている。
平和を脅かす侵略者……いや、独裁者か?
「面白いこと言いますね。スケベ心を隠すための方便ですか?」
「君は口が悪いな。至極当然のことを言ったまでだ」
「一年の教室が並ぶ廊下にわざわざ来るとは、暇なんですね。羨ましいです」
「煽っているつもりか。君も暇に見えるが?」
美少女と可愛い天使、村人と独裁者。
役者が揃い、何が始まるのかと観客の視線も集まる。
「スケベ心を持った誰かのせいで、脳のリソースを使ってて、暇だと思えないんですよね?」
正義の仮面を必死に守っているせいか、ピクピクと目尻を揺らす。
スケベは能力至上主義者だ。手元にあるカードが光り輝いていることを武器だと信じている。正義の仮面もその一つ。
だから捨てられない。
こっちのカードは紙屑しかないというのに。
だが、そんな紙屑しか持ってない俺は、このスケベを排除しなければならない。




